FIFAの処分で今夏の選手登録は禁止。悲願のCL制覇にシメオネが求めるのは「得点製造機」か。
アトレティコ・マドリーは今夏、FIFAの処分という外的要因に多大な影響を受ける。それでも補強を諦めていないのは、ディエゴ・シメオネ監督に最高の形で挑戦を続けてほしいからだろうか。
昨年は、シメオネ監督の去就を巡り騒がしい夏を過ごす羽目になった。指揮官はチャンピオンズリーグ(CL)決勝で敗れた後、感情が昂って「続けるか迷っている」と口にしてしまった。これが発端となり、メディアは連日彼の退任の可能性を書き立て続けた。
■FIFAの処分で実質補強禁止に
だが今年はそれとは別の問題に頭を悩ませることになる。未成年選手の登録に規律違反があったとされ、FIFAがアトレティコに2016年冬・2017年夏の移籍市場における選手登録禁止処分を下したからだ。
スポーツ仲裁所(TAS)に処分の軽減・撤回を訴えていたアトレティコだが、TASはこれを認めなかった。5月に最終判断が下されると、クラブは新たな補強策を考え始める。アトレティコの選手登録が解禁されるのは、来年の1月だ。クラブは今夏一旦獲得した選手を半年の間レンタル放出し、1月に戻して2017-18シーズンの後半戦に備えようとしている。
■熱望されるジエゴ・コスタの復帰
アトレティコが獲得を試みているのはチェルシーFWジエゴ・コスタ、マラガFWサンドロ・ラミレス、セビージャMFビトロだ。だがサンドロは早くもアトレティコのプランに難色を示し、エヴァートン移籍へと傾いている。
ビトロ獲得の行方は、セビージャが態度を軟化させることに期待する必要がありそうだ。セビージャは現時点、契約解除金の支払いを頑なに主張している。その額は3500万ユーロ~4000万ユーロ(約43億円~約49億円)だといわれており、この資金を捻出するのは容易ではない。
ジエゴ・コスタは2014年夏に3800万ユーロ(約46億円)の移籍金と引き換えに、アトレティコを去った。アトレティコは翌年の夏に移籍金3500万ユーロでポルトからFWジャクソン・マルティネスを獲得。だがリーガエスパニョーラで15試合2得点とフィットしきれず、半年後に移籍金4200万ユーロ(約41億円)を置き土産にコロンビア人FWは広州恒大へと渡った。
通常であれば選手の移籍にさほど干渉しないシメオネ監督だが、ジエゴ・コスタが去って以降、亡霊のように彼を追い続けていたのかもしれない。マリオ・マンジュキッチ、フェルナンド・トーレス、J・マルティネス...。何人もの選手がストライカーとして試されてきた。しかしながら、指揮官の求める答えを提示できた選手はいなかった。
実際、シメオネ監督は新加入の前線の選手に早い段階で出場機会を分け与えている。移籍1年目に最初の半年間で50%以上の出場機会を確保した選手は少なくない。ジエゴ・コスタ(レンタル復帰・50.9%)、ダビド・ビジャ(61.6%)、マンジュキッチ(74.1%)、アントワーヌ・グリエズマン(51.2%)、ケヴィン・ガメイロ(56.2%)はいずれも定期的に試合に出場していた。
2014年夏に加入したDFホセ・ヒメネス(7.1%)、2015年夏にレンタル復帰したMFサウール・ニゲス(29.6%)、2015年夏に加入したステファン・サビッチ(28.1%)ら中盤と守備陣の選手がシメオネ監督率いるチームの一員となってからの半年間で出場機会確保に苦しんだ事実を顧みれば、指揮官がストライカーの適応に尽力していたことが分かる(データはスペイン『マルカ』より引用)。
■欧州随一の盾に「得点製造機」
「暴力的」とさえ形容されることもあるインテンシティ、鋭く無慈悲なカウンター、練度の高いセットプレーと空中殺法。アトレティコの戦い方を活かすなら、前線にはスピードのある選手(グリエズマンやガメイロ)と屈強なストライカーを組ませるのが望ましい。指揮官の欲求を満たすための超弩級の戦闘機、それがジエゴ・コスタなのである。
16-17シーズンのCLで、アトレティコ(10試合9失点)は準優勝のユヴェントス(11試合7失点)に次ぐ失点率を誇った。リーガでは38試合26失点で、20チーム中1位の守備力を見せ付けた。
“欧州随一の盾”に、「得点製造機」を加える。悲願のCL制覇に向け、シメオネ監督が求めるラストピースはそれだ。