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日本代表ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、課題の試合は「ためになる」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
久々に実戦復帰の立川は、若手の力を「引き出したい」と話していた。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は5月6日、東京・秩父宮ラグビー場でアジア・ラグビーチャンピオンシップ(ARC)の第3戦目に挑む。29―17のスコアで白星を得て優勝に王手をかけたが、格下とされる香港代表に2度リードを許すなど苦しんだ。

今回の日本代表は若手中心の編成。主力候補は日本のサンウルブズに入って国際リーグのスーパーラグビーに参戦中というこの日、昨秋のツアーで共同キャプテンだった立川理道、堀江翔太が実戦復帰した。

インサイドセンターの立川はゲームキャプテンとして先発する。3点差を追う前半39分には敵陣22メートルエリア右で深めのラインを敷いて、山田章仁のトライをアシスト(12-10)。7点リードで迎えた後半37分にも、敵陣ゴール前右でバウンドしたボールを落ち着いて処理しインゴールを割った。

フッカーとして後半から登場した堀江も28分、敵陣ゴール前で連続してボールを保持して決勝トライを奪った。

日本代表は13日、敵地・香港フットボールクラブで香港代表とARC第4戦目をおこなう。6月にはベストメンバーを編成し、ルーマニア代表やアイルランド代表などと戦う。

以下、香港代表戦後の共同会見(ジョセフヘッドコーチ、立川ゲームキャプテンが出席)での一問一答(編集箇所あり)。

ジョセフ

「タフな試合でした。香港代表は非常にフィジカルで、その激しさを続けたことに驚いています。ラインスピードも速くバックスのタックルも激しく、ブレイクダウンでもボールへ激しいコンテストがおこなわれた。それによって我々のプレーがスローになった。現在のチームにとって必要な、ためになる試合だった。選手たちはこのレベルでどんな力量が必要かを再確認してくれたと思います。ただ、乱れかけたとことでも、ここに座っているハル(立川)らリーダーが元に戻してやってくれたことには、嬉しく思っています。こういう試合だと、チームのシェイプ(陣形)などの形は乱れがち。そこで立川がしっかりと仕事をして、我々のやり方を続けてくれた。先週のいいパフォーマンスができたなか、サンウルブズに合流した選手が出たために入れ替わった選手がいた。そこでほめたたえたいのは初キャップの鹿尾貫太選手です」

立川

「タフなゲームでした。やっているなかで点差が開かない状態が続いていたのですけど、僕だけではなく、若手のリーダーや、ゲームコントロールしてくれる選手がコントロールしてくれたおかげで勝ち切れた。経験値が少ないメンバーでこういう試合ができたのはいいことなんじゃないかと思います。あと1試合残っているので、向上できることはしっかりとして、1週間いい準備をしていきたいと思いました」

――アウトサイドセンターの鹿尾選手について。

ジョセフ

「まずはディフェンスでコミットしたプレーを見せてくれる。ファーストトライは彼のキックから。あのキックを使うというスキルはそれほど難しいことではないが、初キャップでああいうスキルを使えるというのは、自信に満ち溢れる選手だったと思います。彼は新たな歴史を作っています。センターで出て、フランカーで終わったという選手!」

――けが人が出た都合で、途中、鹿尾選手はバックスからフォワードのフランカーに回りました。

ジョセフ

「彼がどこのポジションでプレーしたかで評価しているわけではありませんが、きょうはリザーブのフォワードが6枚。バックスで怪我が出たら色々といじってカバーしないと…と予想していたが、まさかフォワードがそうなるとは思っていなくて。試合中、彼が『何とかしないと』とフランカーについた。ただ、最近は15人でパスして、アタックをするラグビーになっている。複数のポジションをカバーすることになっても、選手たちはやりやすさを感じているのではないでしょうか」

――苦戦。アタックできず。

立川

「ブレイクダウンで簡単なペナルティーを継続してやってしまったことと、風上でもエリアを取れずに相手にペースを渡したことと…。相手がブレイクダウンで激しくコンテストしてきたのでアタックできなかったところがあって、自分たちのやりたいことができずに流れは悪かった。それでも先ほど言ったように、若い選手が流れを取り返してくれたので、よかったと思います」

――自身のパフォーマンスへの評価、6月を目指してどう向上するか。

立川

「試合勘はまだまだ取り戻せてなかった部分はあったと思いますけど、全体的にはよかった。ビデオを見返して、まだまだできるという部分は修正していきたい。5月のサンウルブズの試合を含め、6月の試合に向けていい準備をしていきたい」

――フルバックに入り活躍した野口竜司について。

ジョセフ

「野口はエキサイティングなプレーを見せてくれますが、山沢ら他の若手もいいアピールをしてくれました」

――立川選手と堀江選手への評価。

ジョセフ

「質の高い選手であることを、改めて見せてくれた。まだまだ成長できる部分はあると思いますが、堀江は長期オフから、立川は怪我からの復帰。調子を上げていってくれると、ジャパンにとってプラスになってゆく」

この日、攻めては香港代表の接点での圧力を受け細かいミスを重ね、守っては相手の用意されたサインプレーなどに防御を破られた。もっとも試合後の首脳陣や選手たちは総じて前向きに総括。昨秋に就任したジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「非常にいい試合だった」と振り返った。限られた時間でおこなわれる会見中、指揮官に試合内容を聞く質問は少なかった。

――香港代表の脇に置くとして、きょうの日本代表のパフォーマンスはどう映ったのでしょうか。

ジョセフ

「本当に、香港代表のかけたプレッシャーのなかでは非常にいい出来だった。先ほど言ったように、こういう試合では乱れがちですが、若手を含めパニックを起こさず、我々の戦いをやりきった。そこに感心しています。メンタル的な面で考えると、ジャパンは先週、(韓国代表に)80点を取っていて、この大会では何回も優勝している。それに私自身が、相手を弱小だと何度も発言してきたことが、逆に、相手に火をつけたとは思います。相手がジャパンを相手のホームでたたきのめすという気持ちを抱いてきた。そのなかでこういった経験ができたこと、乱れず、形を崩さずに戦いきったことには、本当に感心しています」

ARCの初戦で韓国代表に29失点した際は、選手のタックルについて課題を語っていたジョセフヘッドコーチ。東海大学の鹿尾をはじめ若手を多く起用したこの日は、思わぬ苦戦を「ためになる試合」と強調していた。今回は試合後のロッカールームでも、指揮官は選手を集めて前向きな総括をしたという。2019年のワールドカップ日本大会まで、ち密なロードマップを描いてゆく。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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