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「ひと仕事」ができたかどうか ラグビー日本代表対ウルグアイ代表戦【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
司令塔候補の立川(写真は8月15日の世界選抜戦)。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は9月から、イングランドで4年に1度のワールドカップ(W杯)に挑む。8月の国内のゲームはその準備で、チームは自分たちのスタイルを本場で貫くための必須項目を再点検している。

22日に福岡はレベルファイブスタジアムでおこなったウルグアイ代表戦でも、勝ちたいというよりいい準備にしたかった。30-8。ここ最近続いていた連敗を4で止めた直後だったが、リーチ マイケルキャプテンはこうである。

「勝ったことは喜んでいい。ただ、満足はしていない。本当の力は出していないから。もっともっといい練習をしないといけない」

遡って8月15日、東京・秩父宮ラグビー場。南半球強豪国の名手が揃う世界選抜に、密集戦であおられた。ボール保持者が密集で囲まれ、球を地面に置いたところ(倒れた選手はすぐにボールを手離さないと反則を取られる)、そいつを相手にさらわれた。さらに攻守逆転の直後、一気に失点した。20―45。

シェイプ(複層的陣形)からのテンポのある連続攻撃を命綱とするジャパンにとっては、ひとつの攻めからその次の攻めへの起点となる接点の課題は改善したいだろう。フッカー堀江翔太副将によれば、「ボールキャリー(球を持った選手)がもうひと仕事、ふた仕事しないと」とのことだ。その「ひと仕事、ふた仕事」ができるかどうかが、そのままウルグアイ代表戦の見どころとなった。

球を持った人の「ひと仕事、ふた仕事」とは何か。ロックの伊藤鐘史副将は解説する。

「(身体が地面に)ついたときにほふく前進で1、2歩前へ。グラウンドファイトを頑張る、と」

博多の夜。結論から言えば、そのプレーは数多く見られた。

前半10分、密集の脇で球をもらったリーチキャプテンが直進。タックラーとぶつかる際、ぐっと体制を沈めて前に出る。うつぶせに倒れながら、股下から楕円球を味方だけに見せる。フランカーのヘイデン・ホップグッドがその横をすり抜け、最後はツイ ヘンドリックがインゴールを割った。先制。ゴールも決まって7―0。

続く33分にはスタンドオフ立川理道だ。敵陣22メートルエリア内で左右に球を散らすなか、立川が右タッチライン際を走る。

「本当は裏(相手の背後)に蹴ろうと思ったんですけど、(後ろにいたセンターの田村)優さんからはハンズで(早めにパスが)欲しいと。コール(声の掛け合い)もばらばらになった。もう、自分で行ってやろう、と」

足元へ飛び込むタックラーを御し、前傾姿勢でゴールラインの手前でラックを作る。その左脇に「スペースがある」と察したのがフッカー堀江副将だった。止めを刺す。17―3。

小野晃征に変わって急きょ先発した立川は、「ひと仕事、ふた仕事」についてこう述懐したのだった。

「しっかり勝負をしてゲインを切れた。僕の良さ。それを出せてよかったと思う」

それでもリーチは「満足していない」と言い、周りのメンバーもそれに同調する。

大野均。国内最多の92キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を誇る37歳のロックは、「ひと仕事、ふた仕事」の効果を認めつつこんな改善点を挙げた。

「世界選抜戦の時はすぐにボールを(相手に見えるように)出し過ぎてジャッカル(ボール奪取)をされた。そこで今回はお腹の下からボールを出すようにしました。ただ、そうすると若干、球を出すテンポが遅れる。どこにジャッカルがいるかを背中で感じながら、(ボール保持者の身のこなしを)使い分けないと」

この日は落球が多かったが、スタンドオフの立川は「ボールを持って頑張って(前に出ようとするなかで)ボールを落としてしまうこともあった。イージーなミスは個人の責任の問題」と振り返っている。前半15分のペナルティーゴールによる失点は、自陣でのこの人の落球を契機に密集ができ、そこで反則の笛が鳴ったことにより生まれた。本番では南半球の雄である南アフリカ代表や欧州6強の一角たるスコットランド代表、環太平洋の強豪であるサモア代表などとぶつかる。自陣でのエラーは命取りとなろう。

何よりこの日に一定の成果を残した「ひと仕事、ふた仕事」も、ワールドカップでの強い相手との真剣勝負で実行しきれるかは未知数だ。この日だって同大会の参加チーム中もっとも世界ランクの低いウルグアイ代表から、接点で球を奪われるシーンがあった。

「きょうはそこまでのプレッシャーはなかったかもしれない。(本番に向けて)もっとトレーニングで、(「ひと仕事、ふた仕事」の質を)上げていきたいです」

ロック伊藤がこう言えば、スタンドオフ立川はこう続けるのである。

「きょうもターンオーバーが多く反省するところがある。南アフリカやサモアには、そこから簡単にトライまで持って行ける選手が多い。ターンオーバーをされた後の動き、そこに反応できているかなど、ビデオを観て反省したいです」

いま出ている課題は、芯のあるチームにおける細部の綻びではある。ただ、本番は間近に迫っている。ロック伊藤はこう締めた。

「少しでも成長していかないと、ワールドカップでは勝てない。貴重な機会を成長に繋げていく」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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