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なぜバルサはCL敗退という“失態”を犯したのか?シャビの就任後に打ち砕かれた希望。

森田泰史スポーツライター
CL敗退のバルサ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

その差は、明らかだった。

チャンピオンズリーグ・グループステージ最終節で、バルセロナは敵地でバイエルン・ミュンヘンと対戦した。グループ首位通過を決めていたバイエルンが3−0で勝利を収め、バルセロナのグループ敗退が決定している。

バイエルンがバルサに勝利
バイエルンがバルサに勝利写真:ロイター/アフロ

「僕たちが望んでいた結果ではなかった。グループ突破を決められなかった。難しい状況だ。こうなってしまったのには、多くの要因がある」と語ったのはセルヒオ・ブスケッツだ。

「クラブはデリケートな状況にあった。すべてがうまくやれているわけではない。ピッチ内で選手にかけているものもある。チェルシーや、バイエルンでさえ、こういう難しい状況を経験したことがあるだろう。うまくやれている時、バルサは偉大なクラブだ。これは後退かもしれない。だけど、前に進むための後退だ」

■決定力不足

今季のバルセロナの得点数(25得点)は、ロベルト・レヴァンドフスキの得点数(27得点)より少ない。アンス・ファティの負傷離脱が響いているのは否めない。そして、リオネル・メッシが残した穴はあまりに巨大であった。

シャビ・エルナンデス監督の就任で、変化は訪れた。【4−3−3】と【3−4−3】の可変のシステムで、左側で攻撃をつくる。ただ、ガビ、ジョルディ・アルバ、メンフィス・デパイといった選手たちで「創造」した後、中央でフィニッシュするプレーヤーがいなかった。

戦況を見つめるシャビ監督
戦況を見つめるシャビ監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

課題の一つであった決定力不足は解消できなかった。そんなバルセロナが最後にCLでグループ敗退の憂き目に遭ったのは、2000−2001シーズンである。

そのシーズンの開幕前、バルセロナはルイス・フィーゴを放出している。移籍金6100万ユーロ(約79億円)でレアル・マドリーへの「禁断の移籍」が実現した。

フィーゴが去ったバルセロナで、エースとして期待されたのがリバウドだ。実際、リバウドはその名に恥じない活躍を見せた。全公式戦で36得点を挙げ、リーガエスパニョーラでは23得点をマークしてピチチ(得点王)に輝いた。

だがリバウドの力だけでは足りなかった。CLではミランとリーズに競り負けて決勝トーナメントに進出できず。コパ・デル・レイで準決勝敗退に終わり、リーガでは4位フィニッシュが精一杯だった。シーズン終了を待たずしてロレンソ・セラ・フェレール監督が解任され、カルレス・レシャックが暫定的に指揮を執った。

悔しさを滲ませるテア・シュテーゲン
悔しさを滲ませるテア・シュテーゲン写真:ロイター/アフロ

なお、その時、主軸に据えられ始めていたのがシャビだ。当時、シャビは21歳だった。

シャビ、ガブリ、ホセ・レイナ、カルレス・プジョール、「出戻り組」のイバン・デ・ラペーニャ、ジェラール・ロペス、ベテランのジョゼップ・グアルディオラ…。2001−02シーズンにおいて、バルセロナには多くのカンテラーノがいた。

ラ・マシア(バルセロナの育成寮)を重視するというプロジェクトは衰退期から全盛期への移行の段階で存在していた。

■ラ・マシアの軽視

その一方で、近年のバルセロナではラ・マシアが軽視されていた。バルセロナがビッグイヤーを掲げたのは、2014−15シーズンが最後だ。メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」がスペインと欧州を席巻した。

しかしながら2017年夏にネイマールが去り、バルセロナは迷走する。ウスマン・デンベレ(移籍金1億500万ユーロ/約132億円)、フィリップ・コウチーニョ(1億2000万ユーロ/約153億円)、アントワーヌ・グリーズマン (1億2000万ユーロ)とネイマールの代役を確保するために大金をつぎ込み、次々に失敗した。

この数年で台頭してきたように、アンス・ファティ、ガビ、ニコ・ゴンサレス、リキ・プッチ、エリック・ガルシア、ロナウド・アラウホ、イリアス・アコマック、エズ・アブデ、オスカル・ミンゲサとバルセロナには才能豊かなヤングプレーヤーがいる。その育成力に疑いの余地はない。だが、補強策とクラブ方針がそこに合致していなかった。

ドリブルするファティ
ドリブルするファティ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「我々は常に試合を支配しようと考えている。だがバイエルン戦では、それが逆だった。より高い要求をしていかなければいけない。我々はバルサだ。チャンピオンズリーグの試合だ。だが我々は戦えていなかった。それが厳しい現実だ」とはバイエルン戦後のシャビ監督の言葉だ。

「私は苛立っている。しかし、これが我々の現実だ。そこに対峙しなければいけない。新しい時代が始まる。ゼロからのスタートだ。我々の目標はヨーロッパリーグではなく、チャンピオンズリーグだ。失敗という言葉は好きではない。我々は挑戦したわけだから。私はバルサを愛しているし、このクラブに人生を賭けている」

競り合うガビとメンディ
競り合うガビとメンディ写真:なかしまだいすけ/アフロ

望んだ結果が得られていないのは、CLだけではない。

リーガで現在、バルセロナは7位に位置している。首位を走るレアル・マドリーとは勝ち点16差。4位アトレティコ ・マドリーとは勝ち点が6ポイント離れている。来季のCL出場さえ、危うい状況に置かれているのだ。

シャビの就任というのは、バルセロニスタの希望だった。だがその希望は打ち砕かれ、厳しい現実が突きつけられている。未来はある。カンテラだ。が、それを具体的なものにしていくためには、山積みの問題を解決していかなければならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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