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レアル・マドリーでジダンが抱える「カゼミーロ不在」の問題。クルトゥワに頼る現状と下がる「守備の重心」

森田泰史スポーツライター
ボールを奪うカゼミーロ(写真:ロイター/アフロ)

レアル・マドリーに早くも土がついた。

マドリーはリーガエスパニョーラ第6節で本拠地アルフレッド・ディ・ステファノにカディスを迎え、0-1で敗れた。マドリーがホームで敗戦するのは2019年5月以来だ。

■マドリーの問題点

「言い訳はない。我々はフィジカル面で苦労した。プレーリズム、モチベーション、そういった点でカディスが上回っていた」とは敗戦後のジダン監督の言葉である。

だがカディスが大きなモチベーションによりマドリーに勝利したわけではない。戦術面でマドリーに優っていた。もっと言えば、マドリーが自滅した格好だった。ジダン監督は今季、「カゼミーロ不在時」の対策を考えている。カディス戦でもカゼミーロをスタメンから外し、中盤にはイスコ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチを配置した。

実質【4-2-3-1】の形で、ビルドアップは円滑になるかに思えた。だがモドリッチのボールロスト数(12回/出場時間45分)が物語るように、クロースとモドリッチは使うスペースをめぐりノッキングを起こしていた。ダブルボランチにした効果は少なかった。

■守備力

昨季、マドリーがリーガで優勝した要因は、その守備力にあった。

カゼミーロ、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァランを中心にセンターラインを固める。そして、GKティボ・クルトゥワが抜群の安定感でチームを最後尾から支えた。昨季、サモラ賞(最優秀GK賞)を受賞したクルトゥワのセーブ率は79%だった。

ロックダウン明けの試合では、今季の試合を含めると、クルトゥワは14試合でクリーンシートを達成している。だがマドリーはクルトゥワに頼る場面が増えてきている。守備の重心が下がっているのだ。

カゼミーロが欠場した試合では、これが顕著になる。中盤にフィルター役を果たす選手がいなくなり、チーム全体がズルズルと後退する。「最後はクルトゥワが止めてくれる」と言えば聞こえはいいが、実態は守護神依存の守備体型になってしまっている。

■ゴールの負担を分散

一方、攻撃面では2018年夏のクリスティアーノ・ロナウド退団以降、ゴールの負担を分散させる考え方で戦ってきた。昨季、チーム内得点王に輝いたのはカリム・ベンゼマ(21得点)で、次点はS・ラモス(11得点)だった。

ベンゼマとS・ラモスを除けば、2桁得点をマークした選手はいない。しかし、昨季のマドリーは21選手が得点を記録した。リーガで無得点に終わったのはブラヒム・ディアスとエデル・ミリトンだけだ。

マドリーは現地時間21日にチャンピオンズリーグ・グループステージ第1節でシャフタール・ドネツクと対戦した後、24日にバルセロナとのクラシコが控えている。

バルセロナがヘタフェに敗れたとはいえ、マドリーに改善する必要があるというのは変わらない。ビッグマッチの前の敗戦がプラスに働くかどうかーー。それは神のみぞ知るところだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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