スタイルが変われば、勝利したとしても満足感は得られない。

バルセロナが苦しい状況に追い込まれている。2021−22シーズンがスタートして公式戦6試合で2勝3分け1敗。だがバイエルン・ミュンヘン戦(0−3)、グラナダ戦(1−1)、カディス戦(0−0)で思うような結果が得られず、ロナルド・クーマン監督の解任の可能性が取り沙汰されているところだ。

■異例の会見

カディス戦前、クーマン監督は異例の公式会見を行なった。報道陣からの質問は受け付けず、自らが用意した文書を2分49秒にわたり読み上げ、会見場を後にしたのだ。

その形での会見は、ジョアン・ラポルタ会長でさえ、知らされていなかった。監督と会長、両者の間の溝は周囲が思っていた以上に深まっているとみえる。ラポルタ会長が不満を抱き始めたのは、4月29日に行われた昨季のリーガエスパニョーラ第33節グラナダ戦(1−2)だといわれている。昨季終盤、首位アトレティコ・マドリーを追随していたバルセロナだが、グラナダに敗れて実質上優勝の可能性が消滅した。

ヘディングでゴールを狙うルーク
ヘディングでゴールを狙うルーク写真:なかしまだいすけ/アフロ

今後、クーマン・バルサを思い起こす時、多くのバルセロニスタが、ルーク・デ・ヨング、ジェラール・ピケ、ロナウド・アラウホの“3トップ”を回想するだろう。

今季のグラナダ戦(1−1)、1点ビハインドの展開で、クーマン監督は後半にピケを投入してパワープレーに走った。試合を通じて54本のクロスを放り込み、最終的にはアラウホがヘディングでネットを揺らして勝点1を奪取した。

「この招集リストを見て、何をすべきだと言うんだ? チキ・タキをやれとでも? スペースがない中で、それをやるか…。私の答えはノーだ。プレースタイルを変えなければいけなかった。現在、我々には1対1で突破できる選手やスピードのある選手がいない。現時点、個人の能力が高いアタッカーがいないんだ」というのがクーマン監督の弁である。

なお、クーマン監督が言う「チキ・タキ」とは「チキ・タカ」のことだ。2000年代後半から、ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いたバルセロナとビセンテ・デル・ボスケ監督のスペイン代表が常勝時代を築いて、その言葉はパスサッカーを指し示すものとして普及した。

現在のメンバーでは繋ぐサッカーはできない。それがクーマン監督の主張だ。

■ポスト・メッシ時代

リオネル・メッシのパリ・サンジェルマン移籍で、バルセロナが打撃を受けたのは事実だろう。クラブの財政悪化による、止むを得ない退団だったのも確かだ。

しかしながら、クーマン監督が度々繰り返す「選手がいない」というのは、今季に関しては言い訳にならない。メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨングと、指揮官が要望したプレーヤーを、クラブは厳しい財政の中で獲得してきているのだ。また、宿敵のレアル・マドリーにおいては、セルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランを財政事情で放出しながら、カルロ・アンチェロッティ監督の見事な手腕で開幕から好発進している。今夏、マドリーで大型補強は敢行されていない。