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田邉淳コーチ、サンウルブズの絆はどう作った? 日本代表はどうする?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
現役時代は名ゴールキッカーとしても活躍。(写真:アフロ)

 ジョージア人のジャバ・ブレグバゼが攻守逆転を決めると、サモアにルーツを持つ日本人のラファエレ ティモシーが球を保持。お次はニュージーランド人のヘイデン・パーカーがボールを蹴り上げ、日本人の福岡堅樹がキャッチ…。ここからも多国籍軍が首尾よく球を繋ぎ、敵陣深い位置へ侵入する。

 5月19日、灼熱の香港・旺角スタジアム。国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは、南アフリカのストーマーズを相手に23―23とタイスコアでクライマックスを迎えていた。

 最後はパーカーがドロップゴールを決め、26―23と劇的勝利。スタンドは沸いた。

 さかのぼって5月12日、東京・秩父宮ラグビー場で今季初白星を挙げたばかりだった。この日はレッズに63-28で勝利。裏を返せば、ストーマーズ戦でクラブ史上初の連勝を決めるまで開幕9連敗を喫していたこととなる。

 いったいなぜ、実力者も少なくないチームは苦しんできたのか。チーム内に問題があったとしたら、いかに乗り越えてきたのか。

 レッズ戦後、都内でその問いに応じたのが田邉淳アシスタントコーチ。2016年のチーム発足時から在籍する唯一のコーチングスタッフだ。現役時代を過ごしたパナソニックでコーチを始めた頃から、「日本人初のスーパーラグビーコーチ」を目指していた。

 15歳の頃から9年間ニュージーランドへ留学していたとあって、英語と日本語の二か国語で指導が可能である。日本代表の指揮官も兼ねるジェイミー・ジョセフヘッドコーチら、ニュージーランド出身コーチをサポート。選手と首脳陣とのパイプ役も担う。

 取材では、サンウルブズと連携する日本代表の活動についても青写真を明かした。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今季初勝利の意味は。

「チームがやってきたことが正しいのだというひとつの証明になりますよね。改善点はありますが、数値として表れているものもあります。まぐれで勝ったかどうかということは、次の試合で測られます」

――あの試合では、キックを蹴った先での組織防御が光っていた。

「キックを蹴ること自体には疑問を感じていません。ただ昨年――1年目もそうでしたが――は、キックを蹴った後のディフェンスについて改善すべきと指摘されていた。個人のタックル(の問題)もありましたが、個人がタックルをしない状況で…(防御が破られている)という場面を多く作っている。まず先週は、システムを守り、だれがどういう状況かを把握するという練習をやってきた。それが、うまく出たかなと」

――今後は、蹴られた地点ですぐに分厚い攻撃ラインを敷ける献身的なチームとも戦います。その時も、レッズ戦のような防御ができるでしょうか。

「どれぐらいの人数を(タックルした後の)ブレイクダウン(接点)にかけるのか、かけないのか、どこに(球を奪う)チャンスがあるのか(を判断したい)。リロード(タックル後の起き上がり)する人数が多ければブレイクダウンへ(臆せず)プレッシャーをかけられるなど、色々な方法はある。ここに関しては、やっと皆が同じページを見られるようになったと思います。

 以前、メディアの方にも言いましたが、(シーズン序盤は)セレクションが落ち着かなかった。(試合によっては)7~9人も入れ替わるなかでひとつのページを見られるようにするには、(練習や試合の)回数をこなさないとだめだったのだな、と」

――「同じページを見る」ためでしょう。流大キャプテンはジェイミー・ジョセフヘッドコーチら首脳陣に、控え組を含めた選手との対話を増やすよう促したようです。

「最初は『ホテル(選手たちが宿泊)は家のようにしよう』と、ホテル内ではラグビーの話はしないようにしていたんです。ただ、それでは足らないと、個人のフィードバックをするように。部屋へ戻った選手をわざわざ戻したりはしていませんが、(食堂で)ご飯を食べている選手に声をかけて2~3分程度のフィードバックを…ということはこの5~6週間、やっていました。チーフス戦後のバイウィーク明け(4月2日以降)からです」

 日本代表およびサンウルブズは、グラウンド上にまんべんなく選手が散らばりスペースへキックやパスを効果的に配すスタイルを遂行。ジョセフ就任以前の日本代表では複数人が塊をなして球を繋いでいたとあって、現在はモデルチェンジの最中とも取れる。

 日本人が得意と見られるパスよりキックが多い現在の戦術は、一部で疑問の声を呼んでいた。もっとも、日本代表資格を持たない選手を含めたサンウルブズは時間をかけてこのスタイルをものにしつつある。その背景には、イメージを共有するための具体的な行動があった。

――4月中旬ニュージーランド遠征中は、本隊がスーパーラグビーを戦う一方で控え組はジャパンAに加わり別行動を取っていました。再合流からレッズ戦まで、工夫したことは。

「先週の1番最初のミーティングで、向こうでサンウルブズがやっていたことに関するビデオを見せた。そこでは笑いを取ったり、また、その後はミニチームディナーをやったり…。できることはやろうとしました。(全員が揃うと)15対15で練習をする際にあぶれる選手も出てくるわけで、その選手へのケア、練習量と質を落とさないことについては、僕が担当することにしました。メインの選手のフィードバックもするのですが、できるだけノンメンバーのケアも…。(仕事の)量は増えますが、仕方がないから」

――チームスポーツで成果を出す際は、控え選手の扱いほど重要と言われます。

「一番難しいのは、心の持ちよう。そこをどうサポートしていくか…。当然、選ばれないからとさぼる選手はここにいるべきではないですが」

――多国籍のチームを指導して。

「1年目のチームもいまと同じような感じでしたが、日本が好きで来ている選手が多いのは幸いです。これから日本でラグビーをするであろう選手がサンウルブズを選んできてくれている。それは、プラスです」

――言語、文化の壁は。

「細かいことは通訳を通さないといけませんが、練習中は問題ないし、日本人選手に混ざって遊びに行く外国人選手もいる。そこへの心配はしていません。日本人がスタッフ陣の英語を半歩くらい遅れて理解しているな…ということはあります。ただそれは、あって当たり前だと思います。そこが直接の敗因とは思わないです」

 日本代表は6月、テストマッチ3戦をおこなう。2019年のワールドカップ日本大会へ向けては、ここでこそ成功体験が欲しいところだ。

 もっとも日本代表では、サンウルブズの選手とそれ以外の場所の選手がミックスされそう。海外出身選手の数も減りそうななか、どうチームを作るのだろうか。ちなみに昨年6月のチームは、控え主体のアイルランド代表に2連敗を喫した。

――6月の代表活動へ向けて、田邉さんのスケジュールは。

「(5月中旬の段階では)まだはっきり決まっていません。代表へ帯同する期間もあると思いますが、サンウルブズが再始動することもある。行ったり来たりになると思います」

――サンウルブズのいない選手も多い日本代表では、どんなアプローチがしたいですか。

「サンウルブズでコンビネーションが取れてきたのに違う選手が入って…という遅れは取りたくないと思います。ここ(サンウルブズ)にいない選手が入っても『え、こんなコール知らない』ということはなくしたい。去年と同じアプローチだと、勝てないと思います。同じ相手(イタリア代表)と2試合しますが、去年のアイルランド代表戦のように『2試合目はよかったけど(点差が縮まった)』ということがないようにしたいです。

 週の頭にかなりの情報量が(選手に)入ると思うので、サンウルブズにいる選手を引っ張って。グラウンド外での勉強も促していきたいです」

――サンウルブズ組のグラウンド外での役割、大きくなりそうです。

「大きくなると思います。リーダー陣、スタッフも若干、変わるので」

 首脳陣や選手との「歩み寄り」のためにも動いている。サンウルブズと日本代表を適切に繋ぎ合わせるうえでも、力を注ぐだろう。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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