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コンビニの24時間営業見直しは必至   時短営業にはディリー商品の深夜~早朝納品と朝の棚入れが課題

森田富士夫物流ジャーナリスト
コンビニで買い物をする女性(写真:アフロ)

 公正取引委員会は9月2日、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」を発表した。同調査は今年1月17日から2月14日の間に実施したもので、平成以降3回目となる。コンビニエンスストア(CV)の大手8チェーンの本部などを対象にヒアリングなどを行うとともに、加盟店5万7524店へのWebアンケートを実施。1万2093店(8423オーナー)から回答を得た。

 調査報告書のうち「年中無休・24時間営業」に関わる概要は以下のようだ。

 オーナーが時短営業を希望する背景としては、77.1%の店舗が深夜帯(22時~翌日5時)は赤字で、93.5%の店舗が人手不足を感じている。このようなことから62.7%のオーナーが現在の業務時間について「どちらかといえば辛い」、「非常に辛い」と回答している。深夜営業の収支状況を時間帯別にみると、33.0%が3時台に売上が最も少なく、次が2時台の31.1%、4時台の14.0%となっている。一方、深夜の時間帯でも黒字という回答が6.4%あり、16.5%は収支トントンとしている。

 今後の意向では、「引き続き24時間営業を続けたい」という回答は約3分の1の33.2%にとどまり、「(営業時間短縮を)一度実験してみたい」32.2%、「人手不足等により一時的に時短営業に切り替えたい」18.8%、「時短営業に完全に切り替えたい(将来的にも24時間営業に戻すつもりはない)」15.8%となっている。実験的な時短営業、一時的な時短営業、完全な時短営業を合わせると66.8%に上る。

 調査結果の全体を通してみると、約77%の店舗が深夜の時間帯は赤字であり、最も人手不足を感じる時間帯は6時台、慢性的な人手不足をオーナーの長時間労働で補っている、といった現状が浮かんでくる。このようなことから深夜時間帯でも採算が取れている店舗など一部を除けば、CVの24時間営業の見直しは必然的な方向と思われる。

 そこで24時間営業を見直して時短営業にする場合の課題を物流面から見ることにした。

常温・フローズン・ディリー(米飯&チルド)の商品別の3つの配送パターン

 CV店舗への配送は、商品カテゴリーによって常温商品(ドライともいう)、フローズン(冷凍)商品、ディリー商品の3つのパターンがある。このうち常温商品には、常温食品と食品以外のあらゆる商品が含まれる。常温商品の配送は基本的には夕方から深夜の1日1回となっており、あるCVの場合には16時~翌日1時の時間帯の配送である。かりに採算の取れない深夜帯(22時~5時)を閉店にすると、常温の配送時間帯にも影響が出てくる。「24時間営業なら不可抗力で到着時間が遅れても納品できるが、閉店時間帯があると遅配できない。また、飲料水などは常温で運ぶので深夜のうちに商品ケースに入れておかないと朝食需要のピークまでに冷えないといった問題もある。22時からの閉店になると棚入れの時間などを考えれば21時ぐらいまでには届けなければならない」(配送事業者)。

 次にフローズン商品の配送は、基本的に1日1回だが季節によって配送頻度が違う。あるCVチェーンでは夏場は週7日つまり毎日1回の配送で、春と秋は週6日、冬は週3日だ。別のCVチェーンでも夏は週7日だが、春秋冬は週5日の配送になっている。フローズンの配送では1台のトラックが1日2回転(あるいは3回転)している。あるCVチェーンの場合には1回の配送にかかるドライバーの拘束時間が11時間ぐらいで、ドライバーが交代して1台のトラックが昼と夜(表裏)で稼働している。

 このようにフローズン商品の場合にも、時短営業になると納品時間帯や車両の回転効率に影響が出る。だが、一番課題を抱えているのがディリー商品の配送だ。ディリー商品には弁当やおにぎりなどの米飯とパンなど、20℃の温度帯で管理する商品。それに5℃の温度帯で管理するチルド商品がある。

 このディリー商品のうちチルド商品はどのCVチェーンも1日3回配送だが、米飯やパンなどの商品は3回配送のCVチェーンと4回配送するCVチェーンがある。1日4回配送のCVでは第1便を1-A便と1-B便の2回に分けている。このような違いはあるが、大まかにいうと第1便は深夜から早朝の配送、第2便は朝から午前中の配送、第3便が午後から夕方にかけての配送になっている。

 これらの配送時間帯から分かるのは、米飯やチルド商品は朝食用需要、昼食用需要、夕食用需要に合わせて配送していることである。出来立ての弁当やおにぎりなどを販売しようという狙いだ。実際、朝昼晩の食事の時間帯に応じてCV店舗での販売ピークは1日3回になっている。公取委の調査では、店舗の立地条件によって状況は異なるとしながらも、7時、8時が「朝のピーク」、12時、13時が「昼のピーク」、18時、19時が「夜のピーク」で、それ以外の時間帯は「通常業務」としている。

営業時間短縮の一番の課題は「朝のピーク」前の「仕込み時間」

 駅前店(東京近郊)が1店舗と、複数の郊外ロードサイド店(路面店)を経営しているあるオーナーが、午前(6時~12時)、午後(12時~18時)、夜(18時~24時)、深夜・早朝(0時~6時)という4つの時間帯に分けて、各店舗の平均的な売上高構成比を算出してくれた。それによると、立地条件で差がみられるのは深夜・早朝で、駅前店は1日の売上の3%程度しかない。だが路面店では深夜・早朝でも10%程度の売上構成となっている。午後と夜はいずれも30%ずつになっているが、午前は駅前店が37%、路面店が30%という売上構成比である。駅前店は最終電車から始発電車までの間はほとんど売上がない。だが駅前店は朝の通勤や通学時間帯の売上が多くなる。「1人当たりの客単価は下がるが、全体として朝食需要が大きい」ようだ。

 これは同オーナーのケースであり、店舗の立地条件によって様々に異なることは当然である。しかし、CVの時短営業を物流との関連でみると一番の課題がここに集約されているといえる。

 7時、8時の「朝のピーク」に備えるには、それ以前に商品を受け取り、棚入れを済ませておかなければならないからだ。先述のように売上高が最も少ない時間帯が4時台という回答が14.0%ある。だが、5時台になると1.1%、6時台では1%以下に下がる。つまり、少なくとも6時前にはスタンバイしていないと販売機会喪失を招きかねない。

 先のCVオーナーのケースでは、第1便で届けられた商品の棚入れに要する作業時間は2人で約1時間。それに対して第2便と第3便の棚入れは、どちらも2人で15分ぐらいである。この棚入れ作業時間の差は、「第2便、第3便は補充発注が多いから」という。

 いずれにしても採算性の低い時間帯に、届けられた商品を受け取り、棚入れ作業をしておかなければならない。6時までに完了するには5時から棚入れ作業が必要だ。どんなに遅くても7時までには済ませなければならないが、すると6時台に棚入れをすることになる。だが、公取委の調査では、「人手不足を感じる時間帯」は6時台が23.9%で最も高くなっている。

 このように見てくると、商品の受け取りも含めて4時から5時には店舗に誰かがいなければならないことになる。飲食店にたとえると、11時からの開店ならその前に仕込みの時間が必要だ。中には早朝に市場に足を運び、自分の眼で見てネタを仕入れる店主もいるだろう。だが、飲食店ではこれら仕込みの時間に暖簾を出していない。つまり仕込みの時間帯は働いていても売上がゼロである。それに対してCVでは「朝のピーク」に備える「仕込みの時間帯」も開店しているので僅かでも売上がある。だが、その時間帯だけを見れば採算が取れていない。この「仕込みの時間」をオーナーがどう判断するのか。さらに、そこに人手不足という要素が加わってくる。

 このような時短営業の課題を解決する方策の一つに、ドライバーがカギを預かり無人の店舗に納品しておく方法がある。そのためにはバックヤードの整備が必要な店舗もあるが、オーナーも配送事業者も共通して指摘するのは「食品の場合にはリスクが伴う」という点だ。

 このようなリスクを軽減する方策の一つとして、官民学金で開発に取り組んでいるコンテナがある。3温度帯の温度管理が可能で商品を外気に触れさせずに輸配送できるキャスター付きの小型コンテナだ。セキュリティ面ではGPSで追跡管理もできる。まだ軽量化などの改良が必要だが、コンテナの1面を透明にして、そのまま商品棚としても使える。あらかじめ商品を陳列したコンテナで、カセット式に前日のコンテナと差し替えができる。早朝配達のディリー商品を無人店舗に納品ができ、「朝のピーク」前の店内作業の時間短縮が図れる。だが、店内の作業時間が短縮できる分、物流センターでは膨大な棚入れ(コンテナへの詰め込み)作業が必要になるというトレードオフの関係もある。

 さらにコンテナでは配送車両の積載効率も下がることになる。また、24時間営業店と時短営業店が同一コースに併存すると配送効率が低下する。さらに商品の受発注や、仕入先から物流センターへの納入時間の変更など、物流の仕組み全体の見直しが必要になってくる。

 そのような諸課題はあっても、CVの営業時間短縮は避けて通れない。人口減少地域における複数のCVチェーンによる共同配送なども含めて、物流流面からの検討が急がれる。

物流ジャーナリスト

茨城県常総市(旧水海道市)生まれ 物流分野を専門に取材・執筆・講演などを行う。会員制情報誌『M Report』を1997年から毎月発行。物流業界向け各種媒体(新聞・雑誌・Web)に連載し、著書も多数。日本物流学会会員。

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