最終的に勝負を決めるのは、総合力だ。

1978年から連続でワールドカップ出場を果たしてきたスペイン代表だが、2022年の本大会出場に向けては苦しんでいる。ギリシャ戦（1－1）、ジョージア戦（2－1）、コソボ戦（3－1）を終えてグループステージ首位の座をスウェーデン（2試合消化／勝ち点6）と争う展開になっている。

カタールW杯の欧州の出場枠は「13」だ。予選は10グループに分けられており、首位チームはストレートインが可能になる。しかしながら2位の10チームはUEFAネーションズリーグ（2020－21シーズン）の成績上位2チームと残りの枠を奪い合うことになる。

つまり、グループ2位になってしまうと、12チームで「3枠」を競う厳しいバトルが待っているのだ。

今回の欧州予選においては、ルイス・エンリケ監督の采配が気になった。

まずは右サイドバックの問題だ。ルイス・エンリケ監督はマルコス・ジョレンテとペドロ・ポロを起用した。ジョレンテに関しては、所属クラブのアトレティコ・マドリーでインサイドハーフとウィングバックでプレーしている。4バックの右サイドを本職としている選手ではない。またポロについても、今季スポルティング・リスボンでは【3－4－2－1】の右ウィングバックでプレーしている。

負傷中のダニ・カルバハル（レアル・マドリー）やコンディションが万全ではなかったヘスス・ナバス（セビージャ）を招集できなかったとはいえ、セサル・アスピリクエタ（チェルシー）、エクトル・ベジェリン（アーセナル）が控えていた。ほかにもアンドニ・ゴロサベル（レアル・ソシエダ）など勢いに乗る若手選手がいる。

そして、サイドバックが人材不足であるのなら、考慮すべきは3バックである。アスピリクエタやマリオ・エルモソ（アトレティコ）は自分のチームで3バックでプレーしている。ディエゴ・シメオネ監督が重宝するエルモソに関してはアトレティコに移籍してからプレー強度が上がってきており、アスピリクエタについては稀代の戦術家であるトーマス・トゥヘル監督が認めるDFの選手だ。その戦術理解度の高さは準備期間の少ない代表戦だからこそ生かされるはずだ。

つまるところ、ルイス・エンリケ監督にはプランがない。現状、そう言わざるを得ない状況だ。【4－3－3】で順足のアタッカーを同サイドに置く配置ではフェラン・トーレスやブライアン・ヒルの突破力に頼る攻撃に終始している。ジョルディ・アルバやジョレンテがオーバーラップした際にはスペースを潰してしまう「レーン被り」が起こってしまっている。

今回のスペイン代表の招集メンバーでは、24選手中11選手（46％）が他国リーグでプレーしている。

得点力という意味合いにおいてはジェラール・モレノの存在が大きいが、リーガエスパニョーラの得点ランクを見ると1位リオネル・メッシ（23得点／バルセロナ）、2位ルイス・スアレス（19得点／アトレティコ）、3位カリム・ベンゼマ（17得点／マドリー）となっている。アルゼンチン人、ウルグアイ人、フランス人と外国人選手が上位を占めているのだ。

スペイン代表のアタッカー陣で2桁得点を記録しているのはG・モレノ（16得点）とミケル・オジャルサバル（10得点）のみだ。ロジェール・マルティ（11得点）、ホセ・ルイス・モラレス（11得点）とレバンテで活躍する選手たちは呼ばれていない。

■得点力と外国人選手

無論、外国人選手が得点ランクで上位にいるのはラ・リーガに限らない。プレミアリーグはハリー・ケイン（17得点／イングランド人）、モハメド・サラー（17得点／エジプト人）、ブルーノ・フェルナンデス（16得点／ポルトガル人）であり、セリエAはクリスティアーノ・ロナウド（23得点／ポルトガル人）、ロメル・ルカク（19得点／ベルギー人）、ルイス・ムリエル（16得点／コロンビア人）だ。

ブンデスリーガではロベルト・レヴァンドフスキ（35得点／ポーランド人）、アーリング・ハーランド（21得点／ノルウェー人）、アンドレ・シウバ（21得点／ポルトガル人）が、リーグ・アンではキリアン・ムバッペ（22得点／フランス人）、メンフィス・デパイ（14得点／オランダ人）、ケヴィン・フォラント（13得点／ドイツ人）がトップ3に入る。

黄金時代のスペイン代表には、フェルナンド・トーレスやダビド・ビジャがいた。リヴァプールで爆発していたトーレスに対して、ビジャはバレンシアやバルセロナでゴールを量産していた。ビジャには類稀な決定力があり、なおかつ代表でフアン・マタやダビド・シルバといったバレンシア時代の、あるいはシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツ、ペドロ・ロドリゲスといったバルセロナ時代のチームメートがいた。彼らはビジャの動きをよく理解していた。

■ゴールの分配

「得点力不足は気にしていない。チャンスはつくれているからだ。我々のチームには素晴らしいFWの選手がいる。それに、ゴールは全員で生み出すものだ。前線の選手たちだけの責任ではない」とはルイス・エンリケ監督の弁だ。

「私は自分のチームを信頼している。それは以前と変わらない。就任当初から明確な考えがあり、そこから外れずに、改善に努めなければならない」

ゴールは全員のものだ。指揮官はそう語っている。確かに、ジョレンテ（10得点）、セルヒオ・カナレス（7得点）と中盤にも得点力のある選手がいる。だが先述したようにジョレンテにおいてはサイドバックで起用されている。

「心配なスペイン代表」（エル・パイス紙）、「目を覚ますための今後の3カ月」（マルカ紙）と現地メディアで書き立てられたように、スペインの懸念材料は少なくない。どこから手を付け、修正していくのかーー。ルイス・エンリケ監督の手腕が問われている。