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なぜレアルはパリSGを撃破できたのか?ベンゼマの”爆発”とベルナベウの魔法の夜。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするベンゼマ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

奇跡のような夜だった。

現地時間9日にチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦セカンドレグが行われ、レアル・マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウにパリ・サンジェルマンを迎えた。ファーストレグを0−1で落としていたマドリーだが、セカンドレグを3−1で制してベスト8進出を決めている。

競り合うエムバペとミリトン
競り合うエムバペとミリトン写真:なかしまだいすけ/アフロ

「我々は苦しんだ。しかし、耐え抜いた。ボールを回収するところで、問題を抱えていた。だがベンゼマのプレスから同点に追いついて、ベルナベウの魔法があらわれた。1−1になってからは、ピッチに存在したのは1チームだけだった」とは試合後のカルロ・アンチェロッティ監督の言葉である。

「偉大な歴史があるクラブのスタジアムの魔法だ。私は、選手として、監督として、チャンピオンズリーグの多くの試合を経験した。しかしながら、こういった試合というのは、数少なかった。忘れられない夜になるといいね。それは、我々が今大会で良いプレーをしている証だ」

■ベンゼマの爆発

ビッグマッチで、活躍したのはベンゼマだった。大一番でハットトリックを記録して、チームの勝利に貢献した。

ベンゼマは2009年夏にリヨンからマドリーに移籍。第二次フロレンティーノ・ペレス政権で、カカー、クリスティアーノ・ロナウド、シャビ・アロンソらと共に、新たな銀河系軍団を形成するために選ばれた一人だった。

2013年夏には、ガレス・ベイルが加入した。ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドの3トップは「BBC」と称され、マドリーを象徴する存在になった。ただ、その中で、得点を奪うのはC・ロナウドの役割だった。ベンゼマに与えられたタスクは、C・ロナウドのスペースをつくるためにフリーランニングを行い、前線で起点になり、時には守備をしてエースをサポートするというものだった。

ハットトリックのベンゼマ
ハットトリックのベンゼマ写真:ロイター/アフロ

2018年夏にC・ロナウドがユヴェントスに移籍すると、決定力不足が懸念された。ハリー・ケイン(トッテナム)、ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン)…。複数の名前が、補強候補に挙がっていた。

だがマドリーのエースになったのはベンゼマだった。2018−19シーズン(公式戦30得点)、19−20シーズン(27得点)、20−21シーズン(30得点)とゴールを積み重ねた。

先のパリSG戦で、ベンゼマはマドリーでの通算得点数を309得点とした。アルフレド・ディ・ステファノ(308得点)を抜いて、ラウール・ゴンサレス(323得点)、C・ロナウド(451得点)を見据えている。

■バロンドーラーの誇り

パリSG戦で、もう一人、活躍した選手がいる。ルカ・モドリッチだ。

モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロースの3選手は、盤石の中盤として近年のマドリーを支えてきた。だがパリSG戦ではカゼミーロが出場停止で、クロースも負傷明けでコンディションが万全ではなかった。

そういった状況で、試合をコントロールしたのがモドリッチだった。

トータルスコアにおける同点弾となったシーンでは、ネイマールのパスをインターセプトして、中盤をドリブルで駆け上がった。一旦クリアされたボールを自ら拾い、相手DFの股を抜くスルーパスを通してベンゼマのゴールをお膳立てした。あのワンプレーで、マドリーのベスト8進出が大きく近づいた。

試合をコントロールしたモドリッチ
試合をコントロールしたモドリッチ写真:なかしまだいすけ/アフロ

2018年夏、クロアチア代表として臨んだロシア・ワールドカップを準優勝で終え、モドリッチにインテルからオファーが届いた。だがペレス会長の意向で、モドリッチはマドリーに残留した。そして、その年にバロンドール受賞を果たした。

「バロンドーラーならではのプレー」(スペイン『マルカ』)と称されたように、マルコ・ヴェッラッティ、レアンドロ・パレーデス、ダニーロといった選手と対峙した中盤を、最後はモドリッチが支配していた。

ベルナベウの横断幕
ベルナベウの横断幕写真:ロイター/アフロ

「我々はヨーロッパの王者だ」

パリSG戦の開始前、サンティアゴ・ベルナベウに横断幕が掲げられた。その幕に、記されていたメッセージだ。およそ6万2000人の観客が、選手たちを後押しした。

マドリーのチャンピオンズリーグ優勝回数は13回を誇る。「アシー、アシー、アシー・ガナ・マドリー!(マドリーはこうやって勝つ!)」の大合唱と共に、レアル・マドリーの勝利のDNAが示されている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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