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なぜバルサはラフィーニャを狙うのか?ネイマールの“代役探し”の失敗とデンベレの契約延長問題の結末。

森田泰史スポーツライター
ネイマールとラフィーニャ(写真:ロイター/アフロ)

決定的な仕事ができる選手が、必要なのかもしれない。

夏の移籍市場が開幕しようとしている。この夏、積極的な補強に動く可能性が取り沙汰されているのが、バルセロナだ。

得点を喜ぶブラジル代表の選手たち
得点を喜ぶブラジル代表の選手たち写真:ロイター/アフロ

そのバルセロナが、強い関心を抱いている選手の一人が、ラフィーニャ(リーズ/ブラジル代表)である。

「僕の将来はリーズとデコに委ねられている。代表、自分のプレー、その後のバケーションについて考えている。リーズとの契約を残していて、あとはそれをマネジメントする人たちが決めてくれる」とはラフィーニャのコメントだ。

「ワールドカップまで、半年を切っている。自分のクラブで、アクティブな状態でなければいけない。それが決断に大きく影響する。でも、自分のポテンシャルを信じている。残留したとしても、移籍したとしても、ベストを尽くして僕の居場所を確保する。ワールドカップを良いコンディションで迎えられるようにね」

■デンベレの契約延長問題

バルセロナは2021−22シーズン、ウスマン・デンベレの契約延長問題に揺れていた。

デンベレは今季終了時までの契約をバルセロナと結んでいた。バルセロナから契約延長のオファーが出されていたが、デンベレまたムサ・シソコ代理人が首を縦に振らず、契約満了日が近づいている。

ラージョ対バルセロナの一戦でボールを抱えるデンベレ
ラージョ対バルセロナの一戦でボールを抱えるデンベレ写真:なかしまだいすけ/アフロ

そこで、バルセロナはラフィーニャに白羽の矢を立てた。右ウィングの補強の必要性が生じたからだ。

ラフィーニャは、21−22シーズン、リーズでプレミアリーグの残留争いに身を投じていた。降格が決定した場合、彼の契約解除金は2500万ユーロ(約35億円)になるとされていた。バルセロナとしては、ここを突きたかったのが本音だろう。

だがリーズは残留を決めた。ラフィーニャとリーズの現行契約は2024年夏まで。ラフィーニャの代理人であるデコ氏は、かつてバルセロナでもプレーした。その関係性は良好であるが、クラブ間のタフな交渉が待っている。

■財政とネイマールの代役

そもそも、現在のバルセロナには、お金がない。

先にラ・リーガが発表したところによれば、20−21シーズン、全体で8億9200万ユーロ(約1248億円)の損失があった。そのなかで、バルセロナの損失額は4億8100万ユーロ(約673億円)。つまり、全体のうちの56%がバルセロナのものだった。

この数日、ラ・リーガのハビエル・テバス会長が、バルセロナと舌戦を繰り広げている。テバス会長には、言葉が過ぎるところがある。しかしながらバルセロナの現実は、彼の指摘と遠い場所に位置しない。

バルセロナでプレーしたネイマール
バルセロナでプレーしたネイマール写真:なかしまだいすけ/アフロ

契約延長問題を抱えたデンベレだが、元々、彼はネイマールの代役候補としてバルセロナが獲得したプレーヤーだった。

ネイマールは2017年夏にバルセロナからパリ・サンジェルマンに移籍。契約解除金2億2200万ユーロ(約310億円)を置き土産に、花の都に去っていった。

その後、バルセロナはデンベレ(移籍金1億500万ユーロ/約147億円)、フィリペ・コウチーニョ(移籍金1億2000万ユーロ/約168億円)、アントワーヌ・グリーズマン(契約解除金1億2000万ユーロ)を獲得した。

コウチーニョは移籍金2000万ユーロ(約28億円)で、アストン・ヴィラに移籍した。現在、アトレティコにレンタル中のグリーズマンは、条件が満たされたら、4000万ユーロ(約56億円)でアトレティコに買い取られる運びだ。デンベレは、このままいくと、移籍金ゼロで他クラブに移籍する。

3億4500万ユーロ(約483億円/ボーナス抜き)で獲得した3選手を、6000万ユーロ(約84億円)で売却する。ネイマールの代役を見つけられなかったのは明らかで、なおかつビジネス的にもバルセロナは失敗した。

クラシコでのコウチーニョ
クラシコでのコウチーニョ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「選手たちはお金で動くようになっている。マーケットが壊れてしまう。国家クラブの効果だ。欧州連合の考えとは反する。ヨーロッパのフットボールの維持性が揺らいでしまう」とはキリアン・エムバペのパリ・サンジェルマンとの契約延長後のジョアン・ラポルタ会長の言葉だ。

「そして、バルサとしての解釈がある。直接的なライバル(レアル・マドリー)が、補強を行わなかった。我々の競争という意味では、良いかもしれないが、フットボールを維持するという観点では...。だが我々はライバルをあまり意識するべきではないだろう。自分たちが競争的なチームを作るのに集中しなければいけない。そういう時、結果は出るものだ」

「違法行為がないように願っている。国家クラブの存在でマーケットが壊れつつある。マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン、そういったクラブだ。それ以外にも、やってくるかもしれない。我々のようなソシオのクラブには、非常に難しい状況になっている」

昨年夏にチームを離れたメッシとグリーズマン
昨年夏にチームを離れたメッシとグリーズマン 写真:なかしまだいすけ/アフロ

他ならぬバルセロナが、国家クラブに“破壊”されてしまった。ネイマールの移籍は、それほどの衝撃があった。

バルセロナが現在アタッカーを必要としているのは確かだろう。だが、そのためには、財政管理という課題をクリアしなければいけない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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