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勝てばW杯出場が決定。長谷部復帰でハリルを悩ませる「4-2-3-1」と「4-3-3」のジレンマ。

森田泰史スポーツライター
長く共に中盤を形成してきた長谷部と香川(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

決戦を前にして、よもやのニュースが舞い込んできた。日本代表がロシア・ワールドカップ(W杯)の出場権を争うサウジアラビアが、UAEに敗戦したというものだ。

■勝ち点計算がゲームプランに影響

日本は現在、グループで勝ち点17を重ねて首位に位置している。オーストラリア(勝ち点16)、サウジアラビア(同16)が日本を追随していたが、そのサウジアラビアが敗れたのである。

日本はホームで行われる31日のアジア最終予選オーストラリア戦で勝利を収めれば、本大会への自動出場権が与えられる2位以内を確保して、W杯出場を決められるという条件を手にしていた。さらにサウジアラビアが敗れ、目標達成はグッと近づいたことになる。

サウジアラビアの敗戦に、オーストラリアも影響を受ける。オーストラリアとしては、日本戦で敵地から勝ち点1を持ち帰りたいところ。彼らは最終戦でホームにタイを迎える。勝ち点3を計算できる試合を前に、3位サウジアラビアに勝ち点1差を付けられれば、理想の状況だ。

よって、31日の試合でオーストラリアが果敢に攻撃へと打って出てくることは考え難い。守って、守って、カウンター。セットプレーから好機を見いだす。失点を喫したならば、終盤にパワープレーを繰り出す。それがオーストラリアのゲームプランになるだろう。

■「4-3-3」か「4-2-3-1」

では、日本はどう対応すればいいか。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、どのようなメンバーで大一番に臨むべきだろうか。

今回、ハリルホジッチ監督にとって何より大きいのは、長谷部誠の復帰だ。3月11日に行われたブンデスリーガの一戦で右ひざを痛めた長谷部は、その後UAE戦、タイ戦、イラク戦を欠場した。ハリルホジッチはキャプテンの離脱で急遽システムを変更。それまで安定していた4-2-3-1を諦め、4-3-3へとシフトチェンジしている。

4-3-3を採用した試合でUAEとタイを相手に2連勝。イラク戦では変則的な4-4-2を使い、さらには負傷者続出のトラブルにも見舞われながら、敵地(正確には中立地開催)で勝ち点1を得た。ハリルホジッチは長谷部不在の難局を乗り切ったと言っていい。

そして、長谷部が戻ってくる。指揮官は絶大な信頼を寄せるフランクフルトMFに、出場機会を与えるだろう。問題は「どこで」「誰と」コンビを組むかである。

4-2-3-1であれば、ダブルボランチの一角として出場するはずだ。相棒には山口蛍、あるいはイラク戦で出色の出来だった井手口陽介が入る可能性もある。

より難しいのは、ハリルホジッチが4-3-3を採用した場合だ。長谷部をアンカーで起用するのか、インサイドハーフで起用するのか。長谷部がアンカーなら、インサイドの位置を香川真司、井手口、柴崎、小林らが争うことになる。アンカーを山口あるいは井手口が務めるなら、長谷部と香川が中盤の逆三角形を形成することになるだろう。

■「ジョーカー」になるのは...

4-3-3はハリルホジッチの苦肉の策だったように思う。このシステムでは、世界の強豪相手に戦えない。そんな声も挙がった。

ハリルホジッチが4-2-3-1に回帰するのであれば、ホームのサウジアラビア戦(2-1)以来、およそ4試合ぶりに同システムで戦うことになる。だが、この布陣では3勝1分け1敗と、一定の成果を残している。

当然ながら、システム云々で試合は決まらない。ハリルホジッチには選手起用と交代策においても胆力を示してもらいたい。

エイバルで好調を維持する乾貴士、新天地ヘタフェで早々とスタメンを奪取した柴崎岳、セレッソ大阪で結果を残して初招集された杉本健勇と、先発としても、「ジョーカー」としても活躍できる選手が揃っている。

日本とオーストラリアは、互いを熟知している好敵手である。そして、日本はW杯予選でオーストラリア相手に未勝利が続いている。大事な試合で難敵を叩き、これまでのもやもやを吹き飛ばして、ロシアへの視界を一気に開きたい。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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