メインスタンドに注目。大東文化大学の良心は元気な「応援団長」?【ラグビー雑記帳】

80年代黄金期の大東文化大学。(写真:渡辺正和/アフロ)

 ラグビーの全国大学選手権は1月2日、東京・秩父宮ラグビー場で準決勝があり、モスグリーンのジャージィをまとう大東文化大学が白と紫を基調とした明治大学とぶつかる。

 トンガ人留学生の活躍などで過去3度の日本一に輝いてきた大東文化大学は今シーズン、1994年度以来4度目の頂点を狙う。観客席でその夢を願う1人が、4年生の河村綾人だ。

名物応援はどう生まれたか

 クラブの会計を任される河村は、有料試合時に会場入口前でチケットを販売。売り上げ記録をまとめるとスタンドへ走り、応援の音頭を取る。

 攻めに転じるや「ダーイートー! ダーイートー!」とチーム名を連呼する。トライが決まれば「サンダーバード」のテーマ曲に乗せ、チャントを叫ぶ…。声の響きが極端に良いことから、常連客や報道陣の注目を集めている。

「応援の文化は入学した時からあって、僕もそれを恥ずかしがるタイプではない。2年生の頃に先輩に『やってみろ』と言われてやるようになって、いまの形ですね。周りのお客さんから、応援団長のように見てくれています」

 もともとは、全国大会の常連である愛知の春日丘高校(現中部大春日丘高校)でキャプテンを任されるほどの実力者だった。

 とはいえ部員が100名を超える有名大学にあっては、さらに有望な下級生との定位置争いを強いられた。ラストイヤーとなる今年は春先こそ公式戦出場を果たすも、次第に別の選手が主力組に固定されるようになった。河村は悔しさをこらえ、自らの役割を全うしている。

「ラグビーをやっている以上は試合をしたい。メンバーに絡めたらとは思っているんですが、出ている奴に敵わないこともわかるというか…。そうであれば、会計業としてチームのために仕事をして、大きな声で応援を…。いまでは、そう思っています」

プレーで見本になれない分

 さらに河村が心を割いているのは、ラグビー部寮内での規則正しい私生活だ。

 日本のカレッジスポーツ界におけるキーファクターのひとつに、最上級生の態度がある。8連覇中の帝京大学では、岩出雅之監督が「一番のロールモデルは先輩」と看破。4年生との対話を重視する。彼らが出場の有無に関わらず下級生から尊敬されるよう、多くの仕事を与えてもいる。

 高校時代から「私生活がラグビーに影響する」と信じている河村も、学生生活を通して4年生が醸す雰囲気が成績に繋がりやすいと再確認していた。だから「サンダルで学校へ行かない」などといった寮則を率先して守り、組織へ程よい緊張感をもたらそうとしている。

「今年は試合に出ている4年生は少ない(準決勝での先発も3名のみ)。僕らにラグビーの面で教えられることは少ないかもしれない。でも、寮内で手本となる動きをして、それを後輩に見てくれたらいいな…と。学生スポーツなので、上級生がしっかりしているとチームもまとまると僕は思っている。プレーで見本になれない分、私生活で見本になる。他の4年生もそれが自然とできていて、チームにいい影響を与えていると思います」

 身長167センチと小柄もハードタックルで鳴らす河野良太キャプテンは、高校時代の同級生でもある。河野の就任当初は「いつでも前向きでいるべき」などの助言を与えていたというが、時を重ねるごとにリーダーの成長を感じるようになった。

「キャプテンになってからはっきりとものを言えるようになったな、と。地位が人を変える、ではないですが。このメンバーで日本一になる姿を見たい。日本一のチームにいられるのは、でかい経験だと思います」

 スタンドでの元気な応援からやんちゃのにおいをかぎ取るとしたら、それは大きな間違いかもしれない。自然と課された役割を生真面目に全うする会計兼「応援団長」は、れっきとしたチームの良心である。