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久保建英のマジョルカ復帰。タケを「客寄せパンダ」にしないために、必要なこと。

森田泰史スポーツライター
FKを蹴る久保(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

再び、スペインで挑戦の舞台に立った。

昨季ビジャレアル、ヘタフェをレンタルで渡り歩いた久保建英だが、思うように出場機会を得られなかった。保有権を有するレアル・マドリーとしても、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、エデル・ミリトンがEEU圏外枠3枠を占めている状況で久保を復帰させるというプランを持っていなかった。

目下、久保の去就は注目の的であった。レアル・ソシエダ、ベティス、エスパニョールと複数クラブが久保に関心を寄せていた。だが彼を射止めたのは「古巣」のマジョルカだった。

ベティスのパウルと激しくやり合った
ベティスのパウルと激しくやり合った写真:なかしまだいすけ/アフロ

リーガエスパニョーラ開幕節ベティス戦。後半15分にベンチから久保が出てくると、マジョルカのサポーターから大きな歓声が沸いた。マジョルキン(マジョルカのファン)は待っていたのだ。もう一度、久保を戦力として数えられる日を。

ラ・リーガの名物レフェリーであるマテウ・ラオス主審と軽く挨拶を交わし、久保はピッチに入っていった。与えられたポジションは【4−4−2】の左サイドハーフだった。

■戦術的考察

マジョルカは【4−3−3】で試合をスタートさせていた。ベティスの【4−2−3−1】との噛み合わせは悪くなく、中盤ではイドゥリス・ババが好パフォーマンスを見せ、ボール奪取の鬼と化していた。

前半にブライアン・オリバンのゴールで幸先良く先制したが、後半13分にGKマノロ・レイナのオウンゴールで試合が振り出しに戻る。そこでルイス・ガルシア・プラサ監督が交代策を執り、選手の2枚替えで配置を変えた。

マジョルカの課題は、(1)前線の人数が足らない (2)中盤でボールを運べない という点にあった。そこでL・ガルシア監督は久保とアマト・エンディアイェの投入で【4−3−3】から【4−4−2】にシフトチェンジして、問題を解決しようとした。

マジョルカのシステムの変遷
マジョルカのシステムの変遷

■久保に求められるものとは

久保に求められていたのは、左サイドに入り、ボールを前に運ぶことだ。

後半32分には、パウル・アコクが久保を止めるためにファール覚悟でタックルを仕掛けた。だが久保は簡単には止まらず、大きな推進力でパウルを引きずりながらドリブルを続けた。最終的にはパウルが久保を倒し、彼にはイエローカードが提示された。あのようなプレーこそ、L・ガルシア監督が要求するものだろう。

現時点では、久保にフィニッシュに絡むようなプレーを求めてはいけない。そのひとつ前の段階、チームの攻撃の位置を高めるために、久保が存在する。

久保のドリブルにより、相手の守備の重心が下がる。タクティカル・ファールが増え、イエローカードが嵩む。試合がストップして、リズムが崩れる。地味に、地道にこの作業を積み上げていくことが、シーズン半ばからシーズン終盤にかけての活躍の機会につながるはずだ。

(久保のドリブルと推進力)

この試合のマジョルカとベティスのスタッツは、ポゼッション率(34%:66%)、パス本数(224本:503本)、シュート数(6本:9本)とベティスが上回った。ただ、デュエル勝数ではマジョルカ(49回)がベティス(39回)を優っている。

欧州カップ戦出場権を狙うベティスのようなチームを相手に、タフなゲームを強いられた。しかしながら、これが今季のマジョルカの基本路線になる。

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■タケ起用法

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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