移籍実現ならフィーゴ以来の「裏切り者」扱いも。過熱するパリSG行き報道に、沈黙を貫くネイマール。
2億2200万ユーロ(約286億円)という大金を、無碍にはできない。
バルセロナが揺れている。ブラジル代表FWネイマールに、パリ・サンジェルマン移籍の可能性が浮上しているからだ。
■過熱する移籍報道
トッププレーヤーの移籍が取り沙汰されるのは、決して珍しいことではない。だが今回のネイマールの移籍報道は加熱の一途をたどり続けている。
ブラジル『エスポルテ・インテラティボ』では、19日にネイマールがパリSG移籍を受け入れたと報じられた。また同メディアが実施したアンケートによれば、4480票の投票のうち、実に4000票がネイマールのPSG移籍に「賛成」している。パリSGのユニフォームを身に着けているコラージュ画像まで載せられ、話題を呼んだ。
スペイン紙『スポルト』は、22日付の新聞で「史上最大の移籍に」とネイマールのパリSG移籍の可能性を一面で報じた。契約解除金2億2200万ユーロ、年俸3000万ユーロの5年契約、1億ユーロのボーナス。総額4億7000万ユーロ(約606億円)という、前代未聞の金額が発生することになると伝えた。
さらに、『スポルト』はネイマールの移籍に関するアンケートを実施。3万1289票が集まり、「ネイマールのパリSG移籍に賛成するか?」という問いに、82%が「イエス」と答えている。
■沈黙を貫くネイマール
ここまでネイマールが沈黙を貫いていることから顧みて、パリSGがブラジル代表FW獲得に動いているのはおそらく事実だろう。先週、ネイマールの父親はパリSGのアルテロ・エンリケSD(スポーツディレクター)、同クラブ幹部のソフィー・ジョルダン氏と会合を行い、口頭合意に至ったとも伝えられている。
この状況に、バルセロナの主力選手たちが動いた。リオネル・メッシ、ルイス・スアレスは21日夜に滞在先のホテルで1時間程度ネイマールと話し合ったようだ。その翌日のユヴェントス戦で、ネイマールはプレシーズンマッチながら圧巻のパフォーマンスを見せている。これは偶然ではないはずだ。
だがネイマールは、残留の希望を示しながらも、交渉の行方を父親に委ねていることを強調したという。ただ現時点、ネイマールは書類にサインしていない。スペインでは書類が絶対の力を持つ。口頭合意の段階というのは、裏を返せばすべてが白紙に戻る可能性もあるということだ。
■移籍実現なら「裏切り者」のレッテルが
バルセロニスタはここ数日、やきもきした日々を過ごしている。何より、ネイマールが残留を明言しないことに引っかかっているのだ。
バルセロニスタはネイマールに不信を抱き始めている。移籍騒動が続くようであれば、彼らの選手に対する愛情は憎悪へと姿を変える。これまで愛した分だけ、強い憎しみになる。
2000年7月、ルイス・フィーゴはバルセロナからレアル・マドリーに禁断の移籍を果たした。パトリック・クライファート、リバウドと共に3トップを組んで観衆にスペクタクルを披露した、魅惑的なフットボールを象徴する存在が、突如として移籍を決断した。大金に目が眩んだ。そんな物言いで、多くのバルセロニスタは今でもフィーゴを「裏切り者」扱いしている。
ライバルクラブへの移籍ではないものの、現在バルセロニスタのネイマールに抱く感情も似たものだ。ネイマールは昨年夏にも移籍の可能性が騒がれ、最終的には年俸アップを含めたバルセロナとの新契約を締結した。移籍市場が開く度に、クラブに年俸見直しを主張しているように見えては、ファンの信頼を失って当然だろう。
23日には、再びネイマールと父親、バルセロナのラウール・サンジェイFD(フットボールディレクター)、ナイキ社のアルバロ・コスタ氏の4名が集まって話し合った。その数時間後には、ジェラール・ピケがネイマールとの写真を添えて「残留する」とのメッセージをソーシャルメディアに載せている。
昨夏にも、ネイマールのパリSG移籍の可能性は話題に上った。だが今夏、「残留」と「移籍」を行き来する振れ幅は、昨年のそれより格段に大きい。刻一刻と変わりゆく市場の流れの中、ネイマール自らの説明が待たれるところだ。