なぜレアルは優勝できたのか?アンチェロッティの管理術とセカンド・ユニットの躍動。
待ちに待ったタイトル獲得の瞬間だった。
レアル・マドリーはリーガエスパニョーラ第34節でエスパニョールに4−0で勝利した。今季、首位を独走してきたマドリーが35回目のリーガ制覇を成し遂げている。
■指揮官の復帰
マドリーは今夏、監督交代を行った。ジネディーヌ・ジダン前監督が退任して、カルロ・アンチェロッティ監督が就任。2013年から2015年までマドリーを率いたイタリア人指揮官が、復帰する形で指揮官ポストに就いた。
アンチェロッティ監督にとって、リーガ制覇は大きな勲章になった。ミラン(セリエA)、チェルシー(プレミアリーグ)、パリ・サンジェルマン(リーグ・アン)、バイエルン・ミュンヘン(ブンデスリーガ)と各クラブでリーグ戦優勝を果たしてきた。マドリーでもそれを達成して、史上初の5大リーグ優勝経験監督になっている。
だがアンチェロッティ監督は最後までまったく油断していなかった。
「チャンピオンズリーグの決勝で、3−0で勝っているチームが、どうやったら敗れるんだ? 私はそれを経験している。二度と起きないように願っているよ」とはシーズン終盤のアンチェロッティ監督のコメントだ。
「何も変わらない。アドバンテージはある。それは素晴らしい。だが次のゲームに良い状態で臨まなければいけない」
■セカンドユニット
また、今季のマドリーはドブレテ(2冠)の可能性を残している。マドリーが最後にドブレテを達成したのは2016−17シーズンだ。第一次ジダン政権で、チャンピオンズリーグとリーガで優勝を飾った。それは59年ぶりの出来事だった。
あの時のマドリーと今季のマドリーで、類似しているところがある。それはエキーポ・ベー、つまりBチームの強さだ。
16−17シーズン、マドリーは「BBC」が攻撃の中心だった。ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの3トップである。この選手たちを組み込んでの【4−3−3】と、いずれかを外してイスコを据えた【4−4−2】の2つのシステムを駆使しながら、ジダンは戦っていた。
それだけではない。アルバロ・モラタ、ハメス・ロドリゲス、マルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケスと「セカンド・ユニット」の選手たちが躍動した。彼らが途中出場あるいはローテーションで起用された試合で活躍し、マドリーは着実に勝ち点を積み重ね続けた。
現在のマドリーには、フェデリコ・バルベルデ、ロドリゴ・ゴエス、エドゥアルド・カマヴィンガ、ダニ・セバージョスといった選手がいる。
本来であれば、多くのチームでレギュラーを張れる選手たちだ。だがマドリーではバルベルデ(リーガ先発17試合)、ロドリゴ(13試合)、カマヴィンガ(11試合)、セバージョス(2試合)という先発試合出場数に留まっている。
「セバージョスはもっと試合に出てもおかしくない」とアンチェロッティ監督が語っていたように、彼らを控え中の控え選手と形容するのは適していないだろう。だが重要なのは彼らを“スイッチの入った状態”に維持しておくことで、アンチェロッティ監督の管理術によってそれが可能になっていると言える。
一方、今季のマドリーは高齢化が指摘されてきた。エースのベンゼマ(34歳)、中盤のカゼミーロ(30歳)、トニ・クロース(32歳)、ルカ・モドリッチ(36歳)はみな30歳を超えている。
ただ、そこにも策が施されていた。この夏、ジダンの退任に伴い、フィジカルトレーナーのグレゴリオ・デュポンがクラブを去った。そこで、アントニオ・ピントゥスが入閣した。チャンピオンズリーグ連覇に大きく貢献した人物だ。
シーズン終盤、フィジカルコンディションが保たれ、後ろにはエキーポ・ベーが控えている。ドブレテは簡単ではない。しかし、レアル・マドリーならーーマンチェスター・シティとのセカンドレグが、迫っている。