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「見とけよ」→「歴史に名を」。日本代表・坂手淳史、ツアー最終戦へ決意明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ご覧の面構え。溌剌とした口調。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は5月28日、東京・秩父宮ラグビー場で香港代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ最終戦をおこなう。昨季は帝京大学のキャプテンとして大学選手権7連覇を達成した坂手淳史が、2試合連続で先発する。

ここまで3戦全勝中のチームは現在、都内で合宿中。坂手は26日の練習後、諸事に揺れないチームの良さを語った。

強烈なタックルを長所に京都成章高校時代からその名を馳せた坂手は、身長180センチ、体重104キロの22歳。エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチからも練習参加を求められるなど、高く評価されていた。今春からは日本最高峰のトップリーグで3連覇中のパナソニックに加入する。

1年時から主力チーム入りした帝京大学で、ポジションをナンバーエイトからフッカーに転向。最前列中央で組むスクラムの技術面では、さらなる経験値の積み上げを求めている。

今回のチームには、昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げたメンバーが1人もいない。中竹ヘッドコーチ代行が、若手中心のチームを引っ張っている。

始動前は「2軍」などと揶揄される向きもあったなか、坂手は「そんな風に言われているのだとしたら、まぁ、見とけよという感じではあります」と溌剌とした笑顔を浮かべていた(次の日本代表は2軍だと? 帝京大学前キャプテンの坂手淳史が笑顔で「見とけよ」。【ラグビー旬な一問一答】)。

なおこの週は、6月にイングランドでワールドラグビーU20チャンピオンシップに挑む20歳以下(U20)日本代表も練習に参加。U20日本代表では、中竹がヘッドコーチを務める。

日本代表は、今度のゲームを最後に一時解散する。カナダ代表やスコットランド代表と試合をおこなう6月のツアーに備えては、今回選ばれた32名(追加招集、途中離脱などを含む)のうち14名にイングランド組19名などが加わった43名のスコッドが発表されている。

ここでは、スーパーラグビー(国際リーグ)に日本から参戦するサンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチが代行を務める。坂手はこの隊列からは外れた。

以下、26日の一問一答の一部(編集済み。全て当方質問)。

――まず、21日に南洞アジアードスタジアムであった韓国代表戦中のプレーについて。60―3で勝ったこの日は、序盤の2本のスクラムで故意に崩すコラプシングという反則を取られていました。3本目からは修正し、本来の力量差を示した印象です。

「1、2本目とも組んでいる感じでは勝っていた。ヒット、ヒットで相手の方へ真っ直ぐ押せていた。ペナルティーの笛を吹かれるようには感じなかったのですけど、試合中にそう言っていても仕方がないので…。(スクラムを)落とすのは止めよう、と確認しましたね。落ちてしまったらどちらに(反則の笛を)吹かれるかわからない。落とさず、自分たちの高さでしっかりと組もうとは確認しました。そうすることをレフリーの方に観てもらって、コミュニケーションも取れるようになってこちらが(相手の)ペナルティーをもらえるように。その辺の修正はよかったかなと思います」

――大会序盤は、現在サンウルブズの一員として遠征中の森太志選手と定位置を争いました。チーム始動時から、「森さんといたら学ぶところは多いはず」と仰っていましたね。

「スクラムに関しては細かいディテールの部分でよくコミュニケーションを取ってもらった。2週間、一緒にいて、色々と教えていただいた。いいスクラムを組めるようになりました」

――次はこのチームの最後の試合。

「いまはワクワクした気持ちしかない。楽しみながら、やってきたことを全て出す集大成なので、楽しみですねぇ。今回はメンバーが入れ替わり、きょうはU20日本代表の選手も一緒に練習をして、いっぱいのスタッフに関わっていただいて、このチームでできるラスト。いいゲームができることを望んでいます」

――6月のスコッドからは外れることとなりましたが。

「いまはそう見られているということなので、これからパナソニックで伸ばせることはたくさんあると思うので、そこを伸ばして、早い段階で食らいついていけるようになりたいです」

――今大会中、メンバー内で6月のスコッドに入った選手と外れた選手が混在する状態となりましたが。

「いや、その話は出てこないですね。選ばれるメンバーも残るメンバーも、まずはこのチームで…ということを全員が考えている。この香港代表戦に向けて何ができるかをチームで確認する。それをずっと、やっているので。U20の選手もワールドラグビーU20チャンピオンシップではなく、香港代表戦のことを見てくれている。そういった強さはあると思いますね。まずは、この試合。そう全員が考えている」

――いいチームです。

「そうですね。昨日はチームソーシャルがありました。最初はU20日本代表の選手がなかなか僕らになじめないところもあったと思うんですけど、食事をすることでいろんな話ができて、いいコミュニケーションを取れた。雰囲気もいいです」

――坂手選手は、このチームのリーダーシップグループに入って活動していました。

「リーダーと言っても、このチームでは各選手ともいいコミュニケーションを取れる人たちばかりだった。皆がリーダーのようだった。だからリーダーの仕事は、少なかったです。ただ、ウッチーさん(内田啓介キャプテン)を中心にまとめてくれて、そのなかに入れてもらって、凄くいい経験ができました」

――「見とけよ」。できましたね。

「ま、これからですね。まだまだです。いままでが良くても最後にコケちゃうと、いい印象は残らないと思うんでね。最後にいい試合だったなと言えるように。中竹さんもよく仰られますけど、このチームが歴史に残るように、と。最後、このチームがちゃんとできるんだということを見せて、1人ひとりが成長したなかで、いい形で終わりたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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