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どのチームに春の吉報が届くか?  24日にセンバツ選考会

森本栄浩毎日放送アナウンサー
春の訪れを告げるセンバツ高校野球。その出場校発表が24日に迫った(筆者撮影)

 「駅伝」「バスケットボール」「ラグビー」「サッカー」そして「バレーボール」。年末年始は、高校スポーツで大いに盛り上がった。余韻さめやらぬ冬本番だというのに、もう、球春到来である。そう、センバツの出場校が決まるのだ。令和初めてのセンバツは、球数制限の導入もあって、文字通り「新時代の高校野球」の始まりとも言える。昨秋の成績からある程度の予想はつくが、昨年は大きな波乱もあった。今年もどんでん返しはあるのか?おさらいしてみたい。 

地区のあとの( )内は枠数。4月からの新学年で表記。

北海道(1) 白樺学園に初めての春

 夏のブロック分けで、北北海道勢としては久々の秋制覇となる白樺学園の初出場が確実。北海道大会では打線が活発だったが、神宮大会ではエース・片山楽生(3年)が奮起して4強入りに貢献した。

東北(2) 投手層厚い仙台育英

 決勝に進出した仙台育英(宮城)と鶴岡東(山形)で決まりそう。ともに、昨夏も甲子園で活躍していて、その勢いをセンバツでも発揮できるか。仙台育英は、夏も活躍した笹倉世凪(2年)と伊藤樹(2年)の左右の両輪が秋は不調。上級生の左腕・向坂優太郎(3年)がエース級の働きを見せた。万全の状態なら、投手陣は大会屈指だろう。41年ぶりの春となる鶴岡東は、夏からメンバーを一新した。夏の甲子園を経験した山路将太郎(3年)が、1番打者として、攻撃陣を引っ張る。準決勝が2試合ともワンサイドだったため、波乱の要素はない。

関東(4.5) 埼玉勢の5番手争い

 群馬開催で出場権を得た健大高崎が、県3位から躍進し関東王者に。神宮でも接戦を勝ち抜いて準優勝し、勝負強さを見せつけた。エースは長身左腕の下慎之介(3年)で、粘り強い投球で流れを引き寄せる。伝統の機動力も健在だ。山梨学院も、接戦でしぶとさを発揮して、一昨年の夏から4季連続の甲子園を確実にした。吉田洸二監督(50)の長男・健人さん(23)が部長として、今春からベンチで父をサポートする。高校日本代表の鵜沼魁斗(3年)ら、一発のある打者が並ぶ東海大相模(神奈川)は、機動力も含めた攻撃が看板。昨夏、崩壊した投手陣の整備が急務になる。桐生第一(群馬)は、新監督で初の大舞台。近年、やや低迷しているだけに、心機一転、躍進が期待される。ここまで関東の4強は揺るぎない。あとは、東京2番手との比較になる5番手だが、埼玉勢が争う。関東大会の試合内容は互角で、ここは、県の直接対決で勝っている花咲徳栄が、西武台を一歩リードか。徳栄は、大阪出身で、1年夏から中軸を打つ井上朋也(3年)のバットに注目したい。

東京(1.5) 勝ち試合を評価されれば帝京の逆転も

 新チームの始動が早く、秋に無類の強さを発揮する国士舘が2年連続のセンバツを確実にしている。都大会では、186センチの長身右腕・中西健登(3年)が、準決勝、決勝を連続完封する離れ業を演じた。その国士舘に決勝で完敗した帝京は、関東5番手との比較でやや劣る。ただし、決勝までの過程を検証すると、関東一、日大三、創価を破っていて、強豪集中ゾーンを勝ち抜いたことがわかる。このあたりが評価されれば、逆転もないわけではない。昨年は、横浜(神奈川)が戦力評価で浮上した。この「抱き合わせ枠」は、波乱の可能性がある。

東海(3) 「神宮枠」を静岡勢で争う

 従来の2枠なら、決勝進出の中京大中京(愛知)と県岐阜商で決まりだが、中京が神宮大会を制して、1枠増となった。恩恵を受けるのは、ともに準決勝で散った静岡勢のいずれかになる。東海大会の内容だけなら、加藤学園に分があるが、県の直接対決では藤枝明誠がサヨナラ勝ちしていて、予断を許さない。納得のいく説明が求められるし、選ばれたチームは、静岡勢の代表として全力で頑張ってもらいたい。剛腕・高橋宏斗(3年)を擁する中京は神宮の王者であり、実力があることは間違いない。県岐阜商は、OBの鍛治舎巧監督(68)が、前任の秀岳館(熊本)同様、多彩な投手陣と思い切りのいい攻撃で、新風を吹き込むだろう。両校とも、新調ユニフォームで登場する。

北信越(2) またも石川勢が独占か

 ここ数年の傾向通り、昨秋も石川勢が上位を占めた。星稜の強さは言うまでもない。注目は、捕手に転向した内山壮真(3年=主将)だ。投手陣も経験豊富ではあるが、今チームには奥川恭伸(ヤクルト)のような絶対的エースはおらず、いかにディフェンスをまとめるか。2番手の日本航空石川は、県と北信越の決勝で、いずれも星稜に大敗した。北信越準決勝で星稜に敗れた佐久長聖(長野)がもう少し善戦していれば逆転の目もあったが、コールド負けでは、強く推すことはできない。

近畿(6) 「大阪2強」など強豪ズラリ

 近年の高校球界を牽引する大阪桐蔭履正社の「大阪2強」が揃い踏みする。府の直接対決(決勝)では、延長にもつれ込む死闘となり、大阪桐蔭が勝った。大阪桐蔭は、投打に能力の高い選手が揃っている。個々の能力だけなら、大会随一。昨年は春夏ともに出場を逃し、今春、そのうっ憤を晴らす。一方の履正社は、夏の全国制覇に貢献した岩崎峻典(3年)がエースとして君臨する。リードする捕手の関本勇輔(3年=主将)は、「同じ相手に二度、負けるわけにはいかない」と、聖地でのリベンジを誓った。2強が甲子園で対戦するとすれば、センバツの決勝しかない。3年ぶりの大阪決戦が実現するか。近畿大会でこの2強を倒したのが、古豪・天理(奈良)だ。県大会ではライバル・智弁学園にコールド負けしたが、短期間で立て直した。伝統の強打線は健在で、大阪桐蔭を抑えた長身右腕の達孝太(2年)ら、ポテンシャルの高い選手が多い。智弁学園は、1年から4番を打つ前川右京(2年)に注目。飛距離は群を抜き、先輩の岡本和真(巨人)の高校時代と比較しても遜色ない。4強に迫る力を持つのが、明石商(兵庫)。エース・中森俊介(3年)が4季連続なら、主砲・来田涼斗(3年=主将)も甲子園皆勤となる。両ドラフト候補から目が離せない。問題は、最後の1枠だ。順当なら智弁和歌山で落ち着くが、京滋ゼロはバランスが悪い。智弁和歌山に迫るのは、京都翔英。多彩な投手継投で履正社に食い下がったが、8回に3ランを浴びてコールド負けした。智弁和歌山の懸念材料は、同じ8イニングで17失点したことである。

中国(2.5) 広島新庄が3番手に浮上か

 倉敷商(岡山)が、県大会2位から一気に頂点へ。OBの梶山和洋監督(32)が、就任早々、結果を出した。神宮大会では初戦で敗れたが延長タイブレークの熱戦を演じていて、自信を深めたはず。鳥取城北が、地元開催で準優勝。集中打で創志学園(岡山)を粉砕した攻撃力が甲子園でも爆発するか。3番手に浮上するのは、広島新庄か。倉敷商に延長11回の激闘で惜敗したが、戦力、試合内容とも見劣りしない。後述する四国との比較でも優位な情勢だ。

四国(2.5) 準決勝敗退の高知2校は圏外か

 明徳義塾(高知)が段違いの強さ。神宮でも、因縁の星稜に勝つなど、話題には事欠かない。経験豊富な左腕・新地智也(3年)の巧みな投球術が光る。神宮では、中京大中京に力負けしていて、本番でその反省を生かせるか。準優勝の尽誠学園(香川)は、意外にも18年ぶりのセンバツとなる。甲子園未経験の高知勢、高知中央と岡豊はいずれも準決勝でコールド大敗。いずれかが3番手になるだろうが、内容的には広島新庄と大きな開きがある。

九州(4) 大分勢が2年連続アベック

 明豊大分商の決勝になり、大分勢が2年連続アベック出場を確実にしている。ともに投手力が際立つ。明豊の左腕・若杉晟汰(3年=主将)は、九州大会こそ不調で打線に助けられたが、神宮では復調した。昨春の経験を生かしたい。大分商の川瀬堅斗(3年=主将)は、183センチの恵まれた体から繰り出される最速147キロの速球で力勝負を挑む。接戦を制して4強入りした創成館(長崎)は、伝統となりつつある多彩な投手陣を、堅守で支える。元プロ選手の佐々木誠監督(54)率いる鹿児島城西も選出圏内。春夏通じて初の大舞台が待っている。終盤の点の取り合いで明豊に惜敗した沖縄尚学も差はないが、九州はこれまでから4強で決まることが多い。準々決勝敗退組から、これを覆せる要素を見出すのは困難だ。

21世紀枠(3) 筆者が思う最近の傾向は?

 主催の毎日新聞で連載されていて、読者もこれを読まれることをお薦めする。この枠に限定した特別委員が、当日のプレゼンテーションをよりどころに選考する。筆者の経験から、いくつかの傾向を紹介したい。この枠は、過疎や部員不足などの「困難克服」型と、地域の伝統校で進学成績も優れた「文武両道」型に大別できる。選ばれる3校が、すべて同じタイプになることはまずない。また、近年は特に、戦力の裏付けのあるチームが有利だ。具体的には、地区大会に出て勝ち星を挙げていると、県外のチームに勝つ力を持っていることの証明になる。あとは、昨年の石岡一(茨城)のように、大会でも上位にランクされるような投手がいると、「見てみたい」と思う委員が推すことにつながる。今回の9校では、磐城(福島)の評判が高い。昨年の豪雨被害の中、東北大会で2勝した。夏の甲子園準優勝経験がある文武両道の名門で、観戦歴の長いファンなら誰でも知っている。2年連続で候補に挙がる平田(島根)は、地元の期待も大きいはずだ。伊香(滋賀)には、140キロの速球を投げる評判のエースがいる。高専初の甲子園をめざす近大高専(三重)は、異色の候補として、どのような評価を受けるか、特に注目している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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