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なぜチェルシーは“461億円”の補強で勝てないのか?求められるピースとポッターに残された時間。

森田泰史スポーツライター
この冬に大型補強を敢行したチェルシー(写真:ロイター/アフロ)

大型補強は、話題を呼んだ。

今冬の移籍市場で、積極的な動きを見せたのがチェルシーだ。エンソ・フェルナンデス(移籍金1億2100万ユーロ/前所属ベンフィカ)、ミハイロ・ムドリク(移籍金7000万ユーロ/シャフタール・ドネツク)を筆頭に、高額な移籍金で次々に選手を確保。3億2950万ユーロ(約461億円)を投じて、戦力強化を図った。

■大型補強の効果

しかしながら大型補強の効果はまだ表れていない。プレミアリーグ第25節、チェルシーはアウェーでトッテナムと対戦して0−2で敗れた。チャンピオンズリーグ出場圏内に勝ち点14差と大きく引き離されている。

先のトッテナム戦だけではない。カタール・ワールドカップが終わり、各国でリーグ戦が再開。だが2023年に突入し、チェルシーにとっては苦しい日々が続いている。

チェルシーはプレミアリーグで獲得可能勝ち点27のうち、7ポイントしか得られていない。公式戦では、11試合で1勝4分け6敗と負け越している。

チェルシーは今季、プレミアリーグで25試合を戦い勝ち点31を稼いでいる。この時点においては、プレミアリーグ創設以降、1993−94シーズン(勝ち点24)、2015−16シーズン(勝ち点29)に次いでワースト3に入る数字だ。

チェルシーで指揮を執ったトゥヘル監督
チェルシーで指揮を執ったトゥヘル監督写真:ムツ・カワモリ/アフロ

チェルシーは今季途中に監督交代を行った。トーマス・トゥヘル前監督が解任され、ブライトンからグラハム・ポッター監督が招聘された。

ポッター監督は試行錯誤を繰り返してきた。【4−2−3−1】【4−3−3】【3−4−3】と複数システムを使いながら、実に33選手を起用してきた。

だが状況を好転させるのは難しかった。トゥヘル前監督(勝率43%)と比べ、ポッター監督(勝率35%)がチームを勝利に導けていないのは自明である。

戦況を見守るポッター監督
戦況を見守るポッター監督写真:ロイター/アフロ

「選手たちはチームのために戦ってくれている。より良いプレーを目指しているが、苦しんでいる。彼らをサポートするのが私の仕事だ。彼らは結果を求めている。だが我々は難しいシチュエーションに置かれている」とはポッター監督の弁だ。

「結果が素晴らしいものでなければ、チェルシーのようなクラブでは、ずっとフロント陣から支持されるどうかは分からない。現状、結果は素晴らしいものではない。私はすべての責任を受け入れる。前に進み、苦しんでいる選手たちと働き、巻き返すために全力を尽くす」

■指揮官ポストの座

1月のFAカップのマンチェスター・シティ戦(0−4)では、チェルシーのサポーターからトゥヘル前監督の復帰を望む声が挙がった。

トゥヘル監督は、今季途中にチェルシーの指揮官ポストを奪われ、現在フリーの身になっている。ただ、トゥヘル監督に関しては、パリ・サンジェルマンが復帰を図策しているといわれている。

一方、チェルシーはポッター監督と2027年夏まで契約を残している。オーナーのトッド・ベーリー氏は、違約金2000万ユーロ(約28億円)を支払い、ポッター監督をブライトンから引っ張ってきた。新しいプロジェクトの中核を担う指揮官だと目されていた。

苦しい日々が続くチェルシー
苦しい日々が続くチェルシー写真:ロイター/アフロ

「結果が重要なのは理解している。しかし、私はベーリーに、ポッターに時間を与えて欲しいと言いたい。彼がブライトンで成し遂げたことは素晴らしかった」

「ファーストシーズンというのは、常に難しいものだ。私がバルセロナを率いていた頃、2年を必要としなかったのは(リオネル・)メッシがいたからだ」

これはシティを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督の言葉だ。

シティとチェルシーの一戦
シティとチェルシーの一戦写真:ロイター/アフロ

トゥヘル監督を戻すのは簡単ではない。その一方で、高額な違約金を支払い呼んできたポッター監督を解任するのも、容易ではないだろう。とはいえ、大型補強を敢行したチェルシーが、うまくいっていないのは明らかだ。砂時計の蜂の腰から砂が落ちるように、時間は刻一刻と刻まれている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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