昨季ファイナルカードで快勝。ワイルドナイツの鉄壁防御を振り返る。【ラグビー旬な一問一答】
ジャパンラグビーリーグワンのディビジョン1・第7節の6試合中4試合が各地であり、昨季のトップリーグ王者である埼玉パナソニックワイルドナイツは同準優勝の東京サントリーサンゴリアスとホームの熊谷ラグビー場で激突した。
攻撃力に長けた相手を後半ノートライに抑え、34-17で勝利。開幕から2試合続けて不戦敗も、実施した試合は無傷の5連勝としている。サンゴリアスは今季初黒星。
試合後、ロビー・ディーンズ監督と坂手淳史キャプテンがオンラインで会見した。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
ディーンズ
「何より本日の結果に満足しています。それ以上に、ひとりひとりのパフォーマンスに心から満足しています。試合が進むにつれ、徐々にかけられるプレッシャーも増えていき、後半の最後のプレーまで相手に圧力をかけたことが勝利につながった。
そして本日は天候にも恵まれ、ファンの皆さんも心から楽しめた1日ではないでしょうか。サントリーさんのような素晴らしいチームと対戦する時は全てのプレーが自分たちに味方にすることはないですし、今日も苦しい時間帯がありましたが、試合を通じていいラグビーができた。
本日おこなわれた試合は世界のどの大会と比較しても、そのレベルに匹敵する素晴らしい試合でした」
坂手
「ロビーさんが言ったことがほとんどです。僕たちが求めていた結果を出せたのが嬉しいです。今日の試合で長谷川と布巻がワイルドナイツで50キャップという記念すべきゲームだったので、それを勝利で飾れたのも嬉しいことです。
ゲームの内容としても前半の最初にしんどい時間帯がありました。そこで自分たちのやるプレーを考え、つながることができた。そこには自信を持っていますし、よかったと思います。ここからどうするか、チームとしても共有している。ワンランク、ツーランク、挙がっていきたいです」
――リーグワンでこのレベルの高い試合ができたこと。チーム状態は。
ロビー
「質の高いラグビーを届けられた。両軍にワールドクラスの選手がいて、彼らがハードワークをしなければならない。それが現在地です。イージーなプレーでは乗り切れる試合ではない。
チームのコンディションは23人全員を使ってこのような結果が得られたように、質の高い選手が揃っている、充実した状況を示せている。後半から質の高い選手を送り出せることで、相手と差をつけられる」
ワイルドナイツの防御網が相手に大きな数的優位を作られたのは、前半17分に通算2本目のトライを奪われたシーンだけだったか。
この時はキックを蹴った後の局面で、フルバックのダミアン・マッケンジー、アウトサイドセンターのサム・ケレビといった相手の世界的選手に順に前に出られ、ハーフ線付近右のスペースをウイングの中野将伍に攻略された。フランカーの下川甲嗣のトライなどで3-17。
ただ、直後のキックオフで相手の反則からスコアを取り返すと(10-17)、ベンチにいたフッカーの堀江翔太が、グラウンドにいたスクラムハーフの内田啓介へ何やら助言していた。
防御のリーダーを務める堀江は、当該の助言の内容を「企業秘密」と話すが「ざっくり言えば、コミュニケーションをとってねと」。以後は、自陣深くまで攻め入られても防御のつながりを切らさずにいられた。
前半26分頃、自陣中盤右での相手ボールラインアウトからの攻めで同22メートル線エリアまで侵入されるも、接点に1名ずつジャッカラーを投下しながらも防御ラインの人数を確保。最後は相手のパスミスを誘った。13-17と差を詰めたのは、その直後のことだった。
続く32分頃には、フランカーのベン・ガンターが好ジャッカルで相手の反則を誘った。以後は敵陣深い位置に滞留し、38分には20-17と勝ち越す。
さらにハーフタイム間際には、相手ボールキックオフを向こうの長身ロック、ハリー・ホッキングスにさらわれ自陣深くまで攻め入られる。接点に複数名の選手が巻き込まれるなか、テンポよく右から左へパスを回される。
ところがこの場面でも、フルバックの山沢拓也のタックルを皮切りに防御を整える。ケレビが、マッケンジーがいくら仕掛けても網を保ち、最後はまたもガンターがジャッカル。反則を誘った。
ディーンズは「そして、10番の位置が本職なから15番にチャレンジした山沢拓也選手。彼の活躍で助けられた部分も多かった。彼の頑張りに感謝したいです」。堀江と交代する11分まで好守を披露した坂手は、この前半をどう振り返ったのだろう。
――前半の苦しい時間帯を乗り越えるために何を話し合ったか。
坂手
「ペナルティで下げられることが多かったことが、前半の難しいところでした。2つのペナルティ(グラウンド中盤での)で陣地を戻されて、そこからトライを取られた(前半9分のことか)。やるエリアを確認しよう、とは話しました。
あとは、しっかり自分たちから1歩、動いていこうと。僕たちのほうが先に、前に足を出そう、と。相手よりもいい動きが、前半の途中からできたと思います」
――ご自身も好タックルで魅した。
坂手
「いいディフェンスもあったし、反省点もあるので一概には言えないですが…。システムのなかで自分のプレーを出さなければいけない。そのなかではできた部分もあった。またビデオで振り返って、レベルを上げたいです」
――レフリーとのコミュニケーションについて。
坂手
「レフリーの木村さんとの解釈の違いは前半特にあったのですが、その中で木村さんと話しましたし、チーム内で何を修正すればいいかのリクエストをもらったので、それをチームに話せました。またたくさんのペナルティを得られたのは、僕たちの強みのディフェンスのところだったと思います。いいディフェンスをして、ジャッカルをする選手がボールに働きかける。その、僕の基本のディフェンスがよかった。そこが僕たちのペナルティを多く得られたところかと思っています」
後半もワイルドナイツの防御がさえた。時折、ケレビの問答無用のランに壁を破られたが、そのたびに周囲の選手が次のフェーズで好タックルを放った。
26-17として迎えた後半23分頃には、自陣中盤でのラインアウトから隙間を破られながら、その後の局面で攻守逆転。攻めてはバックスペースへのキックとチェイスが際立ち、追加点の下地を作った。殊勲のガンターはこうだ。
「今日は、準備したプランが機能した。試合のなかでもうまくいかない場面がありましたが、チームとして徐々に適応していけた。それが今日に繋がった。間違いなくベンチから出た選手がいい影響を与えてくれた。フィールド内ではリーダーが率先してチームの方向づけてくれた」
会見では以下の問答もあった。
――山沢選手の15番起用について。
ディーンズ
「山沢選手はチームで素晴らしい貢献をしてくれている。10、15番のどちらもこなせると我々をも信じている。いい15は頻繁にファーストレシーバーになる、ゲームに絡むと考えていて、山沢がそれをできるのを信じている。自分からボールをもらいにいける選手です。なおかつスピードもあるので、彼がどんどんボールをもらうことで、相手に脅威を与えられていたと思います。練習で15番に入っている時は、普段、10番をやっているときよりも息が上がっているように見られました。ただ、この役割に慣れながら、野口(竜司、本来の正フルバック)と共存してシーズンを戦ってほしいです。
10、15番でディフェンスの役割が多少、違うが、今日の山沢は練習からよく声を出していたし、ハードワークでチームのピンチを救ってくれていました」
――前節はナイターで今日はデーゲームだった。コンディション作りは。
坂手
「前回のナイターはすごくいい雰囲気で会場として素晴らしかった。今日のデーゲームもたくさんのお客さんが入っていて天気も良く、試合をしていて楽しかったです。試合時間への対策はあまりないですが、ここから遠征が2試合、続くので、1週間の初めでどう疲れをとるか。ゲーム後のリカバリーが大事になる。それを皆でやっていきたいです。どの試合も落とせない大事なものなので、チーム全員でいいコンディションでやってきたいです」
敗れたサンゴリアスの中村亮土キャプテンは、「今日に関してはワイルドナイツが素晴らしいラグビーをした。最初の20分は速い球出しができたのですが、それ以降はワイルドナイツのジャッカルをする選手に(球出しを)遅らされるなどしたなかでのアタックだった。ブレイクダウンでの課題が多くあると思います」と述べた。