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アトレティコ、3度目の正直ならず。欧州の頂を目指すシメオネの「美しき挑戦」は続く

森田泰史スポーツライター
またしてもマドリーに敗れたアトレティコ。シメオネのチャレンジは終わらない(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

偉業達成には、あと1歩及ばなかった。アトレティコ・マドリーは今季のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝でレアル・マドリーに敗れ、大会を後にした。

2011年12月にディエゴ・シメオネ監督が就任してから、アトレティコは再び欧州で敬意を表される存在となった。就任1年目にヨーロッパリーグ制覇を成し遂げた指揮官は2013-14シーズンから4季連続でCL出場を果たし、2度の準優勝、ベスト4、ベスト8という成績を残してきた。

■「試合から試合へ」

“Partido a partido”

パルティード・ア・パルティード。これはシメオネの口癖だ。「試合から試合へ」を標語に掲げ、アトレティコはまさに試合を重ねるごとに成長してきたのである。

そもそも、アトレティコはシメオネ監督の就任前まで衰退期にあった。2000年には2部降格の憂き目を見て、2年間をセグンダ・ディビジョンで過ごした。1部復帰後も状況が劇的に変わることはなく、02年から12年まで4位以下に甘んじ続けた。

そこに起爆剤として投入されたのが、シメオネだった。

時に「暴力的」とさえ称される高いインテンシティで、試合の主導権を握る。スペースを捕らえ、鋭いカウンターで相手を仕留める。シメオネのフットボールはアトレティコ・マドリーのスタイルとして確実に浸透していった。

「ポゼッションに興味はない。15度の決定機を逸するより、1-0で勝利することを私は望む」

「ひとつひとつの球際を、ラストプレーだと思えるかどうか」

彼自身の愛称にちなむ“チョリスモ”は選手、スタッフ、ファンを心酔させた。シメオネなくしてアトレティコは存在し得ない。そんな声さえ、聞こえ始めている。

■スモールチームのように振る舞うビッグチーム

スペイン国内ではレアル・マドリーやバルセロナと対等に渡り合い、欧州では近年ユヴェントス、チェルシー、バイエルン・ミュンヘンといった強豪クラブと互角の戦いを演じてきた。

ビッグチームでありながら、スモールチームのようにプレーする。これは簡単なことではない。だがシメオネはクラブが発展期に差し掛かった後も、同じ姿勢で安定した戦果をあげ続けている。彼の表現を用いれば、自らの「兵士」を存分に活用して。

今回の準決勝ファーストレグで、マドリーに0-3と敗れたアトレティコ。「彼らは2度チャンピオンズリーグの決勝で我々に勝っている。だが、これは美しい挑戦になる」。セカンドレグを前に、シメオネはそう語った。

本拠地ビセンテ・カルデロンで観衆を煽る姿は、最早風物詩になりつつある。来季からはワンダ・メトロポリターノに新スタジアムを移行するが、同じようにファンと一体化するシメオネがそこにはいるだろう。17-18シーズンは、そこを基点にもう一度欧州の頂を目指す。シメオネの「美しき挑戦」は続くのだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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