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最後もやはり履正社と星稜の対決!  夏の甲子園決勝へ

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園決勝は履正社と星稜の対戦。両校はセンバツ初日に当たっている(筆者撮影)

 夏のフィナーレには、大会前から評判が高かった2校が勝ち残った。大会ナンバーワン右腕・奥川恭伸(3年)擁する星稜(石川)と、打線好調で、5試合連続二ケタ安打の履正社(大阪)だ。この両校はセンバツ開幕日の3月23日の第3試合で当たっていて、3-0で星稜が快勝している。あれから5か月。結末はいかに?

センバツでは奥川17三振完封

 まずは、その試合を簡単におさらいしておく。初回に、5番・山瀬慎之助(3年=主将)の適時打で先制した星稜は、奥川が6回まで履正社を1安打に封じる。7回には、星稜の3番・知田爽汰(2年)が適時打を放って奥川を援護すると、9回にも2番・有松和輝(3年)の適時三塁打で3点目。奥川は9回に、1死1、3塁のピンチを招いたが、履正社の4番・井上広大(3年)を投ゴロ併殺に仕留め、3安打完封を飾った。奥川は、130球で17三振を奪い、最速152キロをマークした。履正社の清水大成(3年)も8回を7安打2失点(自責1)と力投したが、打線が完全に沈黙した。

履正社は星稜戦を糧に打線強化

 履正社の岡田龍生監督(58)は、絶好調の打線について、「奥川君と当たって、トップレベルを肌で感じた。力負けした反省から、まずは体力をつけようとトレーニングに時間を割いた。コンパクトなスイングでも飛距離が出るようになった」と、春の敗戦が原点であることを強調した。1番打者として、今大会5試合連続初回安打と大活躍の桃谷惟吹(3年)は、春まで足を上げてタイミングを取っていたが、今夏は足をさほど上げず、ほぼノーステップで打っている。「奥川君と対戦して『これじゃ打てない』とわかった。速い球を打てるように修正した」と話し、初戦で霞ヶ浦(茨城)の148キロ右腕・鈴木寛人(3年)を、2回戦では津田学園(三重)の152キロ右腕・前佑囲斗(3年)を攻略した。今大会屈指の速球派右腕を打ち崩せたのも、奥川との対戦があったからこそだ。今大会猛威を振るっている履正社打線だが、春の苦い敗戦がなければここまで打てるようになっていたかどうか。そして、その試練を与えてくれた奥川が、再び、履正社の前に立ちはだかる。

星稜も奥川頼みから打線爆発で強力援護

 一方の星稜も、初戦は旭川大高(北北海道)に9安打しながら1-0の辛勝。次戦の立命館宇治(京都)にも14安打を浴びせたが、6得点と、安打の割に残塁の多さが目立っていた。球史に残る死闘となった智弁和歌山との3回戦も、タイブレークに突入する直前の12回を終わった段階で、智弁3安打、星稜は9安打だった。

星稜・奥川は、ここまで32回1/3を投げて10安打、45三振で失点1の自責点は0。「最後は笑顔で終わりたい」と必勝を誓った(筆者撮影)
星稜・奥川は、ここまで32回1/3を投げて10安打、45三振で失点1の自責点は0。「最後は笑顔で終わりたい」と必勝を誓った(筆者撮影)

 もう少し効率よく攻めていれば、奥川ら投手の負担も軽くなっていたのではと察するが、やはりこのチームは奥川あってのもの。抽選会の日、林和成監督(44)は、「奥川が投げると安心するのか、打つ方がなかなかうまくいかなくて」と冗談まじりに話していたが、その予言通り?3回戦までは完全に奥川頼みだった。ところが、智弁という大ヤマを一丸野球で越えると、準々決勝の仙台育英(宮城)戦からは、打線が大爆発。22安打17得点で奥川の完全休養に成功し、奥川が中2日で先発した中京学院大中京(岐阜)との準決勝も、3回まで毎回得点で、6点を援護(最終スコアは9-0)した。「春は打てなくて負けた(1-3で習志野=千葉に2回戦敗退)ので、バッティングには力を入れてやってきた。中軸が好調で、いい攻撃ができている」と林監督も満足そうに話す。奥川は準決勝を7回まで投げ、2安打10三振の87球。「点を取ってもらって、楽な気持ちで投げられた。山瀬と相談して、打たせていこうと」と、余裕を見せた。それでも、相手の強打者やマークしている選手にはギアを一段上げ、150キロ超を連発してねじ伏せたが、この試合で消耗したとは考えられない。

6月にも練習試合で星稜が勝つ

 公式戦では3月以来の対戦となるが、両校は6月上旬に星稜のグラウンドで練習試合を行い、4-3で星稜が勝っている。両エースが降板後、履正社が追いつき、星稜が4番・内山壮真(2年)の本塁打でサヨナラ勝ちした。センバツでの対戦から2か月半後のことで、8月22日の決勝戦までのちょうど中間期に当たる。センバツはスコア以上に星稜の完勝だったが、6月の対戦では、明らかに差は縮まっていた。そして準決勝のあと、奥川は、「(履正社は)春とは全く違うチームという印象を受けた。対応力が上がっている」と警戒を強めた。

決勝展望 履正社の桃谷が奥川を打つか

 履正社は、準決勝で、岩崎峻典(2年)が明石商(兵庫)相手に完投勝ちし、エースの清水を温存した。岡田監督は、「清水が休めたのは大きい。決勝ではエースの意地を見せて欲しい」と、万全の状態で大一番に送り出す。受けて立つ奥川は、「決勝ということを考えず、自分たちのやれることをやるだけ」と平静を装った。決勝という特別な舞台を考えれば、いくら好調の履正社打線をもってしても、今世代高校ナンバーワンの奥川から大量点は見込めない。奥川が本来の力を発揮することは間違いないからだ。

履正社の桃谷は、5試合連続初回安打。「初回に打つと相手にプレッシャーをかけられるし、見方も勢いがつく」と決勝でも打ちまくるつもりだ(筆者撮影)
履正社の桃谷は、5試合連続初回安打。「初回に打つと相手にプレッシャーをかけられるし、見方も勢いがつく」と決勝でも打ちまくるつもりだ(筆者撮影)

 カギを握るのは、清水の踏ん張りだ。6回まで3点以内で耐えられれば、履正社にもチャンスがある。また奥川は、履正社の1番打者、桃谷には、絶対に打たれてはいけない。桃谷が打つと、その瞬間、「いける」と選手全員が一気に自信を深める。桃谷は、「春より成長していると思うし、(決勝で)当たりたい気持ちがあった」と、奥川との対戦を心待ちにしている。初回の奥川対桃谷が、試合の行方を左右するような気がする。

この両校に始まって、この両校で終わる

 過去、センバツで2度の決勝進出も、龍谷大平安(京都)と、最大のライバル・大阪桐蔭に敗れて、いまだ全国優勝に手が届いていない履正社。24年前、あと一歩で選手権優勝を逃した星稜は、石川勢の、北陸勢の悲願である真紅の大優勝旗に手の届くところまでやってきた。今年の高校野球は、春まだ浅いセンバツ開幕日にこの両校がぶつかって、夏の終わりに、この両校による熱戦でフィナーレを迎える。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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