アトレティコのポジショナルプレーと、シメオネが描く完成図。

シメオネ監督とコケ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

今季に入りプレースタイルを一変させているアトレティコ・マドリーだが、苦しんでいる。ディエゴ・シメオネ監督の頭の中に、すでに完成図は描かれているのかーー。信念が試されるところだ。

アントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)、ロドリゴ・エルナンデス(マンチェスター・シティ)、ルカ・エルナンデス(バイエルン・ミュンヘン)、ディエゴ・ゴディン(インテル)...。この夏、複数選手がアトレティコを退団した。世代交代を強いられ、シメオネ監督率いるチームは再出発している。

■堅守速攻

2011年12月にシメオネ監督が就任して以降、アトレティコは堅守速攻を武器にスペインと欧州での地位を固めてきた。だが2015年夏のグリーズマンの加入後、変化が訪れた。グリーズマンは守備と攻撃を「繋ぐ」選手となり、なおかつ、ハードワークと決定力を兼ね備えるプレーヤーに成長した。

グリーズマンの加入前、アトレティコで決定的な仕事をしていたのはアルダ・トゥランだった。アルダはグリーズマンとスイッチする格好でバルセロナに移籍。また、同時期にアトレティコに別れを告げた選手がいる。ラウール・ガルシアである。シメオネ監督の4-4-2、サイド攻撃、セットプレーの核となっていた2選手が他クラブに移籍した。

それ以降、シメオネ監督はサイドアタッカーと「9番」を探してきた。アレッシオ・チェルチ、ニコラス・ガイタン、ヤニック・カラスコがアトレティコの新たな翼になると期待された。マリオ・マンジュキッチ、ジャクソン・マルティネス、フェルナンド・トーレスには絶対的なストライカーという役割が求められた。

だが、指揮官の要求に応えきれる選手はいなかった。サイドアタッカーと9番を務める選手を見つける前に、グリーズマンがバルセロナに移籍した。再び、シメオネ監督は変化の必要性に迫られた。

■ポジショナルプレーと3バック

2019-20シーズン、シメオネ監督はポジショナルプレーに取り組んでいる。4-3-3や4-3-1-2を使う一方で、顕著なのが3バックの導入だろう。この形は昨季終盤に試運転されていた。フィリペ・ルイス、ホセ・ヒメネス、ステファン・サビッチの「SB+2CB」でビルドアップする。今季は最終ラインにマリオ・エルモソ、ヒメネス、フェリペ・モンテイロとCB型の3選手が並んでいる。

3-1-4-2を形成して、ライン間を狙う。ライン間を突くのは、ビトロ、トマ・レマル、アンヘル・コレア、ジョアン・フェリックスだ。彼らが流動的にポジションを入れ替え、相手守備陣に穴ができたところで、縦パスが入る。その瞬間、アトレティコの攻撃のスイッチが入る。そして、レナン・ロディとキリアン・トリッピアーのウィング化する。

また、欠かせないのがトーマス・パーティーの存在である。以前はトランジションの場面で生きる選手であったが、現在はボール奪取、攻守のつなぎ、二列目の飛び出し、縦パスを入れる役割と多くのタスクを担っている。トーマスの2018-19シーズン(リーガ32試合出場/出場時間2064分/パス本数1327本/パス成功率83,8%)と2019-20シーズン(リーガ9試合出場/出場時間582分/パス本数417本/パス成功率86%)を比較すれば、中盤の安定感への貢献度が見て取れる。

ただ、アトレティコの課題はグリーズマンが去った前線、決定力である。グリーズマン在籍時、アトレティコは彼に得点力の面で依存していた。2014-15シーズン(リーガ37試合21得点)、15-16シーズン(38試合22得点)、16-17シーズン(36試合16得点)、17-18シーズン(32試合19得点)、18-19シーズン(37試合15得点)と数字が物語っている。

「ピザを食べ続けるべきだ」と、シメオネ監督は述べた。ただ、ピザを食べ続けるにも限度がある。時には味を変えなければならない。そのための具材と調味料、それが新戦力であり、システムチェンジであり、戦術の変更だ。決して、なくならないもの。それはチョリスモ(シメオネ主義)のみである。