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カタールW杯の優勝候補は?メッシ、C・ロナウドの“最後のダンス”と若き才能の台頭を見逃すな。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするメッシ(写真:ロイター/アフロ)

世界最高の大会が、開幕した。

2022年のカタール・ワールドカップは秋冬開催となった。本来、W杯というのは欧州のシーズンオフ、夏に行われるものだ。そういう意味でも、中東の地で行われるW杯には注目が集まっている。

W杯では毎度、多くの見所がある。今大会で言えば、まずリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドのプレーだ。

メッシ(35歳)とC・ロナウド(37歳)にとって、これは最後のW杯になる可能性がある。

■メッシとC・ロナウドの最後の競争

メッシとC・ロナウドは、長くフットボール界を牽引してきた。彼らは今回で5回目のW杯を迎える。ジャンルイジ・ブッフォン、ローター・マテウス、カルバハル、ラファ・マルケスといったレジェンドに並ぶ。

この15年間で、13個のバロンドールを分け合ってきた2選手だ。バルセロナとレアル・マドリーで、幾度となくチャンピオンズリーグ制覇に貢献した。ただ、彼らはキャリアにおいて一度もジュール・リメ杯を手にしたことはない。

今シーズンの始まりは対照的だった。メッシがバカンスを短縮してパリ・サンジェルマンに合流したのに対して、C・ロナウドに関してはマンチェスター・ユナイテッドからの移籍報道が絶えなかった。このW杯の直前にも、エリック・テン・ハーグ監督とクラブを批判して波紋を呼んだ。

ポルトガル代表で主将を務めるC・ロナウド
ポルトガル代表で主将を務めるC・ロナウド写真:ロイター/アフロ

代表チームでも状況は似ている。現在のアルゼンチン代表には、「メッシのために」という空気が漂っている。“神様”ディエゴ・マラドーナと比べられてきたメッシに、最後のW杯でトロフィーを掲げさせたい、そういった雰囲気が感じられる。この数年で世代交代を行ってきた影響も大きいだろう。

一方、C・ロナウドとポルトガル代表は苦しみながらW杯最終予選を突破した。ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー)とタレントは揃っている。しかし、まとまりに欠ける部分があり、フェルナンド・サントス監督が最適解を見つけるために腐心している。

クロアチア代表で10番を着けるモドリッチ
クロアチア代表で10番を着けるモドリッチ写真:ロイター/アフロ

「ラストダンス」を踊るのはメッシとC・ロナウドだけではない。ルカ・モドリッチ(37歳)、ロベルト・レヴァンドフスキ(34歳)にとっても、最後の大会になることが濃厚だ。

■優勝候補の国

優勝候補を挙げるなら、アルゼンチンとフランスは本命だろう。

アルゼンチンは、前述の通り、メッシのためのチームになっている。これは悪い意味ではない。メッシを中心に据えるリオネル・スカローニ監督のチームビルディングは、順調に進んできた。

ハビエル・マスチェラーノ、セルヒオ・アグエロ、ゴンサロ・イグアイン、前回大会にも出場しメッシと多くの時間を過ごしてきた選手たちはもういない。ラウタロ・マルティネス(インテル)、フリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)と若い選手がメッシのパートナーになる。また、ロドリゴ・デ・パウル(アトレティコ)、ギド・ロドリゲス(ベティス)といったメガクラブに所属しているわけではないが汗かき役になれる選手がチームを支えている。

フランス代表で10番を背負うエムバペ
フランス代表で10番を背負うエムバペ写真:代表撮影/ロイター/アフロ

フランスはベンゼマ、キリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマンの共存が鍵を握るーーそれがW杯開幕前の予想だった。しかし、大会直前にベンゼマの負傷離脱が決まっている。

ロシアW杯で、ディディエ・デシャン監督は堅守速攻のスタイルを貫いて戴冠に成功した。「CB型」の4選手を最終ラインに並べ、前線ではエムバペのスピードを最大限に生かして鋭いカウンターを喰らわせた。

ベンゼマの離脱で、逆に以前の戦い方に戻せるかもしれない。戦力ダウンであるのは間違いない。しかし、反対にチームがまとまる可能性がある。

ネイマールを中心に優勝を狙うブラジル
ネイマールを中心に優勝を狙うブラジル写真:ロイター/アフロ

アルゼンチンとフランスに加え、優勝候補に挙げられるのはスペイン、ブラジル、ドイツ、イングランドあたりだろう。決勝トーナメントに入れば、これらのチームがまさに潰し合う展開になる。その観点では、グループ1位通過もしくは2位通過というのはタイトル獲得如何に大きく関わる。

■得点王争いと注目の若手

優勝はコレクティブなタイトルだ。一方、個人賞として、得点王がある。

ロシアW杯はハリー・ケイン(6得点)が受賞。ブラジルW杯はハメス・ロドリゲス(6得点)、南アフリカW杯はディエゴ・フォルラン、トーマス・ミュラー、ヴェスレイ・スナイデル、ダビド・ビジャが5得点で並び、アシスト数を含めてミュラーが受賞している。

それを考慮すれば、ボーダーラインは6得点になる。決勝まで勝ち抜けば、7試合を戦う計算。つまり、当然、上位に勝ち進んだ方が、得点王争いにおいても有利になる。そう考えると、エムバペ、メッシ、リシャルリソン(ブラジル)、ケイン(イングランド)が得点ランクの上位を争うはずだ。

得点王の可能性があるケイン
得点王の可能性があるケイン写真:ロイター/アフロ

またW杯のような舞台では、ヤングスターが誕生する瞬間が訪れる。ロシア大会のエムバペ、フランス大会のマイケル・オーウェンらは世界最高峰のトーナメントで大きなインパクトを残した。

今大会では、ペドリ(スペイン)、ガビ(スペイン)、アンス・ファティ(スペイン)、ジャマル・ムシアラ(ドイツ)、ブカヨ・サカ(イングランド)、ジュード・ベリンガム(イングランド)、モイセス・カイセド(エクアドル)、ヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル)、ロドリゴ・ゴエス(ブラジル)、エンソ・フェルナンデス(アルゼンチン)らが注目のプレーヤーだ。

スペイン代表のペドリ
スペイン代表のペドリ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

W杯はフットボールの祭典だ。

近年、チャンピオンズリーグを見ていても、番狂わせというのは起こり難くなっている。それでも、国と国のプライドをかけた戦いだ。手に汗握る熱戦が、目の前では約束されている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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