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ハーランドはなぜ苦しんでいるのか?シティ の“負傷者続出”トラブル…グアルディオラの試行錯誤。

森田泰史スポーツライター
競り合うヴァランとハーランド(写真:ロイター/アフロ)

ビッグマッチで結果が出なかった。批判の矛先がストライカーに向くのは当然かもしれない。

マンチェスター・シティはプレミアリーグ第29節で、アーセナルに引き分けた。その試合を受けて、シティ(勝ち点64)はリヴァプール(勝ち点67)、アーセナル(勝ち点65)に次いで3位に位置している。

アーセナル戦でノーゴールに終わったハーランド
アーセナル戦でノーゴールに終わったハーランド写真:ロイター/アフロ

スコアレスドローで終わったゲームで、アーリング・ハーランドに得点はなかった。「ハーランドのプレーは全体的に良くなかった。アーセナル戦だけではない。ゴール前では、世界最高の選手だ。だが他のプレーを見た時、彼のようなタイプの選手としては、貧相だ」と厳しく指摘してのはロイ・キーン氏である。

「そういうプレーを、ハーランドは改善しなければいけない。現状、リーグ・ツー(イングランド4部リーグ)の選手みたいだ。今後数年で、プレーは改善するだろう。彼はファンタスティックなFWだ。しかし、パフォーマンスには改善の余地がある」

■ハーランドのスタッツと負傷

今季、ハーランドの数字は悪くない。ハーランドはここまで、公式戦34試合に出場して29得点6アシストを記録している。

だが今季は負傷に悩まされている。

シュートを打つハーランド
シュートを打つハーランド写真:ロイター/アフロ

ハーランドは昨季、公式戦52試合に出場した。負傷欠場したのは5試合のみだった。

一方、今季のハーランドはすでに13試合を負傷で欠場している。

「ケガから戻ってきて、ハーランドのプレースタイルは変わってしまった」と語るのはウィリアムス・ギャラス氏だ。

「昨シーズン、ハーランドにとっては、プレミアリーグ初挑戦だった。しかし、彼は戦って、ボールをキープしていた。現在とは異なるフィジカルで、まるで動物のようだった。そのフィジカルはDFの脅威だった。ピッチ上でひたすら走り、毎回、ボールにチャレンジしていた。そういう選手は、対戦相手としては、非常に嫌なものだ」

■ウィンガーと中盤の肝

ハーランドの不調がフィジカルコンディションとリンクしているのは、吝かではない。

もうひとつ、挙げるとすれば、ウィンガーの状態だ。とりわけ、気になるのはジャック・グリーリッシュである。

グリーリッシュは今季、プレミアリーグで15試合に出場して3得点1アシスト。新加入のジェレミー・ドクの素早い適応と成長はあったものの、グリーリッシュのパフォーマンスは気掛かりだ。

ウィングの突破があるから、ハーランドはゴール前でのフィニッシュに専念できる。ここが欠けると、ストライカーは敵陣の深い位置から離れざるを得ない。

ボールをコントロールするロドリ
ボールをコントロールするロドリ写真:ロイター/アフロ

ハーランドやグリーリッシュの調子が上がらない一方、シティは大崩れしない。その要因のひとつは、ロドリ・エルナンデスの存在にある。

ロドリは今季、公式戦38試合に出場して7得点11アシストを記録している。90%以上のパス成功率を誇り、タックル成功数は50本を超える。

シティはロドリが出場した試合で、公式戦63試合、無敗を維持している。これはプレミアリーグの新たな記録となっている。

シティは今季序盤戦でケヴィン・デ・ブライネが負傷で長期離脱を余儀なくされた。その間、フィル・フォーデンが台頭するという僥倖があったのも確かだが、ロドリが中盤の底からチームを支えていた。

■負傷者トラブルと過密日程

とはいえ、ゴールを奪わなければ、勝てない。また、負傷に苦しめられているのはハーランドだけではない。

カイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズ、エデルソン・モラレス、ナタン・アケ…。複数選手が、戦線離脱を強いられている。

シティを襲うのは過密日程だ。

3月には、インターナショナルウィークがあり、各国の代表選手がそれぞれ招集を受けていた。そして、インターナショナルウィーク明け、シティは21日間で7試合を戦う日程となっている。

選手に指示を送るグアルディオラ監督
選手に指示を送るグアルディオラ監督写真:ロイター/アフロ

「我々は次の試合、アストン・ヴィラと戦い、それから(現地時間)土曜日の12時30分にクリスタル・パレスと試合をする。その後、来週の火曜日にマドリードに飛ぶ。だがレアル・マドリーには、9日間、準備の時間がある。9日間だよ!」

「フランスでは、パリ・サンジェルマンがチャンピオンズリーグ準々決勝を控えている。その期間、彼らは(CL以外に)試合がない。ポルトガルでは、チャンピオンズリーグに出場しているチームは、金曜日に試合を行うのが常だ」

「(運営側には)独自の問題があり、決断を下さなければいけないだろう。質問はしないが、答えは欲しい。どうして、いつも我々は日曜日ではなく土曜日にプレーするのだろうか? これだけ試合を重ねていて、負傷者がいる状況だ。1日の違いは、大きい」

これはジョゼップ・グアルディオラ監督の言葉だ。

タイトル獲得を目指すシティ
タイトル獲得を目指すシティ写真:ロイター/アフロ

シティは昨季、プレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグで優勝。3冠を達成した。

今季も3冠の可能性を残している。ただ、それは疲労の蓄積との戦いでもある。ペップ・シティは“見えない敵“とも戦いながら、タイトルを獲得を目指すことになる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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