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セビージャに注目せよ。「前プレ」の重視と原点回帰のシンプル・フットボール。

森田泰史スポーツライター
EL決勝に進出したセビージャ(写真:ロイター/アフロ)

スペシャルな夜であった。

セビージャはヨーロッパリーグ準決勝でユヴェントスと対戦した。欧州有数のビッグクラブを相手に、ファーストレグ(1−1)、セカンドレグ(2−1)と競り勝ち、決勝への切符を手にしている。

■相次ぐ監督交代

セビージャは今季、難しい時間を過ごしている。ユレン・ロペテギ監督、ホルヘ・サンパオリ監督、ホセ・ルイス・メンディリバル監督と3人の指揮官がシーズン中に指揮を執ることになったからだ。

だがメンディリバル監督の就任で、ようやくプラスの変化が訪れた。62歳の指揮官が就任してからのリーガエスパニョーラ8試合でセビージャは獲得可能な勝ち点24のうち19ポイントを獲得した。

チームを立て直したメンディリバル監督
チームを立て直したメンディリバル監督写真:ロイター/アフロ

セビージャはメンディリバル監督の到着で強さを取り戻した。その要因は「シンプル・フットボール」への原点回帰だ。

「GKにはシュートストップを、FWにはゴールを求める。それがメンディリバル監督の考えだ。ベーシックなこと、シンプルなプレー。監督がチームに何をもたらすかは分かっていた。それぞれの選手のスイッチを押して、僕たちの最高の状態を引き出してくれると思った」とはエイバルでも指導を受けた経験があるGKマルコ・ドミトロビッチの言葉だ。

■シンプルがベスト

シンプルなプレー。シンプルなフットボール。その体現のため、メンディリバル監督は第一にシステムチェンジを行った。

現在、セビージャは【4−2ー3ー1】を基本布陣にしている。加えて言えば、各ポジションには、タスクが単純化されるように選手が置かれている。

左WGに左利きの選手が、右WGに右利きの選手が据えられる。

もちろん、ドリブラータイプのブライン・ヒルが左WGに、ストライカータイプのルーカス・オカンポスが右WGに、といった違いはある。

だが彼らに要求されるのは、基本的に縦に突破してクロスを上げることだ。その点は変わらない。

あるいはサイドバックと連携して、センタリングを入れる。そして、中央には、CFとしてユスフ・エン・ネシリが待ち構える。空中戦に優れ、ヘディングの強い選手がボックス内でゴールを狙っている。

セビージャでプレーするエン・ネシリ
セビージャでプレーするエン・ネシリ写真:ロイター/アフロ

また、メンディリバル・セビージャで特徴的なのが、「前プレ」だ。

セビージャは守備の際、2列目の右と左の選手が一列上がる。3トップ化して、相手のビルドアップを「喰い」にかかる。

良かった時のセビージャというのは、前線からのプレッシングが機能していた。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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