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なぜレアルは“補強ゼロ“に終わったのか?シティ、チェルシー、パリSG…ストーブリーグの実情。

森田泰史スポーツライター
競り合うクロースとエムバペ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

今冬の移籍市場では、キリアン・エムバペの移籍が噂になった。マーケットが開くたびに…、という側面はあるが、結局、動きはなかった。

この度のマーケットにおいて最終的にビッグディールはなかった。「何もなかった」というのがニュースになるくらい、ストーブリーグは冷え込んでいた。

■プレミアの補強費

昨年の冬の移籍市場、プレミアリーグでは8億4260万ユーロ(約1263億円)が補強に投じられた。

リーグ・アン(1億3240万ユーロ/約198億円)、ブンデスリーガ(6730万ユーロ/約101億円)、リーガエスパニョーラ(3550万ユーロ/約53億円)、セリエA(3240万ユーロ/約48億円)と欧州5大リーグで、プレミアの補強費は図抜けていた。4カ国のリーグ戦の総額(2億6760万ユーロ/約401億円)さえ、上回っていた。

昨年の冬にチェルシーに移籍したエンソ・フェルナンデス
昨年の冬にチェルシーに移籍したエンソ・フェルナンデス写真:ロイター/アフロ

なかでも、積極的に動いていたのはチェルシーだった。

エンソ・フェルナンデス(移籍金1億2150万ユーロ/約182億円)は、プレミアリーグ史上最高額で、ベンフィカからチェルシーに移籍した。

E・フェルナンデスだけではない。ミハイロ・ムドリク(移籍金7000万ユーロ)、ベノワ・バディアシレ(移籍金3800万ユーロ)、ノニ・マドゥエケ(移籍金3500万ユーロ)、マーロ・グスト(移籍金3000万ユーロ)、アンドリー・サントス(移籍金1250万ユーロ)、ダトロ・フォファナ(移籍金1200万ユーロ)、ジョアン・フェリックス(レンタル料1100万ユーロ)らがチェルシーに到着した。

■ストーブリーグの実情

一方、2024年冬の移籍市場はそこまで熱くならなかった。

特筆すべき移籍はラドゥー・ドラグシン(トッテナム/移籍金2500万ユーロ)、アダム・ウォートン(クリスタル・パレス/移籍金2100万ユーロ)といったところだ。イギリス『ジ・アスレチックス』によれば、当のチェルシー、アーセナル、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッドなど実に11クラブが補強を敢行せずにマーケットの最終日を迎えたという。

ティモ・ヴェルナー(トッテナム)、セルヒオ・レギロン(ブレントフォード)、カルヴァン・フィリップス(ウェスト・ハム)の移籍は実現した。だが彼らはレンタル契約の形で、新天地に向かっている。

トッテナムにレンタル移籍したヴェルナー
トッテナムにレンタル移籍したヴェルナー写真:ロイター/アフロ

プレミアリーグの今冬の補強費は1億2130万ユーロ(約181億円)だった。昨年の冬と比較して、「86%減」の数字だ。

また、欧州5大リーグでは、リーグ・アン(1億9090万ユーロ/約284億円)に次いで、プレミアのそれは2番目の数字だった。

■超えたリミットと均衡性

先日の『デロイト・フットボール・マネー・リーグ』の発表によれば、2022−23シーズン、欧州で“最も稼いだ”クラブはレアル・マドリーだった。レアル・マドリー(8億3100万ユーロ/約1245億円)、マンチェスター・シティ(8億2600万ユーロ/約1240億円) 、パリ・サンジェルマン(8億200万ユーロ/約1200億円)が収入のトップ3である。

しかしながら、この3クラブは今冬、際立った動きを見せていない。マドリー(補強費ゼロ)、パリSG(補強費4000万ユーロ)、シティ(補強費1450万ユーロ)といずれも補強費を抑えた格好だ。

補強ゼロでシーズン後半戦に臨むマドリー
補強ゼロでシーズン後半戦に臨むマドリー写真:ロイター/アフロ

「この数年のマーケットで、プレミアリーグのクラブは、限界に達しました。いくつかのクラブは、リミットを超えてしまった。だから彼らは調整を行わなければいけません」とはスペインで代理会社を営むマルセリーノ・エレナ氏の言葉だ。

「パンデミック、ブレグジット、いろいろな状況が関係しています。その結果、各クラブは方針を転換して、出費を抑える必要がありました。ここ4度のマーケットにおいては、拡張の時期が続きました。ここから先は、よりノーマルな状態に戻るでしょう。慎重さが求められるためです。プレミアは資金力を維持するでしょうが、一時、限界に達したため、バランスの取れた状態になっていくと思います」

シティでゴールを量産するハーランド
シティでゴールを量産するハーランド写真:ロイター/アフロ

この冬、多くのクラブはお金を「貯める」側に回った。

浪費・消費・投資――。この3つをいかに押さえるかはお金の大原則だ。次の夏の移籍市場で、貯めた資金をどのように使うかが、各クラブの今後を左右する。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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