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日本代表戦で雪辱晴らした南アフリカ代表。紳士的すぎる記者会見。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
入場時のコリシ(左)。(写真:ロイター/アフロ)

 9月20日からのラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に出場する南アフリカ代表が、6日、埼玉・熊谷ラグビー場で日本代表を41-7で下した。

 W杯で過去2度の優勝を誇る南アフリカ代表は、4年前のW杯イングランド大会でそれまで同通算1勝の日本代表に32―34と敗れていた。雪辱を晴らす意味合いも帯びた今回の試合では、防御やキック戦術で力を示した。

 試合後、ラシー・エラスムスヘッドコーチとシヤ・コリシ主将が会見。2018年3月に就任し同代表の低迷脱却に成功したエラスムスは、入室するや「遅れてすみません」と謝辞。その後に笑顔を浮かべながら語った言葉には、両軍の選手を敬う気持ちがにじんだ。会見中、コリシが指揮官の手腕について語る一幕もあった。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

エラスムス

「遅れてしまい、申し訳ありません。日本代表の選手が我々のロッカールームに来ていただき、話をしていました。明らかに、非常に強い日本代表との試合になりました。今日のスコアボードは実力を示すものではない。今度のテストマッチでは、(自軍に)怪我が出なくてよかった。あと2週で開幕。我々が正しい道のりを進んでいるのがわかりました」

――日本代表の選手がロッカーへ来た。どんな話を。

エラスムス

「私たちは今回、初めて日本でプレーをしたのですが、個別にこの国でプレーをしたことのある選手もいました。それに日本代表にもピーター・ラブスカフニという南アフリカの選手がいて、私はヘッドコーチのジェイミー・ジョセフやトニー・ブラウンのこともよく知っている。いい関係性を持っているのです。ですので『こんにちは』ということで話しました。ワールドカップ前の試合を日本でしたわけですがですが、もともと日本のことはよく知っていて、文化も好きです。フィールドを離れたところでも、良い関係を保ちたいと考えています」

――試合ではタックルまたタックル。ターンオーバーに繋がったものも多い。防御については。

エラスムス

「気候に順応することが必要でした。開始25分でジャージィを汗でぬれていた。ダーバンでもそういう試合を経験していて、今回は事前に濡れたボールを使っての練習もしました。ニュージーランド代表戦も(当日の気候が)どうなるかわからなかったからですから。今回、トライをされるギリギリのところまで迫られもしました。防御は効果的でしたが、100パーセント成功したとは言えない。80パーセントくらいは成功した、と言えそうです」

――キックを多用した。

エラスムス

「ポゼッションはラインアウトスクラムでも取れるが、キックでもボールが戻ってきてポゼッションが取れる。それを日本代表戦でトライをしてみたかった。そのチャレンジです。我々がしたトライのうち、キックからのものもありました。(キックが得点の)源泉になるとわかりました」

――ここからはコリシさんに伺います。エラスムス就任後好調。どんな指揮官ですか。

コリシ

「私がいたウェスタンプロビンス高校でもエラスムスさんはディレクター・オブ・ラグビーでした。だから、南アフリカ代表のヘッドコーチとなる前から彼を知っています。彼は、南アフリカ代表に個々よりもチームが大事なのだと思い出させてくれた。ラグビーをするにあたり、ハードワークするしかないことも。私たちはできるだけハードにプレー、ハードにトレーニングすることを心にとめています」

――日本とのスクラム。感触は。

コリシ

「とても強いです。コーチからも言われていたこと。試合前の準備でも言われていたことですが、(日本は)非常に強かったし、今後も強くなる」

――多文化共生のために気を付けていることは。日本代表も同じようなバックボーンを持っているが。

エラスムス

「やはり日本代表が2015年に素晴らしい活躍をしました。2015年のチームはコンタクト、スクラムでもボールを確保しフレッシュなラグビーをしました。1999年に日本代表が145点、取られたのを知っています。いまは、本当に成長しました。毎年、日本は良くなっています。いろんな文化を合わせることは、すでにできていると思います。日本国歌を歌っているのを見て、誇りに思いました。日本代表にはトップ8に入るチャンスもあります。そこで我々は日本に挑戦できる」

――4年前の敗北は、過去のものになったか。

エラスムス

「前回は負けて今回は勝ったということ。そこからここまで強くなったということで、ハードワークしてきたのはわかります。2015年の記憶があり、そこは意識していました。私自身もフィールドを後退させられたり、キッカーがゴールを外したりと、こういう経験(悔しい思い)をしたことはあります。これは日本の皆さんのことをよく言うために話しているわけではないですが、日本のファンは相手のいいプレーにも拍手していて、ここには学ぶところがありました。W杯ではプレーオフに行って、また対戦したい、お互いに頑張りたい」

 南アフリカ代表は、今回のW杯では予選プールBに参加。初戦では2連覇中のニュージーランド代表とぶつかる。各組2位以上が進める決勝トーナメントにプールB・1位で進めばプールA・2位、プールB・2位で進めばプールA・1位のチームと試合をする。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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