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日本代表エディー・ジョーンズヘッドコーチ、「国内最終戦」を展望【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
会見に臨むジョーンズHC

ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は8月27日、翌日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれるウルグアイ代表戦の試合前日会見にフランカーのリーチ マイケルキャプテンとともに臨んだ。

4年に1度のワールドカップ(イングランド)を今年9月に控えるなか、指揮官は25日に同大会終了後の辞任を発表。28日の試合は、国内で日本代表を指揮する最後の試合となる。

以下、会見中のジョーンズHCの一問一答要旨。

「ワールドカップ前最後の日本での試合です。新聞で報道されていることを信じるのであれば、それは信用に足りません。いいパフォーマンスをするための準備万端です。観客もたくさん来てくれると聞いています。

先週から、レベルアップしています。ゲームのベーシックなところに意識をして、日本から飛び立つ前に自信をつけ、ジョージア代表戦(9月5日/グロスター)でも自信をつけ、南アフリカ代表戦(9月19日/ブライトン=ワールドカップ予選プールB初戦)に向かいたいです。

がっかりさせてしまって申し訳ありません。悪いニュースを聞きたいでしょうが、そういったものは提供できません」

――南アフリカ代表戦のメンバーを聞くつもりはありませんが…。

「答えられない」

――次の試合、いいメンバーですね。

「ワールドカップに向けて強いメンバーを選んでいく。PNC(7月からのパシフィック・ネーションズカップ)では色んな選手を混ぜて起用して、1人ひとりに平等にチャンスを与えていた。ただこれからは強いチームのコンビネーション、結合性を高めたい。フミ(スクラムハーフ田中史朗・7月に合流)もよくなってきて、皆もフミのプレーに慣れてきた。フミは昨日、髪を切りました。速く走れるように映るでしょう。実際に、素早いプレーをしてほしいと思います」

――明日のメンバーは、ワールドカップを見据えたベストメンバー?

「ワールドカップに向けてのメンバーに関しては、(公式発表の)31日まで発言できません。ただ今回は、経験値の高いメンバーが入っています。(フランカーのマイケル・)ブロードハーストも本調子。ロック陣も経験値がある。バックス陣もマレ(サウ、センター)、(センターのクレイグ・)ウイング、松島(幸太朗、ウイング)が揃っています。一番強いチーム構成と言えます」

――明日は国内最終戦。改めて、日本のファンはどんな存在だったか。

「きょうもメンバーに対し、チームミーティングで話しましたが、4年前にこのプロジェクトを始めた時は5~6000人くらいしか観客はいませんでした。しかし前回の試合(福岡・レベルファイブスタジアムでのウルグアイ代表戦・○30-8)では10000人以上も入りましたし、明日も15000人くらい来そうだと聞いています。選手と同時に、ファンのベースも育ったと感じます。スポンサー、ファン、メディアなどのサポートがあってチームが成長すると感じます。きょうも、(長い間合宿をしていた)宮崎でサポートしてくださった方々が、横断幕を掲げて送り出してくれた。2003年にオーストラリア代表の監督をしていた頃も、そうした方々に選手が感謝をして力をもらうことがあった。ファンの皆様の応援、関係者のサポートはチームを育てていると思います」

――明日のゲームに出られない故障中の選手について。

「メンバーに関しては31日まで言えません。ただ、(ウイングの)山田(章仁)は75パーセントのランができるようになり、(フランカーのアイブス)ジャスティンも劇的なペースで復活して、60パーセントのところまで来ました。(プロップの)稲垣(啓太)も、彼にどれくらいの計算能力があるかはわかりませんが、本人は93パーセントだと言っています。いい方向へ行っていて、そのままいけばセレクションに値すると思います」

――(当方質問)試合当日の午前11時、NTTコムと東京ガスの練習試合があります。故障からの復帰を目指していたナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ選手が復帰。ご覧になると言われていますが…。

「観に行きます」

――(当方質問)どういった部分を観たいのかをお伝えいただけますか。

「どこに興味があるかというより、日本のトッププレイヤーであるということだけが理由です」

――オーストラリア代表の公式ホームページで「今回はいままで以上にプレッシャーがある」と。

「いい試合をしたい、歴史を変えたいというプレッシャーです。期待が高まるほどプレッシャーも高まる。けれどもそれはいいプレッシャーです」

――4月からの宮崎合宿を振り返って。

「ワールドカップへはどのチームよりも準備が万端。それが私たちの目標でもありました。フィットネスも高く、できる限り強く、色んな戦術を持っている。あとはそれらをプレッシャーのなかで遂行できるかです。宮崎で(合宿が終わり)寂しかったですね。きょうは。選手は喜んでいるかもしれませんが」

――今朝は選手主導で練習を進めていたが。

「ゲームに近づくほど、選手に自主性や責任を持たせたいという計画があります。過去の日本代表は選手たちの自主性があまりにも欠けていた。今週はリーチがチームを引っ張り、非常にいい形で準備ができたと思います」

――日本で指揮を執るのは明日が最後。ジャパンのHCになる12年の以前は、2季、サントリーの監督も務めました。感慨や思いは。

「(笑いながら)また戻って来て日本でコーチングすることが願いなので、これが最後にならないようにしたい。(13年秋に)脳梗塞で倒れて復活した時、あと25年できると言っています。今後も可能性はある。個人的にはいい6年間を過ごしました。サントリーで2年間、ジャパンで4年間…。でも、すべてはこの先の4週間です。ワールドカップで世界中に印象付けたいのは、日本もラグビーを真剣に取り組んでいる国なのだということです。そのうえで、準々決勝に進出したいです。それを成し遂げれば、この4年間が実のあるものだったということになる。日本の企業にも大きなサポートをしてくれた。昨日、サウナに入りましたら、年配の男性が入ってきた。ラグビーに精通しているわけではなく、焼き鳥屋を経営しているようでした。そういう方と話をすると『なぜ日本のラグビーは弱いのか』と。宮崎合宿を始めてから、彼もラグビーに興味を持ち、『ワールドカップを待てない』と言っています。これからは、有言実行するだけです。選手たちは、どんなことが待ち構えているのかを感じるようになりました。ごく小さいことですが、大事なことがチームのなかで起こっています。『出たい』と強引に言う選手もいますし、『出たいけど、コンディションが整っていない』と言いに来る選手もいます。非常に成長、成熟しています。非常に素晴らしいです」

――将来、チームに戻るとしたら日本でどんな指導をしたいか。

「その頃は年を取っているかもしれないが…。メイジ(明治大学)のカントク? 奥さんが喜ぶでしょう。もしくは(リーチ主将の母校である)東海(大学)?」

――19年のワールドカップ日本大会が、東京・新国立競技場の使用不可に伴い開催が懸念されている。

「15年で活躍することが目標であり、約束でした。ですから今回の選手、スタッフはそこしか考えていません。それ以降のことはコントロール外です。現代表選手の責任は何もありません。問題を探られているのだと思いますが、チームは一丸となって15年に勝ちたいと思っているだけです。それを継続します。国民が誇りに思える活躍をします。サポートは継続してほしいと思います。その逆を行くのであれば、それはご自身の判断だと思います。メディアのサポートには感謝していますので、継続していただければと思います」

――4年間が素晴らしかった、と。その内容は? また、そうならばなぜ辞める?

「成し遂げた記録を見れば明白。テストマッチ(国同士の真剣勝負)は11連勝したこともあり、ヨーロッパで初めて勝利し(12年にヨーロッパの代表国を相手に敵地で初勝利)、イタリアやウェールズにも勝っています。その流れで、5~6名ほどの選手がスーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)で戦えるようになった。そしてワールドカップへ…。誇りを全く持っていなかった選手も、日本代表として誇りを持って戦いたいと思えるようになった。ファンの方も増え、日本ラグビーを再活性するまでになった。けれど、人生には限られた時間があります。もし、協会からのリクエストがあればもう4年することは可能だったと思います。ただ、ワラビーズ(オーストラリア代表監督)も、5年のうち1年は多かった(1999年に就任し、2003年のワールドカップで準優勝。しかし翌年に解任される)。15年が終われば、チームには新しいエネルギーが絶対必要です。日本協会は新しい適任者を見つけられるはずです。キンちゃん(ロック大野均)、(ロックのトンプソン)ルーク、ショージ(ロック伊藤鐘史)は次のワールドカップでプレーしていないかもしれない(いずれも30代半ば)。ただ、ここは自分の仕事ではなく、次の仕事を引き継ぎたい。コーチとして自分の希望で退任することは、なかなかできないことです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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