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なぜバルサはCLで勝てないのか?メッシ、ネイマール、スアレスの記憶とレヴァンドフスキの不振。

森田泰史スポーツライター
競り合うケシエとザビッツァー(写真:ロイター/アフロ)

物事には、光と影がある。

今夏、大型補強を敢行したバルセロナだが、スペイン国内と欧州の舞台では全く異なる戦いを見せている。リーガエスパニョーラで2位に位置している一方で、チャンピオンズリーグではグループ敗退に追い込まれた。

ドリブルするバルデ
ドリブルするバルデ写真:ロイター/アフロ

直近の5年間において、バルセロナは欧州の舞台で結果を残せずにいる。2018−19シーズン(ベスト4)、2019−20シーズン(ベスト8)、20−21シーズン(ベスト16)。21−22シーズン(GL敗退)、22−23シーズン(GL敗退)という成績だ。

■「MSN」の破壊力

バルセロナが最後にビッグイヤーを獲得したのは2014−15シーズンである。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップが欧州を席巻していた。

「MSN」と称された3選手は抜群のコンビネーションで相手守備陣を翻弄して、おもしろいようにゴールを陥れていた。

ネイマール、メッシ、スアレス
ネイマール、メッシ、スアレス写真:なかしまだいすけ/アフロ

だが栄光の日々は続かなかった。2017年夏、ネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍。契約解除金2億2200万ユーロ(約308億円)という「置き土産」を残して、ネイマールが花の都へと向かった。「MSN」が解体され、バルセロナには新たなチームビルディングが求められた。

エルネスト・バルベルデ、キケ・セティエン、ロナルド・クーマン、シャビ...。その間、複数の指揮官がチームを率いた。しかしながら立て直しは難しかった。

補強も迷走した。ネイマールの代役として、ウスマン・デンベレ、フィリップ・コウチーニョ、アントワーヌ・グリーズマンを次々に獲得した。だが、現在残っているのはデンベレのみだ。

■メッシの次の時代

昨年夏には、メッシが契約満了に伴い退団した。サラリーキャップの課題を残していたバルセロナに、メッシを抱え続けることはできず、メッシは奇しくもネイマールと同様にパリSG移籍を果たした。

メッシが去り、バルセロナは苦しんだ。クーマン前監督が解任され、シャビ監督が招聘された。テンポラーダ・エン・ブランコ(無冠のシーズン)を終えて、仕切り直されるはずだった。

バルセロナはメッシの代わりとなるゴールゲッターを必要としていた。移籍金4500万ユーロ(約63億円)で、到着したのはロベルト・レヴァンドフスキだった。

バルセロナに移籍したレヴァンドフスキ
バルセロナに移籍したレヴァンドフスキ写真:なかしまだいすけ/アフロ

レヴァンドフスキはバルセロナ加入以降、ゴールを量産した。公式戦10試合で12得点。ワールドクラスのストライカーのフィット感は凄まじく、ラ・リーガで“レヴィ”を止められる選手は皆無に等しかった。

しかし、魔は潜んでいた。チャンピオンズリーグでは、ビクトリア・プルゼニ戦で3得点をマークしたが、バイエルン・ミュンヘンとインテルとの直接対決では4試合中3試合でノーゴールに終わっている。

ボールを追うレヴァンドフスキ
ボールを追うレヴァンドフスキ写真:なかしまだいすけ/アフロ

だがこれはレヴァンドフスキだけの問題ではない。チームとしての戦い方に焦点が当てられなければいけない。

グループステージ第3節インテル戦で、レヴァンドフスキのプレー関与回数は30回だった。それはGKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲン(27回)とさほど変わらない数字である。つまり、CFの選手がボールに触らせてもらえなかったのだ。

ミラン・シュクリニアル、ステファン・デ・フライ、アレッサンドロ・バストーニとインテルの有能なCBにケアされていたのは確かだ。しかしながら、そもそもボールが入らなければ、レヴァンドフスキといえど仕事はできない。

■メッシがいた頃の形

メッシがいた頃、バルセロナは彼に依存していると言われていた。ビルドアップに参加して、ゲームメイクを行い、フィニッシュする。そういった役割を全てメッシがこなしていたからである。

だが「レジスタ化」するメッシを、生かすプレースタイルがあの頃のバルセロナでは確立されていた。中盤に引いてくるメッシに、セルヒオ・ブスケッツからすかさず縦パスが入る。ジョルディ・アルバが左サイドを駆け上がり、メッシとの「特大ワン・ツー」からゴールが生まれる。

現在のバルセロナはレヴァンドフスキに依存している。それ自体が悪いというわけではない。だが、レヴァンドフスキが活躍できるように、攻撃の形を確(しか)と構築する必要がある。そこが不足しており、その点がビッグマッチやチャンピオンズリーグで露呈している。

この夏、バルセロナは「4つのレバー」を動かして、大型補強を実現させた。だがそのレバーは、欧州の舞台ではまだ機能していない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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