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【コロンビア代表】ハメス・ロドリゲス。左足一本でのし上がった男。W杯で再び輝けるか。

森田泰史スポーツライター
左足で強烈なシュートを放つハメス(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

前回のワールドカップ(W杯)で、一番評価を高めたのは、この男だったかもしれない。

ハメス・ロドリゲス。バイエルン・ミュンヘンでプレーする、コロンビア代表の司令塔だ。ハメスはまさに、その左足一本で、猛者が集う欧州サッカー界でのし上がっていった。

■14歳でプロデビュー

ハメスは母国コロンビアのエンビガドでプロ選手として最初の一歩を踏み出した。プロデビューを飾ったのは、なんと14歳の時だ。エンビガドでは2部降格を経験するなど苦しい時期を過ごしたが、ハメスは着実に成長していく。

プロデビューからおよそ2年後、ハメスはアルゼンチンのバンフィエルドに引っ張られる。アルゼンチンでは、17歳でプリメーラ・ディビシオン(アルゼンチン1部リーグ)のピッチに立ち、同リーグの最年少外国人選手、外国人最年少得点記録を更新している。

そのハメスに、ポルトが目を付けた。欧州有数の商売上手なクラブである。ポルトは2010年夏に移籍金510万ユーロ(約6億円)でハメスを獲得する。これは後にクラブに大きな成功をもたらすことになる。

■「大砲」と称される左足

「ハメス・ロドリゲス」の名が一躍世界に轟いたのは、2014年のブラジル・ワールドカップだった。

コロンビア代表で10番を背負ったハメスはトップ下で輝いた。コロンビアは日本、ギリシャ、コートジボワールと同組のグループステージを首位通過すると、決勝トーナメント1回戦でウルグアイとの南米対決を制して、ベスト8に進出。その中心に、ハメスの姿があった。

その左足は、対戦相手を恐怖に慄かせ、観る者を虜にする。ブラジルW杯では、6得点を記録して大会得点王になった。ウルグアイ戦の左足のハーフボレーによるゴールは、大会ベストゴールのひとつに数えられるほどのものだった。

ブラジルで燦然と輝いたハメスに、ビッグクラブが熱視線を送っていた。大会終了後、レアル・マドリーが即座に獲得に動いた。レアル・マドリーは移籍金固定額7500万ユーロ(約97億円)をモナコに支払い、10番を用意してハメスを迎えたのだ。

■W杯前年に移籍

マドリーでの日々は、順風満帆とはいかなかった。イスコ(スペイン代表)、ガレス・ベイル(ウェールズ代表)、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表)たちとの激しい競争に晒された。

カルロ・アンチェロッティ監督には重宝されたが、ラファエル・ベニテス監督、ジネディーヌ・ジダン監督から正当な扱いを受けたとは言い難かった。

ゆえに、ハメスは2017年夏に移籍を決意する。2年のレンタルでバイエルン・ミュンヘンに加入した。バイエルン側に4200万ユーロ(約54億円)の買い取りオプションが付けられた。活躍次第で、完全移籍が可能になる。ハメスにとって、悪くない条件だった。

W杯イヤーを目前に、ハメスはバイエルンで居場所を勝ち取った。今季ブンデスリーガで22試合に出場。7得点11アシストと申し分ない成績を残している。

ハメスは現代フットボールにおいてその存在を消滅させつつある、クラッシックなプレーメーカーである。前回大会ブラジルで輝いた若者は、この4年で苦楽を経験してきた。コロンビア国民の期待を背負い、その左足から再び魔法が繰り出される。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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