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なぜレアルは優勝に近づいているのか?ロドリゴ、ベリンガム、ヴィニシウス…左サイドの活性化とバランス。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするロドリゴ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

タイトル獲得の瞬間が、近づいている。

レアル・マドリーが、好調だ。リーガエスパニョーラ第30節で、マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウにアトレティック・クルブを迎えて勝利を収めた。2位バルセロナに勝ち点8差をつけ、首位を快走している。

■ロドリゴの復調

先のアトレティック戦では、ヴィニシウス・ジュニオールがイエロー累積による出場停止だった。その試合、2得点と気を吐いたのがロドリゴ・ゴエスだ。

ロドリゴは今季、得点力不足に悩まされていた。アトレティック戦前、直近18試合で3得点。レアル・マドリーのストライカーとしては、物足りない数字だ。

ロドリゴが“ゴール欠乏症”に陥っているのには、理由がある。

■ベリンガム・システム

マドリーは今季、システムチェンジを行った。従来の【4−3−3】から【4−4−2】に布陣を変更。新加入のジュード・ベリンガムをトップ下に嵌めるためだった。

ベリンガムは、期待に応えた。ここまで、公式戦32試合に出場して20得点10アシストをマーク。カルロ・アンチェロッティ監督の仕掛けと「ベリンガム・システム」の成功は誰の目にも明らかだった。

ベリンガム・システムにおいて、2トップのファーストチョイスはヴィニシウスとロドリゴだ。 攻撃時には、中盤ダイヤモンド型のシステムで、トップ下にベリンガム、左FWにヴィニシウス、右FWにロドリゴが入る。守備時には、中盤フラット型に変形して、ベリンガムが左MFに回る。

得点を喜ぶベリンガム
得点を喜ぶベリンガム写真:ロイター/アフロ

守備から攻撃にスイッチした際、左サイドにベリンガムとヴィニシウスがいる。さらに、その後方にトニ・クロースが構えている。自ずと、マドリーの攻撃は左に偏るのだ。

「左サイドで、僕がより良いプレーをするのは確かだと思う。このチームのスタイルは、左サイドの選手にプラスに働く。すべてがうまく行った。右サイドでも、同じように良いプレーがしたい」とはアトレティック戦後のロドリゴのコメントだ。

■ロドリゴのポジション

ロドリゴは今季、リーガ開幕節のアトレティック戦で得点を挙げて勝利に貢献した。幸先の良いスタートを切っていた。だが以降、11試合ノーゴールが続き、厳しい批判に晒された。昨年10月、ブラジル代表に招集された際には「9番のポジションでプレーするのは好きではない。だけど、マドリーでは、それをやらなければいけない」と苦しい心境を吐露していた。

マドリーはベリンガム・システムを確立させた。攻撃の中心はベリンガム、そしてヴィニシウス(公式戦28試合18得点8アシスト) である。

そのような状況で、ロドリゴにはスペースメイクのためのランニングと守備時のハードワークが求められた。

ヴィニシウス不在の試合で、ロドリゴの得点率は高い。ヴィニシウス欠場の11試合で、ロドリゴは8得点を記録している。

■メンディの存在と全体バランス

また、マドリーはフェルラン・メンディを左サイドバックに据えている。

アルフォンソ・デイビースの獲得が囁かれるなか、メンディは指揮官から厚い信頼を受けている。直近14試合中、12試合で先発。1月のスペイン・スーペルコパでアトレティコ・マドリーとバルセロナを破りタイトルを獲得して以降、 左サイドバックで再び不動の存在になった。

今季のマドリーは守備が堅い。リーガ 第30節終了時点で、20失点。これは1964−65シーズン(30試合18失点)に次いで、1987−88シーズン(30試合20失点)に並ぶ、史上有数のスタッツだ。

その守備の硬さに、メンディのディフェンス力やロドリゴのハードワークが要因として挙げられる。何より、全体バランスが良いのである。

シュートを打つロドリゴ
シュートを打つロドリゴ写真:ロイター/アフロ

「ロドリゴは違いをつくっていた。それこそ、彼がやるべき仕事だ」

「これで、ロドリゴが左サイドでプレーした方が良いと誰もが言うだろう。だが、私にとっては、ロドリゴは全ポジションで良いプレーができる選手。チャンピオンズリーグの準決勝で2ゴールした時、彼は右サイドでプレーしていた」

これはアンチェロッティ監督の言葉だ。

競り合うウォーカーとヴィニシウス
競り合うウォーカーとヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

リーガは残すところ、8試合だ。気の早いメディアはマドリーの「カウントダウン」を始めている。

一方、マドリーはチャンピオンズリーグ準々決勝でマンチェスター・シティとの対戦を控えている。

2021−22シーズン、準決勝でシティを葬った際、その直前の試合でロドリゴがドブレーテを達成していた。左サイドでも、右サイドでもーー。重要な場面で現れるロドリゴは、貴重なゴールスコアラーである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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