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なぜバルサは“欧州の舞台”で勝てないのか?ペドリ、ガビ…若きタレントと必要な指揮官の修正力。

森田泰史スポーツライター
競り合うハフィーニャとマネ(写真:ロイター/アフロ)

国内と欧州で、異なる戦いを見せている。

リーガエスパニョーラ第24節終了時点で、首位を走っているのはバルセロナだ。2位レアル・マドリーに勝ち点9差をつけ、バルセロナが独走している。

■欧州の舞台という鬼門

一方、今季のバルセロナは欧州の舞台から早々と姿を消している。

チャンピオンズリーグでは、バイエルン・ミュンヘン、インテル、ビクトリア・プルゼニと強豪がひしめくグループで、予選敗退に追い込まれた。その後、ヨーロッパリーグに回り、プレーオフでマンチェスター・ユナイテッドと激突。イングランドの雄に屈して、ベスト16まで勝ち進めなかった。

バルセロナを撃破したユナイテッド
バルセロナを撃破したユナイテッド写真:ロイター/アフロ

「欧州はバルセロナにとって不安の舞台」

そのタイトルがスペイン『エル・パイス』紙に踊ったように、バルセロナはチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグで苦しい日々を過ごしている。

ローマ(2018年)、リヴァプール(2019年)との対戦では、ファーストレグでリードを奪いながら、セカンドレグで逆転負けを喫した。ローマ戦(セカンドレグ0−3)、リヴァプール戦(0−4)と2年連続でショッキングな結果を突きつけられ、それはのちにエルネスト・バルベルデ当時監督の解任の引き金となった。

だがドラマはそこで終わらなかった。2020年には、バイエルン・ミュンヘンに2−8と大敗。チャンピオンズリーグ創設以降、6ゴール以上を奪われて敗戦した経験のなかったバルセロナだが、バイエルンに蹂躙された。

■充実した戦力

現在のバルセロナは、決して弱いわけではない。

この夏、バルセロナは大型補強を行なった。1億5800万ユーロを投じて、7選手を獲得。ロベルト・レヴァンドフスキを筆頭に、ワールドクラスのプレーヤーが加入した。

加えて、ペドリ・ゴンサレス、アレッハンドロ・バルデ、ガビと将来有望な若手選手やカンテラーノが出てきている。

冒頭に述べた通り、バルセロナはラ・リーガで首位を走っている。コパ・デル・レイでは、ベスト4まで勝ち残っており、準決勝のファーストレグではレアル・マドリーにアウェーで先勝している。

現欧州王者のマドリーに勝利を収めているという事実から、バルセロナがビッグマッチで勝てないわけではない。だが、その戦い方に問題は潜んでいる。

ヴィニシウスをコントロール
ヴィニシウスをコントロール写真:ロイター/アフロ

「試合を支配したのはレアル・マドリーだ。バルセロナが勝利に値したとは思わない。だが、我々はチャンスをつくり、シュートまで持ち込むのに苦労した」とはコパ準決勝ファーストレグで、0−1で敗れた試合後のカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。

「我々は望んでいたゲームを行った。セカンドレグに向けて、自信を持てる内容だった。結果は良いものではなかった。しかし、我々は同じような試合をすればいいだけだ。このような高い強度でプレーできれば、必ずチャンスはつくれる。彼らがカンプ・ノウで、これほど守備的に戦ってくるとは思わない」

アンチェロッティ監督とシャビ監督
アンチェロッティ監督とシャビ監督写真:ロイター/アフロ

アンチェロッティ監督の言葉が示しているが、バルセロナはマドリーを相手に守備的な試合を演じた。

シャビ・エルナンデス監督は【4−3−3】を基本布陣とした。その一方でガビを左WG、ロナウド・アラウホを右SBに起用する采配で、守備時に【4−5−1】のブロックを形成してマドリーの攻撃を跳ね返す戦術を選んだ。

「自分たちのスタイルを裏切ってはいない」と語ったシャビ監督であるが、その試合のバルセロナのポゼッション率は35.6%だった。

シュートを打つラウタロとブロックを試みるエリック
シュートを打つラウタロとブロックを試みるエリック写真:なかしまだいすけ/アフロ

守備的なフットボール自体は悪いものではない。ただ、それが「バルサのDNA」と合致するかが重要だ。

また、シャビ監督は「修正力」がある指揮官ではない。EL敗退に追いやられたユナイテッド戦においては、ファーストレグでマーカス・ラッシュフォードにアラウホをぶつけるはずが、そこを外され、セカンドレグでは後半から右WGにアントニーを投入されて対応できなかった。

昨季、バルセロナは無冠に終わった。その彼らに、タイトルがもたらされるのはプラス材料だ。今季に関しては、ラ・リーガとコパで2冠の可能性がある。それは十分価値のある戴冠だ。

だが欧州の舞台における戦い方には、依然として課題が残されている。バルセロナが本当の意味で強豪クラブに返り咲くためには、そこは避けて通れない道であると思うのだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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