Yahoo!ニュース

なぜバルサはクンデの獲得を決めたのか?レヴァンドフスキ加入の効果と残された選手登録の問題。

森田泰史スポーツライター
競り合うペドリとクンデ(写真:ロイター/アフロ)

獲得レースを制したのは、バルセロナだった。

バルセロナは今夏、ジュール・クンデ(セビージャ)の獲得を検討していた。すでに複数のアタッカーを確保していたバルセロナだが、シャビ・エルナンデス監督は最終ラインの補強を必要としていた。

クンデに対しては、チェルシーが強い関心を示していた。移籍金固定額5000万ユーロ(約70億円)+ボーナス500万ユーロ(約7億円)で獲得を目指していたが、セビージャ側が移籍金6000万ユーロ(約84億円)以上を要求して、交渉が難航していた。

バルセロナに移籍したクンデ
バルセロナに移籍したクンデ写真:ロイター/アフロ

そのような状況で、バルセロナがギアを入れた。移籍金固定額5000万ユーロ(約70億円)+ボーナス1000万ユーロ(約14億円)でセビージャと合意。フランス代表のセンターバックがバルセロナに到着した。

■積極的な補強

この夏、バルセロナは積極的に補強を行なっている。ロベルト・レヴァンドフスキ、ラフィーニャ、フランク・ケシエ、パブロ・トーレ、アンドレアス・クリステンセンと新戦力が次々に到着した。

とりわけ、大きかったのはレヴァンドフスキとラフィーニャの加入だ。バルセロナは移籍金固定額4500万ユーロ(約63億円)+ボーナス500万ユーロ(約7億円)でレヴァンドフスキを、移籍金5800万ユーロ(約81億円)+900万ユーロ(約12億円)でラフィーニャを獲得している。

シャビ監督が彼らに求めているのは「得点力」だ。

レヴァンドフスキはバイエルンで、公式戦707試合に出場して526得点143アシストを記録している。ラフィーニャは先のクラシコでゴラッソを沈め、クオリティを見せつけた。

ドリブルするレヴァンドフスキ
ドリブルするレヴァンドフスキ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

「補強はチームを向上させるために行われている。その中で、競争というのは出てくるよ。でも、僕はベテランの選手や新加入の選手が助言を与えてくれて、嬉しく思っている」と語るのはトップチームに定着したガビだ。

「第一に、僕自身が、このチームに希望を抱いている。もちろん、ファンにも同じように感じて欲しい。良い補強をしたし、彼らはすでに良いプレーを見せている。これを続けていきたい」

■バルセロナが抱える問題

だが、バルセロナに問題がないわけではない。選手登録のテーマだ。

昨季、冬の段階で、ラ・リーガが発表したサラリーキャップ額で、バルセロナのそれはマイナス1億4400万ユーロだった。1部の20クラブで、唯一のマイナスだった。

バルセロナはこの夏にテレビ放映権の一部売却を決めている。10%を25年間譲渡することで、アメリカの企業『シックスス・ストリート』と合意。代わりに2億700万ユーロを得ることになった。

その後、バルセロナは、さらに15%を25年間明け渡すことで『シックスス・ストリート』と合意にこぎ着けた。そちらは収益の数字が公表されていないが、4億ユーロ前後が懐に入るとみられている。それだけではない。『バルサ・スタディオ』の24.5%を売却を決断し、それと引き換えにソシオス・コムから1億ユーロの資金を受け取る。

フェランに指示を送るシャビ監督
フェランに指示を送るシャビ監督写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ここまですれば、選手登録は可能になるはずだ。

ただ、バルセロナはセサル・アスピリクエタ(チェルシー)、マルコス・アロンソ(チェルシー)といった選手を依然として狙っている。

なのでバルセロナは「選手の放出オペレーション」を実行する可能性がある。フレンキー・デ・ヨング、メンフィス・デパイといった選手は、売却されるかもしれない。特に、デ・ヨングについては、マンチェスター・ユナイテッドからの興味が伝えられている。

「デ・ヨングはバルセロナの選手だ。いくつかオファーを受け取ったが、現時点で我々はそれを受け入れていない」というのがジョアン・ラポルタ会長の弁である。

「我々はデ・ヨングと話す必要がある。いくつかの側面で、解決しなければいけないことがある。彼の希望を聞かないといけない」

デ・ヨングは、バルセロナで高年俸を受け取っている選手だ。その選手を放出すれば、選手とコーチングスタッフの総年俸額というのを下げられる。加えて、高額な移籍金が発生すれば、そこでまたキャッシュを得ることができる。

テレビ放映権の一部売却にしても、権利を売り、キャッシュを得るという、将来を見据えたときにはリスクを伴う決断だ。いま、大型補強だけに目を奪われていては、本質を見失う。バルセロナが再び常勝のクラブになるには、本当の問題を解決しなければいけない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事