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イングランド代表戦でも持ち味。日本代表・姫野和樹の心を整える方法。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
聖地でもはつらつ。(写真:アフロ)

 4年に1度のワールドカップ日本大会を見据えるラグビー日本代表は、現地時間11月17日、ロンドン・トゥイッケナムスタジアムでイングランド代表に15―35と惜敗した。収容人数8万人超という巨大スタジアムで前半は15―10とリードを保つも、最後は世界ランク4位の強豪に屈した(日本代表は11位)。

 この日先発ナンバーエイトだった姫野和樹は、持ち前の突破力と自陣ゴール前でのジャッカルを披露。試合を引き締めた。身長187センチ、体重108キロのパワフルな24歳は、国際舞台でも自身の強みを発揮。その背景には、出身の帝京大学で得た心の整え方があるようだ。

 遡って11月2日、東京・味の素スタジアムで興味深い発言があった。

「すごく、緊張しています。国を代表して戦う。押しかかる重みは違うものがあります。それに相手が世界最強のオールブラックス。緊張する理由がまた増えた。ただ身体自体はいい状態なので、気持ちを整理して明日に臨みたいです」

 

 世界ランク1位のニュージーランド代表オールブラックスとの対戦を、翌日に控えていた時だ。自身が「緊張」している状態を事細かに分析し、「気持ちを整理して明日に臨みたいです」。ベストな心理状態がどのようなものかは把握していて、当日までにはその地平にたどり着きたいとしているようだった。

 31―69で屈したニュージーランド代表選後、姫野が改めて心理状況に関して話す。59分間プレーしたイングランド代表戦前も、同種の作業をしていたのではと推察されて興味深い。

 以下、オールブラックス戦後の共同取材時の一問一答の一部(質問全て当方。編集箇所あり)。

――前日は緊張されていたようですが、実際、試合にはどんな状態で臨めましたか。

「いいマインドでやれたと思います。ハカ(オールブラックスの試合前の舞踊)を見てエキサイトしたので、そこはもうちょっとリラックスしてもいいかな、とは(思った)」

――随分と心の状態を細かく分析されているようでした。そのような考え方は、どこで身に付けましたか。

「大学時代、ずっとそういう作業をしてきました。変なプレーがあったり、自分のパフォーマンスが悪かったりした試合はどういうマインドだったろうな。逆に自分がよかったときはどういうマインドだったろうな。そうしたことを振り返りながら、どのマインドが一番いいのかに気づけたのは、大学時代でよかったことのひとつです」

――自分のなかで心のありように関する「正解」がわかっていて、当日その「正解」にたどり着くために施策を練る。楽器のチューニングにも似ているような。

「社会人に入ってからも、落ちている日には(気分を)上げたり、気持ちの上がりすぎている試合では逆に落ち着かせたりして、自分の(最良の)マインドに持っていくという作業はしています。それをおろそかにするとパフォーマンスに波が出るので、自分にとってのいいマインドを理解して、そこへいかにもっていくかを意識しています」

 ちなみに帝京大学は大学選手権9連覇中で、姫野が4年だったシーズンは8連覇を達成している。

 日本代表は現在もイングランド遠征の只中で、現地時間24日にはグロスターで、本番の開幕戦でぶつかるロシア代表と対峙。姫野は引き続き、内なる自分と対話を重ねる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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