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大学生トップリーガー山沢拓也、日本代表入り。王国で学んだ「自分たちで…」とは【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
パナソニックでも、最後の方まで練習場に残る。(写真:アフロスポーツ)

4月22日からのアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の日本代表スコッドが4月10日、発表され、昨季の国内トップリーグで大学生選手として話題になった山沢拓也がリストアップされた。

身長176センチ、体重81キロの23歳。バックスラインの先頭でゲームを動かす、スタンドオフを主戦場とする。

本格的に競技を始めた埼玉・深谷高の1年時から、全国高校ラグビー大会でしなやかな動きとスキルを発揮。恩師である横田典之監督はこの時点で「2019年の日本代表でスタンドオフを」と太鼓判を押し、各カテゴリーの代表や選抜の集まりへは積極的に供出してきた。春から秋にかけては他のポジションを経験させることで、司令塔としての肥やしを蓄えさせた。

高校3年時、当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチが日本代表候補へ抜擢。その後も筑波大学に進んだ山沢は「将来性がある」「ソフトハンズ(柔らかなパスとキャッチの技術)の持ち主」と称賛されてきた。

前年度は筑波大4年ながらパナソニックに選手登録され、国内のトップリーグに参戦。大学生トップリーガーとして話題を集めた。

今回の代表選出に先立ち、2015年のスーパーラグビー(国際リーグ)を制したハイランダーズへ留学。ラグビー王国とされるニュージーランドの地では、何を学んできたか…。代表選出に伴う共同取材のなか、留学中の話題にも言及した。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――初めて代表候補となったのは高校3年時。ここまで、長かった。

「時間はかかったんですけど、いい経験だとは思う。ここでもいろいろ学びたいと思います」

――ニュージーランドでの滞在は。

「ブリスベンのグローバルテンズ(10人制の世界大会、パナソニックが参加)が終わってすぐ向こうへ行って、3月の6日ごろまで3週間くらいいました」

――ハイランダーズで学んだことは。

「個々のフィットネス、フィジカルには違いがありましたけど、基本的なラグビーのやり方は一緒。それを知れたことが大きかった。それ以外では…。向こうの選手は、ウェイトの時には出されたメニュー以外のことを自分たちでやっている。そういう選手と一緒にやって刺激を受け、勉強になりました」

海外留学をした若手選手は、口を揃えて現地の若手選手のハングリーさについて語るものだ。慶應義塾大学在学中にオーストラリアへ渡った山田章仁はアルバイトをしながらプロを目指す若者に感銘を受け、早稲田大学時代にニュージーランドでプレーした藤田慶和も率先してジムワークに励むスーパーラグビー予備軍たちにインスパイアされた。

個人練習の虫とされる山沢も、ハイランダーズの面々の勤勉さに「プロ意識」を見たという。

――帰国後はどう過ごしていましたか。ちなみに、他の日本代表勢の多くはサンウルブズ(スーパーラグビー)やナショナルデベロップメントスコッドのキャンプ(ジョセフが主催)に参加していました。

「膝の調子が良くはなかったので、しっかり休ませることと、患部のケアを…と」

――かねて、このタイミングでこのステージへ来ようと思い描いていたのでしょうか。

「決して万全の状態ではないですけど、やれることはしっかりとやりたいです」

――今日の練習を通し、ジョセフヘッドコーチ率いる日本代表が大事にしていることなどは何だと感じましたか。

「まずはしっかりとした形をはめる(作る)ところ。そのなかで空いたところを(攻める)というラグビー。それについては、パナソニックと同じようだなとは思った。まずはいろいろなコール(プレー中の動きを表す言葉)をしっかりと覚えなきゃな、と」

――ジョセフさんとの直接対話は。

「まだ、話していないです(10日の午後の時点)」

――スタンドオフの定位置争いについて。

「皆、すごい人たちで、いろいろな特徴がある。自分は、そこに負けないようにというよりは、強いチームを作るために、すごい人のすごいところを盗みながら、自分のレベルを上げていきたいな、と思います」

――アピールしたいプレーは。

「一番は、ランで勝負したいですけど、それ以外にもやることは多い。戦術に沿ったプレーができるように…」

――若手主体で臨むARCを終えると、日本代表はベストメンバーを編成して6月にアイルランド代表戦などをおこないます。

「いまはサンウルブズのメンバー(海外遠征に出かけている選手たち)もいないですし、そこ(6月の活動)について言えることはないですけど、とりあえず、このアジアの方でしっかり頑張りたいなと思います」

高校3年生の頃の全国高校選抜大会の期間中。試合会場で某強豪大学の監督と対面する。現役時代から著名だったその人は、堂々たる声で「将来の目標は?」と尋ねた。それに対し、人見知りと見られていた拓也青年は少しくぐもった声で「ないです」と即答。その心は、「目の前のことを、1つひとつやっていくだけ」だった。以後、故障という回り道を強いられながらも、成功への階段を「1つひとつ」登ってきた。

仲間内では、その才能と同時に練習熱心さを称えられてきた山沢。稀有な才能を地道な個人練習で磨き、日本代表の背番号10を見据える。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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