「雲のすみか」の意味を持つ、インド北東部のメーガーラヤ州に、世界一雨に降られるチェラプンジ(現地の言葉でソラ)という場所があります。この土地の年間降水量は12,000ミリと、パリの20倍、東京の8倍にも相当します。

16日(木)から17日(金)にかけて、チェラプンジで記録的な量の雨が降りました。24時間に降った雨の量は972ミリで、これは6月に降った雨としては、122年続く観測史上3番目に多かったといいます。これまでの記録は1995年6月16日の1,563ミリ、2番目は1956年5月6日の974ミリでした。

972ミリの雨とはどれほどの量でしょうか。これはなんと、畳1枚にドラム缶7本分の水をぶちまけたのと同じ量です。これがたった24時間で降ったのだからたまげます。

また15日(水)からの3日間では、2,456ミリも降ったようで、これはドラム缶18個分が空から落ちてきたことになります。いくら雨の多いチェラプンジでも、数年来で最悪とも言われる土砂災害や洪水が起きているもようです。

大雨の季節『モンスーン』

インド気象局のモンスーン開始日の図に筆者加筆
インド気象局のモンスーン開始日の図に筆者加筆

今、インドは雨の季節、いわゆる「南西モンスーン」の時期に突入しています。上の図は例年のモンスーン入りの日(赤線)と、今年のモンスーン入りの日(青線)を示しています。

北東部のチェラプンジは、6月上旬に雨季に入りました。南西風に乗って海からの湿った空が吹き付けるので大雨が降るのです。

インド気象局は、現在インド北東部に大雨警報を発令しており、少なくても18日(土)までは危険な大雨が続く見込みです。

チェラプンジの記録

チェラプンジには、2つの世界の大雨記録があります。

1つがひと月の雨量で、1861年7月に9,300ミリの雨が降ったことがありました。2つ目が12か月間の雨量で、1860年8月1日からの1年間に26,461ミリが記録されました。東京の年間降水量の17倍です。

でもなぜこれほど雨が多いのでしょうか。

チェラプンジは、南に温かなベンガル湾が広がり、北には8,000メートル級のヒマラヤ山脈がそびえています。南西モンスーンで南から湿った空気が吹き付けると、それが山脈に当たり雨雲を作り、ふもとのチェラプンジにことごとく落としていくというわけです。

雨が多すぎて室内にも苔が生え、洋服を乾かすために家の中で煙をたいたりするのだそうです。また川の濁流はすぐに橋を壊してしまいます。そのため、強靭な根を張るゴムの木で作ったユニークな自然の橋、その名も「生きている橋」が作られています。

世にも珍しい「生きている橋」
世にも珍しい「生きている橋」写真:イメージマート

チェラプンジのパラドクス

しかしこんな雨の多すぎるチェラプンジは、しばしば水不足に見舞われます。チェラプンジを「世界一雨の多い砂漠(wettest desert)」などと呼ぶ人もいるほどです。

なぜでしょうか。それは、そもそも大雨で草木が流されているうえ、森林伐採の影響もあって、土壌が水を貯めることができず、すぐに水が流れ去ってしまうためです。特に冬季は乾いた「北東モンスーン」が吹き付け雨もほとんど降らないため、住民は長距離を歩いて飲み水を汲みに行くのだといいます。

まさに、『過ぎたるはなお及ばざるが如し』を地でいっているような場所なのです。