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世界一経験のウィリー・ルルー、日本一への条件を語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長186センチ、体重90キロ。鋭いランニングとロングキックが冴える。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 2019年のワールドカップ日本大会を制した南アフリカ代表のフルバック、ウィリー・ルルーが、優勝の秘訣を語った。

 2月23日、トヨタ自動車の一員としてオンラインでの共同取材に応じた。戦力十分の現チームが国内トップリーグを制する条件に関して聞かれ、控え選手の重要性を口にする。

 言葉の背景には、史上3度目の世界一に輝いた2019年の南アフリカ代表の姿が浮かび上がる。

 トップリーグは3日前にしたばかり。ルルーは会見において、同僚でそれぞれニュージーランド代表、オーストラリア代表の主将を務めてきたキアラン・リード、マイケル・フーパーからの学びについても言及した。南アフリカを含めた南半球3か国は毎年、トライネーションズおよびラグビーチャンピオンシップという代表戦に参加。長くライバル関係にある。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――2021年2月、予定より約1か月遅れてトップリーグが始まりました。昨季は2月下旬でシーズン不成立となっているなど、準備状況は平時と異なったと思いますが。

「長いオフ。時間もかなりあったので、細かい怪我などを治してから試合に臨めた。いまの南アフリカのラグビー界では、観客のいない状態で試合が行われています。とにかく、ファンの前でできて嬉しいです」

――いま、トヨタ自動車には各国の大物が並んでいます。

「いままでニュージーランド、オーストラリア、南アフリカと異なる状況下でラグビーをしてきたのが、いま、同じジャージィを着てトレーニング、準備をしています。敵じゃない、というのが嬉しい。喜びを感じています。彼らからはとても学ぶことが多いです。オールブラックスやワラビーズでキャプテンをしてきた彼らは、試合の様々な状況にあっても焦らず、皆に話したり、聞いたりしているんです」

――トヨタ自動車は、優勝するだけの戦力を有しています。そんななか、実際に優勝するには何が必要でしょうか。

「いいスコッドを揃えるのはもちろん、(チームに登録された約)50人すべてが同じゴールを目指していくのが大事ではないでしょうか。毎週の試合で相手がどんなことをするかを予想し、メンバーに選ばれていない選手がメインのメンバーの準備をサポートする。メンバーに選ばれない選手が落ち込めば、それが全体に影響を与える。メンバーに選ばれるにせよ、選ばれないにせよ、同じジャージィを着る限りは同じ目標を持つことが大事だと思います」

 リードやフーパーといった国際的なリーダーの「落ち着き」ぶりに感銘を受けるルルーは、優勝への秘訣にメンバー外選手の献身を挙げた。

 メンバー選考から漏れた選手はモチベーションの維持が難しい。ただ、当該の選手が練習で前向きに「仮想敵」を演じて主力を支えるようになれば、クラブ内によきグルーブが響きうる。

 2019年の南アフリカ代表では、ヨハン・エラスムスヘッドコーチのもと多民族集団が一丸。3番手フッカーのスカルク・ブリッツは、明るいムードメーカーとして主力組をバックアップした。

 ちなみに次回のワールドカップは2023年、フランスで開かれる。これまで61キャップ(代表戦出場数)獲得のルルーは、出場への意欲も問われた。

――いつまで日本でプレーしたいか。また、2023年のワールドカップフランス大会への思いは。

「トヨタ自動車が許す限り日本に残りたい。いまはとにかくラグビーができるのが嬉しい。ここにいたいという気持ちをプレーで表現したい。ワールドカップへは若い選手がポジション争いにプッシュしているなか、自分は大会時に33歳。コンディションがよくチャンスがあればチャレンジしたいです。ただ、ベストを尽くし続けたその結果は、誰にもわからない」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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