なぜバルサやユヴェントスはCL敗退に追い込まれたのか?機能不全に陥り始めたサイクル。
ビッグチームが、欧州最高峰の大会から次々に姿を消している。
今季のチャンピオンズリーグで、バルセロナやユヴェントスがグループステージで敗退に追い込まれている。バルセロナがバイエルン・ミュンヘンとインテルに競り負けた一方で、ユヴェントスはパリ・サンジェルマンとベンフィカにベスト16入りの枠を譲っている。
「アッレグリはこのチームの基盤になった選手の不在を感じているだろう。強い個性やハートが、チームには欠けている。それでも、ユヴェントスはアイデンティティを失ってはいけない。つまり、決して諦めてはいけないんだ。ベンフィカとのゲームでは、それが見られなかった」とは多くのビッグクラブで指揮を執ったファビオ・カペッロ氏の意見だ。
「これは大きな打撃だ。ユヴェントスは低いプレーリズムで試合を行なっている。勝っている試合でもね。国内のリーグ戦では、それでもいいかも知れない。ユヴェントスの選手の方が、対戦相手より優っているからだ。だが、同等以上の選手たちが相手に揃っていたら…。結果はご覧の通りだ」
■ユヴェントスのプラン
ユヴェントスは今夏、補強に1億600万ユーロ(約141億円)を投じて複数選手を獲得した。グレイソン・ブレーメル、フィリップ・コスティッチ、レアンドロ・パレーデス、ポール・ポグバ、アルカディウス・ミリク、アンヘル・ディ・マリアらがトリノに到着した。
昨季、11年ぶりに無冠に終わったユヴェントスだが、そこから再起を図った。ユヴェントスのようなビッグクラブで、トランジション(移行期)のシーズンは許されない。しかし、結果がついてこなかった。
パリ・サンジェルマン戦では、キリアン・エムバペをストップできなかった。それだけではない。ベンフィカ戦では、3バックシステムで生まれるスペースを自由に使われ、連動と連携で崩してくるチームを前に大量失点で敗戦した。
「敗退を残念に思う。我々は失望している。3ゴールをプレゼントしてしまった」とマッシミリアーノ・アッレグリ監督は肩を落とした。「いま、我々がすべきことはセリエAとヨーロッパリーグに集中することだ」
■バルセロナの大型補強
一方、バルセロナはこの夏に1億5300万ユーロ(約214億円)を補強に費やして、多くの選手を確保した。ロベルト・レヴァンドフスキ、フランク・ケシエ、アンドレアス・クリステンセン、マルコス・アロンソ、エクトル・ベジェリン、ジュール・クンデ、ハフィーニャが門を叩いた。
バルセロナは補強に向けて、「4つのレバー」を動かした。資産を「換金」する形で、戦力を整えた。
他方で、バルセロナはフェラン・ジュグラ、ニコ・ゴンサレス、エズ・アブデ、リキ・プッチ、オスカル・ミンゲサらを放出している。将来有望なカンテラーノが、相次いで移籍した。
ニコやアブデはレンタル移籍だがバルセロナでの将来は定かではない。そして、チャンピオンズリーグのベスト16進出を決めたクラブ・ブルージュでは、ジュグラが爆発の時を迎えている。
■欧州スーパーリーグ構想
バルセロナとユヴェントスは共に欧州スーパーリーグ構想に賛成しているクラブだ。現在、この構想を前進させようとしているのは、実質的にレアル・マドリー、バルセロナ、ユヴェントスの3クラブである。
バルセロナは2021−22シーズン、9800万ユーロ(約139億円)の黒字だった。だがこれは前述の4つのレバーを動かした結果だ。エドゥアルド・ロメウ経営部門副会長によれば、レバーがなければ「2億1000万ユーロ(約294億円)の損失だった」という。
対して、ユヴェントスは、21−22シーズン、2億5430万ユーロ(約356億円)の損失だった。また、2018年から2020年にかけて移籍に関して違法行為があったとされ、イタリアの検察当局が調査している。フロント陣の経営にメスが入れられている。
バルセロナとユヴェントスの2クラブが資金繰りに苦労しているのは明らかだ。
補強を行い、結果を出して、収入を得る。このビジネスのサイクルが、機能不全に陥り始めている。
そこに気付かなければ、ビッグクラブとはいえ、安泰ではない。例えば、バルセロナの場合、世界最高峰の育成機関がある。カンテラに賭ける、という方針転換ーーつまり原点回帰であるーーをしなければ、悪循環から抜け出すのは難しい。
欧州のコンペティションのレベルは全体的に上がっているように見える。中長期スパンでプロジェクトを進めない限り、その流れに置いていかれる可能性があるということを、強豪クラブのCL敗退は示唆している。