なぜペドリはバルサで”最上級の選手”なのか?メッシ、スアレス、ネイマールの記憶と黄金の中盤。
忍耐の日々が、続いていた。
リーガエスパニョーラ第30節、バルセロナは本拠地カンプ・ノウにセビージャを迎えた。優勝の可能性を残すために落とせない一戦を、ペドリ・ゴンサレスの決勝点により勝利で飾っている。
「私に驚きはない。彼は最上級の選手だと言ったはずだ。我々は時間とスペースをコントロールしてプレーする。そういう意味で、ペドリは完璧な選手だ。トレーニングを見ていればわかる。彼のターン、左右両足を使えるところ…。比較し得る選手は存在しない」とはシャビ・エルナンデス監督の弁だ。
「私はポジティブな性格だ。我々の調子は良く、ソリッドなチームができてきている。コレクティブな仕事、犠牲心、努力、そういったものを信じている。全員が走り、ハードワークする。それをベースに、結果は付いてくるはずだ。(ユレン・)ロペテギは素晴らしい監督で、セビージャの守備力はリーガでも屈指だ。勝ち点6が懸かった試合を制して、我々は2位に浮上したんだ」
■若い才能の発掘
ペドリは2020年夏にラス・パルマスからバルセロナに移籍した。若くして移籍を果たしたが、彼はバルセロナのカンテラーノではない。
バルセロナはペドリの獲得に際して移籍金固定額500万ユーロ(約6億円)を支払っている。彼を発掘したのは、ラモン・プラネス当時SD(スポーツディレクター)だ。2019年10月のU−17ワールドカップに出場して、一部では彼の評価は高まっていた。しかしながら、ビッグクラブで即戦力になると想像していた者は少なかった。
バルセロナは復調した。その背景に、シャビ・エルナンデス監督の就任と冬の補強の成果があったのは間違いない。その一方で、ペドリが負傷から復帰したのも大きかった。ペドリが1月に戦列に戻って以降、リーガでの戦績は9試合8勝1分けである。
ペドリは、そのプレースタイルから、度々アンドレス・イニエスタと比較される。ただ、もう少し深掘りすると、バルセロナの中盤の決定的な存在が浮かび上がってくる。ペップ・グアルディオラ、セルヒオ・ブスケッツ、シャビ・エルナンデスである。
グアルディオラはジャンプ力やスプリント力がなく、肉弾戦に向かない選手でアンカーを務めるのは無理だと言われていた。シャビは小柄で、アスリート能力の高い選手に囲まれては“ディーゼル車”のような選手だった。ブスケッツは線が細く、グアルディオラ監督の就任がなければヤヤ・トゥーレからポジションを奪えたかは分からなかった。
バルセロナでは通用しない。彼らは幾度となくそういった類の批判を受けた。だがグアルディオラをアンカーに据えたチームはクラブに初のチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)優勝をもたらし、シャビ、イニエスタ、ブスケッツはバルセロナの黄金期で盤石の中盤を築いた。
■中盤のタレントと新たな時代
それでも、ペドリとイニエスタと比べるなら、イニエスタはバルセロナとスペイン代表で決定的なゴールを決めてきた。得点数が多い選手ではない。しかしながら、重要な場面では、必ずイニエスタが現れた。
ペドリのセビージャ戦のゴールは、ヨーロッパリーグのガラタサライ戦のゴールに似ていた。「相手選手の足が視界に入ったら、常にキックフェイントをするようにしている。シュートを打った瞬間、ゴールになると思った」とはペドリの言葉だ。
「僕はリーダーじゃない。全員が、リーダーだ。僕たちは一つのチームなんだ。いま、物事はうまくいっている。僕は移籍した初日から素晴らしい扱いを受けてきた。ファンに愛され、求められていると感じているよ。彼らは世界最高のサポーターだ」
ペドリだけではない。ガビ、ニコ・ゴンサレス、フレンキー・デ・ヨング…。現在のバルセロナには、中盤に多くのタレントが揃っている。
リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」はバルセロニスタに歓喜を届けた。2014−15シーズンには、トリプレテ(3冠)を達成した。
だが、バルセロナはやはり中盤を重視するチームであるべきだ。ペドリという才能の爆発があり、その影響で組織に推進力が与えられている。復権の日は、確実に近づいてきていると言えるかも知れない。