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次期政権の課題は、フリーランスのセーフティーネット

森信茂樹東京財団政策研究所研究主幹 
ウーバーイーツの配達人はフリーランス(提供:MORIKEN/イメージマート)

コロナ禍への対応として、個人や法人の事業者に対して、それぞれ最大100万円、200万円の持続化給付金制度が始まっている。個人事業者の受給要件は、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少していることで、確定申告書の事業所得の前年収入を基礎に判断される。しかしフリーランスの中には給与所得、雑所得で申告している者が相当数いることが判明し適用拡大となった。またそもそも(所得がありながら)申告していない者が相当数存在する実態も判明した。

フリーランスは、自分の仕事のスタイルで働くことができ、働く時間や場所を自由に選べるなどの利点がある働き方で、インターネットの発達で様々な仲介プラットフォームもできて急速に拡大している。

一方で、雇用者のような休業手当や傷病手当などのセーフティーネットが完備されていない点が、コロナ禍でクローズアップされた。コロナ禍というのは、個人が事業をしていく上では想定していないリスクといえよう。そうであるなら、社会や国家が、リスクをカバーする「セーフティーネット」を考えていくことは必要なことである。

世界を見渡すと、欧米を中心に、一定規模以上の企業・プラットフォーマーの下で事業を請負うフリーランスについて、雇用者と同様に扱い、企業・プラットフォーマーに負担を求めつつフティーネットを拡充するという大きな流れがある。

米国カリフォルニア州の州法AB5(Assembly Bill5)では、労働者と個人事業者の認定基準(判断基準)を法定化して、その立証責任を発注者側に課すことによりギグ・ワーカーやフリーランスの保護を広げた。

ウーバーイーツのビジネスモデルとみると、配達人はウーバーイーツの提供する仲介機能で店と直接契約する。働きたくなければ契約しなければいい、ということなので、労働法制上は個人事業者となる。 ウーバーイーツは単なる仲介プラットフォーマーということである。

しかし配達人の中には、「働かなくては生きていけない」ということで、事業者の指示の下で「雇用者と同じような従属的な働き方」を強いられている者も相当数いると考えられる。特にコロナ禍の下ではこの傾向が強まっている。

またこのようなビジネスモデルは、プラットフォーマー側が、社会保険料負担などを節約するため、本来なら雇用者とすべきところを個人事業者に転換することによって、法制度による規制の穴をついた契約といえる側面がある。

社会的責任を果たすという見地から、彼らに一定の負担(雇用主負担分程度)や責任を求めていくという考え方は決しておかしくはない。欧米でその方向で議論が進んでいることは前述した。

ただプラットフォーマーに一定の負担を求めることにより、フリーランスが働きづらくなるようなことがあってもならないので、線引きは慎重に行う必要がある。

またフリーランスのセーフティーネットを完備していくためには、彼らの所得や労働実態を正確に把握する必要がある。また冒頭のような不正受給を防ぐという見地からも、マイナンバー制度の活用がカギを握るといえよう。

コロナ禍を乗り越えて安心社会を建設していくためには、新たな働き方を支えるフリーランス、ギグ・ワーカーのセーフティーネットを整備することが重要で、全世代型社会保障検討会議の中間報告にも明記されている。安倍政権の次の政権が引き継ぐ大きな課題だ。

東京財団政策研究所研究主幹 

1950年生まれ。法学博士。1973年京都大学卒業後大蔵省入省。主に税制分野を経験。その間ソ連、米国、英国に勤務。大阪大学、東京大学、プリンストン大学で教鞭をとり、財務総合政策研究所長を経て退官。東京財団政策研究所で「税・社会保障調査会」を主宰。(https://www.tkfd.or.jp/search/?freeword=%E4%BA%A4%E5%B7%AE%E7%82%B9)。(一社)ジャパン・タックス・インスティチュートを運営。著書『日本の税制 どこが問題か』(岩波書店)、『税で日本はよみがえる』(日経新聞出版)、『デジタル経済と税』(同)。デジタル庁、経産省等の有識者会議に参加

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