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なぜ久保建英はソシエダと契約延長を行ったのか?若手選手の成長と育成…ビッグクラブ移籍の可能性。

森田泰史スポーツライター
ドリブルする久保(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

レアリスタに、朗報が届けられた。

レアル・ソシエダは現地時間12日、久保建英との契約延長を発表している。2029年夏までの契約延長で両者が合意に達した。

ソシエダと契約延長を行なった久保
ソシエダと契約延長を行なった久保写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「レアル・ソシエダとタケフサ・クボは2028−29シーズンまでの契約延長で合意しました。ジョキン・アペリバイ会長に付き添われ、彼はサインを済ませています」

「手を取り合って、成長していくこと。それが我々の願いです」

ソシエダは公式声明で契約延長をこのように伝えている。

■適応と指揮官のスタイル

久保とソシエダとの契約は2027年夏までになっていた。それを2年延長した格好だ。契約解除金は6000万ユーロ(約90億円)に設定され、年俸の見直しを含め、以前とは異なる条件で新契約が締結されている。

久保は2022年夏にレアル・マドリーからレアル・ソシエダに移籍した。ソシエダに加入後、公式戦72試合に出場。15得点8アシストを記録している。

主力に成長した久保
主力に成長した久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

久保はソシエダで主力になった。その背景には、チームの、指揮官のスタイルがあった。

イマノル・アルグアシル監督は、【4−3−3】と【4−4−2】を併用して戦ってきた。加入当初、久保を2トップの一角でFW起用したのは周囲を驚かせたが、いずれにせよ、指揮官は最初から久保を“アタッカー”として考えていた。

久保は、ソシエダに加入する前、スペインで苦しんでいた。1部残留を争うようなチームでは、守備を重視する戦い方が求められる。プレースタイルが合わず、それは選手にとって、チームにとって、デメリットになり得るところだ。

他方で、ソシエダは攻撃を重視する。前線からのプレッシングを好むイマノル監督だが、基本的にはポゼッションを拠り所にするチームだ。そのなかで、久保にはFWや右WGのポジションが与えられ、パス、ドリブル、突破、シュートでフィニッシュワークに絡むことが要求された。

求められることを理解して実践する。一見、シンプルだが、強者は基本を怠らない。中身の濃い日々が久保を、ソシエダを、高みに連れて行った。

■ソシエダの育成力

また、ソシエダは育成に定評のあるクラブだ。

ミケル・オジャルサバル、マルティン・スビメンディ、アンデル・バレネチェア、ロビン・ル・ノルマン、イゴール・スベルディア…。多くの選手が、カンテラ(下部組織)出身だ。育成年代からクラブの価値観とフィロソフィーを学んだ選手たちが、トップチームで活躍している。

加えて、近年、ソシエダは若い選手を積極的に補強している。久保、ミケル・メリーノ、カルロス・フェルナンデス、ブライス・メンデス、ウマル・サディクらは20代前半でソシエダの門戸を叩いている。

若い選手を育てる気概が、カンテラーノとヤングプレーヤーに成長を促している。

■移籍の可能性

久保はソシエダと契約延長を行なった。だが一方で、彼の移籍の可能性が完全に消滅したわけではない。先述のように、久保の契約解除金は6000万ユーロで、それは“維持”されたままだ。

「タケが残るかどうかの決断は、彼と我々ラ・レアルに託されている。レアル・マドリーは、将来的な売却において、関わってくる。しかし、タケの移籍の決断には無関係だ」

これはアペリバイ会長のコメントだ。

久保とオジャルサバル
久保とオジャルサバル写真:なかしまだいすけ/アフロ

移籍にせよ、残留にせよ、久保とソシエダ次第だ。アペリバイ会長はそのように主張する。しかしながら、6000万ユーロという契約解除金の額は、マドリーをはじめとしたビッグクラブ、またプレミアリーグのクラブからすれば、決して高額ではない。

次の夏のマーケットでは、再び久保の名がメディアで踊るかもしれない。だが、いまは、レアリスタと共にこのニュースを喜びたいところだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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