「もう戻ってくることはない」悲壮な決意を胸にモラタがレアル史上最高額103億円でチェルシーに加入
「もう戻ってくることはないと思う」
移籍が決まった直後、アルバロ・モラタはそう語った。
チェルシーは19日にモラタ獲得でレアル・マドリーと合意に至ったことを発表している。8000万ユーロ(約103億円)に、ボーナス500万ユーロ(6億4500万円)を加えた移籍金で両クラブは取引を成立させた。
アメリカでキャンプインしていたマドリーだが、モラタは19日の練習を途中で切り上げなければならなかった。チェルシーでメディカルチェックを受けるためである。UCLAの練習場で、まずジネディーヌ・ジダン監督と抱擁と固い握手を交わしたモラタは、次々とスタッフの下に歩み寄って握手する。
マドリーの選手たちは黙々とトレーニングを続けていた。だが状況を見かねて、レスト間にナチョ・フェルナンデス、イスコ、ダニエル・カルバハル、ルーカス・バスケスがモラタに寄って来て抱擁を求める。
「モラータ、モラータ、モラータ!」同僚たちはカンテラーノの名前をチャントする。そして、大きな拍手。最後にガレス・ベイルと握手を交わし、モラタはUCLAを後にした。
■ユヴェントスで結果を残して復帰を果たしたが...
思えば、モラタのこれまでの道のりは決して平坦ではなかった。
15歳でレアル・マドリーの下部組織に入団。同期には、ヘセ・ロドリゲス(現パリ・サンジェルマン)がいた。17歳から世代別スペイン代表に選ばれていたモラタだが、クラブ内外でずっと高い評価を受けていたのはヘセだった。
それでも2010年、ジョゼ・モウリーニョ監督(現マンチェスター・ユナイテッド)の下でトップデビューを果たす。だがビッグクラブで定位置をつかむのは容易ではなく、2013年にベイルが加わり「BBC絶対主義」がチーム内に暗黙の了解として成り立つと、モラタのレギュラー奪取はいよいよミッション・インポッシブルとなった。
そんなモラタに、2014年夏、転機が訪れる。ユヴェントスが獲得に乗り出したのである。この初めての国外挑戦で、若者は予想以上のスピードで成長を遂げる。
移籍1年目で46試合15得点、2年目に47試合12得点を記録。ユヴェントスでのファーストシーズン(2014-15)では、チャンピオンズリーグ準決勝でマドリーと対戦し、モラタは2得点を挙げて古巣を敗退に追い込んだ。
■訪れた2度目の別れ
モラタの2度目の別れを予期させた出来事。それは意外にも、チームの歓喜の瞬間に訪れた。
昨季5年ぶり33度目のリーガエスパニョーラ優勝を達成したレアル・マドリーだが、モラタはそれを祝うことができなかった。マドリッドのシレーベス広場で行われた祝賀会。喜びに浸る選手、スタッフ、ファンを尻目に、モラタは会の終盤でその輪から外れた。
一人、騒ぐファンの姿を感慨深げに見つめる。悲しくて、悔しくて、感情を抑えられなかったのである。同じカンテラーノであるカルバハルや、キコ・カシージャ、マルコ・アセンシオらに励まされ、モラタはなんとかセレモニーを終えた。
しかし、モラタの心は決まっていた。これ以上、こんなことは続けられない。自分はもっと試合に出て、主役としてタイトルを獲得したい。フットボーラーとして当然の欲が、コントロールできないところまで膨れ上がっていた。
■史上最高額の移籍金
モラタの移籍で、レアル・マドリーは移籍金8000万ユーロを手に入れる。ボーナスを含めれば、8500万ユーロ(約109億円)という大金だ。
これは2014年夏にマンチェスター・ユナイテッドがアンヘル・ディ・マリア獲得に支払った7500万ユーロ(約96億円)を超える額である。フロレンティーノ・ペレス会長は、自家栽培のストライカーに、「マドリー史上最高額」のラベルを貼ることに成功した。
さらに、モラタはスペイン人選手としても史上最高額で移籍を果たしている。2011年1月にフェルナンド・トーレス獲得のため、チェルシーは5800万ユーロ(約74億円)を支払った。奇しくも、そのチェルシーが、再び巨額を積んでスペイン人FWを戦力に加えている。