Yahoo!ニュース

ジダンが待ち望んだラストピース、レアル・マドリーで魅せた6分14秒の「ロドリゴ劇場」

森田泰史スポーツライター
ロドリゴ・ゴエス(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

2015-16シーズン、2016-17シーズン、2017ー18シーズンとチャンピオンズリーグ3連覇を達成したレアル・マドリーだが、今季は開幕から2試合未勝利が続き苦しんでいた。そのマドリーを救ったのが、ロドリゴ・ゴエスである。

「決戦」となったグループステージ第3節(1-0)と第4節(6-0)のガラタサライ戦で先発に抜擢されたロドリゴ。圧巻はホームで行われたガラタサライとの一戦だった。開始から6分14秒で2得点を挙げ、チャンピオンズリーグの記録を更新。さらに1点を加えてハットトリックを達成し、カリム・ベンゼマの得点のお膳立てを含め3ゴール1アシストと大暴れした。

■ラウール以来

マドリーがチャンピオンズリーグでグループステージ敗退に終わったことは、過去に一度もない。思うような結果が出ておらず、ジョゼ・モウリーニョ監督を招聘する可能性が取り沙汰されていた。ジダン監督のクビが懸かったところで、現れたのはロドリゴだった。

ロドリゴは18歳301日でハットトリックを達成した。キリアン・ムバッペ(20歳306日/現パリ・サンジェルマン)を凌ぐ記録だ。

そして、これはマドリーの象徴的存在であるラウール・ゴンサレス(現マドリー・カスティージャ監督)以来の大きな記録だ。ラウールは1995年10月18日に行われたチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節、フェエレンツェヴァーロシュ戦(6-1)で、18歳113日でハットトリックを達成。ロドリゴの記録は、それに次ぐものだった。

「ラウール超え」とはならなかったが、ロドリゴは確かな足跡を残している。ロドリゴは、この夏に移籍金4500万ユーロ(約54億円)でマドリーに加入した。ヴィニシウス・ジュニオールに次いで、フロレンティーノ・ペレス会長がブラジルの若き才能を確保した格好だ。

また、ロドリゴは、運を「持っている」選手でもある。今季開幕前に、ウルグアイ人のフェデ・バルベルデがスペイン国籍を取得。EU圏外枠のポストが、ひとつ空いた。そうしてチャンスを得ると、瞬く間にレギュラー争いに加わり、チームの勝利に貢献した。

■ジダンのラストピース

「ミスター・チャンピオンズ」の異名を取ったクリスティアーノ・ロナウドがユヴェントスに移籍して、マドリーは攻撃の指針を失った。チャンピオンズリーグで105得点を記録していた選手の穴を埋めるのは容易ではない。

C・ロナウドの後継者と目されていたガレス・ベイルは移籍の噂が絶えない。ジネディーヌ・ジダン監督との関係も良好とは言えず、負傷離脱が多い影響もあり、「計算できる」選手にはなっていない。

4-3-3を基本布陣とするジダン監督だが、最後のタイトル獲得時に起用していた選手たちを重宝し続けている。17-18シーズンのチャンピオンズリーグ決勝のスタメンのうち、マドリーを去ったのはGKケイロール・ナバスとC・ロナウドのみ。彼らのポジションに、GKティボ・クルトゥワとエデン・アザールが入った。

だが、ジダン・マドリーにはスパイスが欠けていた。マドリディスタは、新たな怪物の誕生を予感したはずだ。不足していたラストピースーー。それがロドリゴ・ゴエスなのかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事