Yahoo!ニュース

サンウルブズが強豪チーフスからスーパーラグビー敵地初勝利を挙げた意味。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
今季は代表候補と海外選手が融合。写真は第2節。(写真:アフロ)

 ラグビーワールドカップ日本大会開幕を約200日後に控える2019年3月2日、日本代表を支えるサンウルブズが発足4年目にして敵地初勝利を挙げた。存続の危機がささやかれる多国籍軍が、一筋の光を灯した。

 ハミルトンのFMGスタジアム・ワイカトで、ニュージーランドの強豪チーフスに30―15で勝利した。序盤、主力を欠く相手を得意の連続攻撃で翻弄。23―3とリードして迎えた後半は不用意な反則で後手を踏むが、要所でチーフスの反則やエラーを誘うプレーを披露した。途中交代したロックのヘル ウヴェはラックサイドや敵陣ゴール前で持ち前の突進力を活かし、守っても首尾よくボールに絡んだ。

 ヘルは、今年の日本代表候補にあたるラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)のメンバー。同じくRWCTSではプロップの山下裕史、フッカーの坂手淳史らも活躍した。代表候補勢の大半が国内で長期合宿を実施するなか、一足早く実戦で存在感をアピールした。

 国内合宿組がディフェンスコーチ不在のまま練習をしていること、国内合宿とサンウルブズとの間で異なるスタイルを採り入れたプレーがあること、ワールドカップ対戦国の分析度合いが不透明であること、全体を統括するジェイミー・ジョセフヘッドコーチの所信表明が控えめであることなど、日本代表の内部には検討事項と見られる要素が多い。もっともこの日のサンウルブズの勝利は、スーパーラグビー過去3シーズンで通算6勝というクラブにとって貴重な史実となる。

 というのもスーパーラグビーを統括するサンザーは、3月上旬にも今後のスーパーラグビーのフォーマットに関し議論をすると見られる。2021年以降の参戦継続が不透明とされてきたサンウルブズは、いちはやくグラウンド内での参戦意義(勝利およびエキサイティングな試合内容)を示さねばならなかったのだ。今後はアジア市場の発展や国内スポンサー獲得の可能性など、財政面でのポテンシャルがアピールされたい。

 サンウルブズはこのままニュージーランドツアーを続行。9日にはオークランドのQBEスタジアムでブルーズと激突する。敵地での2連勝が叶えばクラブ史上初の快挙となる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事