「イスコ・システム」の問題が表面化。レアル・マドリーが抱える矛盾と、求められる解決策。

イスコ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

レアル・マドリーに平穏な時が訪れることはないのかもしれない。

フレン・ロペテギを解任して、サンティアゴ・ソラーリの昇任を決めたマドリーだが、次は選手起用をめぐる報道が過熱している。渦中にいるのは、イスコである。

ソラーリ政権で、7試合を戦ったマドリーは、6勝1敗という結果を残している。監督交代の効果は絶大だった。ただ一人、イスコだけが、まるで蚊帳の外に置かれたように、その流れに乗れずにいる。

■茨の道

イスコは2013年夏にマドリーに加入。マラガで際立ったパフォーマンスを見せていたイスコを、マドリーが移籍金3000万ユーロ(約38億円)で獲得した。

だがイスコを待っていたのは茨の道だった。ガレス・ベイルの加入で、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドを含めた「BBC」の起用が歴代監督の暗黙の了解として成り立った。それがイスコの逆風となり、彼の成長を妨げた。

カルロ・アンチェロッティ政権(13-14シーズン/リーガエスパニョーラ先発23試合出場・14-15シーズン/リーガ先発26試合出場)、ラファエル・ベニテス政権(15-16シーズン前期/リーガ先発9試合出場)、ジネディーヌ・ジダン政権(15-16シーズン後期/リーガ先発12試合出場・16-17シーズン/リーガ先発18試合出場・17-18シーズン/リーガ先発21試合出場)、ロペテギ政権(18-19シーズ前期/リーガ先発5試合出場)と、定位置確保に苦しんだ。

イスコを指揮下に置いた名将たちが直面したのは、ある種の板挟み現象だ。

■ポジションがない

「BBC」とイスコの争いーー。それはまさに仁義なき戦いだった。

スピード、突破力、決定力が自慢の3トップと、技術と創造力で攻撃を司るトップ下型の選手。現代フットボールの傾向として、イスコのような選手はサイドアタッカーとして起用される。

しかし、「BBC」を中心に据えた4-3-3で、歴代の指揮官はイスコ起用に際して二律背反の中に身を投じた。3トップの一角として起用するには、得点を奪う能力に欠ける。インテリオールと呼ばれる中盤前目の位置では、展開力とオーガナイズ能力が不足している。ボランチとしては、守備力とフィジカルが欠けている。イスコを置くポジションがないのだ。

解決策を示したのはジダンだ。だがそれはシステム変更と「BBC」解体という痛みを伴うものだった。ジダンは4-4-2を採用して、イスコをトップ下に配置。16-17シーズンのチャンピオンズリーグ決勝ユヴェントス戦、17-18シーズンのチャンピオンズリーグ決勝リヴァプール戦で、いずれもジダンは4-4-2でイスコを先発起用して、ビッグイヤーを掲げている。

昨季に関しては、シーズン終盤にベイルが負傷で長期離脱を余儀なくされた背景があった。だが弾き出される格好となったベイルは移籍をほのめかすコメントを公の場で残す。チャンピオンズリーグで優勝した直後に、である。ベイルの不満が爆発寸前だったというのが窺える。「BBC」への梃入れが孕むリスクが表面化した一幕であった。

■イスコ・システム

MF-DFラインの、「中間ポジション」に位置させる。その瞬間、イスコが最も怖い存在になる。だからトップ下がイスコの適性ポジションなのだ。

問題は「マドリーがチームとして、それを行うのか」である。つまり、イスコを中心にして、彼にボールが集まるように周りの選手がプレーするのか、だ。

タイトルを獲得するためには、「プランB」が機能しなければならない。ただ、イスコとマドリーに絡み付くジレンマは、「プランA」にするためには彼を中心にチーム作りをしなければならず、「プランB」にするにはパンチ力がないということだろう。つまり、意外性に欠けるのである。

例えば、イスコを中心に据えるのであれば、4-4-2の採用が考えられる。ジダンが実践したように。だがクリスティアーノ・ロナウドが抜けたあと、ベイルとベンゼマは彼の不在を忘れさせるほどの得点力を担保できずにいる。

逆説的ではあるが、イスコをトップ下に配置した4-4-2が可能だったのは、C・ロナウドの決定力があったからこそだ。ベイルとベンゼマの2トップで思うように得点を奪えない。すると、自ずと3トップという選択肢が浮上する。現に、ソラーリはここまで戦った7試合で、2トップ(4-4-2)を一度も使っていない。

マドリーは、イスコをどう扱うのかーー。それがタイトル獲得の是非につながるだろう。裏を返せば、それほどまでに、レアル・マドリーにおけるイスコの存在は大きくなっている。