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「コロナがなければ」。明治大学・飯沼蓮新主将、苦心と決意。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨年時からリーダーシップを発揮。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 明治大学ラグビー部の飯沼蓮新主将は、昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大に苦心しつつ「応援されるチームになっていきたい」と決意する。2018年就任の田中澄憲監督は今季途中で退任が濃厚も、こう応じた。

「監督が変わろうとスタイルは変わらない」

 飯沼は日川高校出身のスクラムハーフ。2年時から主力に定着し、昨年度まで全国大学選手権で準優勝、4強入りに終わる。同じポジションに福田健太主将(トヨタ自動車)がいた1年時は22年ぶり13回目の優勝を果たしているだけに、飯沼も最終学年となる今季は日本一奪還へ語気を強める。

「勝っても反省できて、ゲームのなかでも修正できるようなチームになっていきたい」

 今季のチームは2月8日に集合。3月某日、主将就任の経緯から語った。

 以下、単独取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――主将になるまでを振り返ってください。

「4年生で2月8日に集合してから毎日、ミーティングをしていて。最初は去年の反省点、今年はどんなチームにしたいかのカラーを決めて。ここから主将を1回きりのミーティングでは決めないで、何度か話し合って、(投票で)最終的には選んでもらいました」

――「反省点」とは。

「去年はコロナの問題にフォーカスしていた。練習の雰囲気も悪かったわけではないですが、もっとこうできたなというものがある。今年は勝つべくして勝つ人間性を作っていこう、私生活も一番にしようというのを話し合いました」

――昨季は夏前の再集合時以降、八幡山区域から出ないという厳格なルールを敷きました。一方、関東大学対抗戦での慶應義塾大学戦(11月2日)を落とした際、スタッフからケアルームの整理整頓について苦言を呈されました。

「去年は外出もできず、フラストレーションがたまり、ルールのことに意識が向かい過ぎた。そして秋、トレーナーの方にミーティングで(整理整頓について)言われ、皆、そこで、気づいた感じでした。私生活が勝ちに直結するかはわからないですが、だらしないチームが勝ったとしても称賛されない。応援されるチームになっていきたい、とは言ってきました」

――外出に関する制限。今季はどうしますか。

「緊急事態宣言が出ていたのもあり、集合してからは以前と同じ形。ここからはまた皆と、監督さんとも話し合います。皆のモチベーションを考えると(ルールは)緩くしたいです。全員が(ルールの意味や)何が大切かを理解できていなくて、不満の声が出て…というのはちょっとありましたね。けど、一番大切なのは安全にラグビーを練習することで…。

難しいですね。本当に、コロナがなかったらもっと違うことを考えられるのにな、と思うことはあります」

――今季途中で監督が変わります。2017年にヘッドコーチとして入閣した田中監督は、飯沼選手が尊敬する指導者の1人でもありますが。

「そこ(監督交代)については、まだそんなに深くは考えたことはないです。澄さんは5月まではいてくれる。自分たちのやることは、変わらないです。

まず皆に価値を期待されるチームだと再認識する。誰が監督になっても核となる部分は変わらないですし、今年はその核をもっと大切にしようとして、『MEIJI PRIDE』をテーマにしている。監督が変わろうとスタイルは変わらないですし、自分たちで考えて作っていかないといけないので、もっと主体性のあるチームにしていきたい」

――今年、何をやり切りたいか。

「今年、4年生の幹部をあえて少なくした。去年あった(複数名による)リーダーズグループをなくして、4年生全員で引っ張っていくようにしました。去年は上のチームと下のチームの差があり、チームがまとまり切らないところがあったので、リーダーズグループを作らない代わりにグループ制(複数名によるまとまり)は継続し、ペガサス(上位チーム)、ルビコン(控えチーム)、ポジションもごちゃ混ぜにして(グループを分けて)試合のレビューをし合って、ひとつのチームを作りあげながらゲーム理解度を上げる。明治は、去年も慶應義塾大学戦の後によくなったように、負けてから(緊張感が増す)…となっている。そうではなく、勝っても反省できて、ゲームのなかでも修正できるようなチームになっていきたいです」

 望まぬ感染症の拡大に「コロナがなければ」とも漏らすが、「一番大切なのは安全にラグビーを練習すること」とも認識。繊細な舵取りを任されている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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