戦国甲子園 優勝候補は?  49代表校出揃う

来月6日開幕の夏の甲子園に出場する49校が決定。戦国大会の様相だ(筆者撮影)

 波乱の多かった地方大会も30日、最後の2大会が終わり、出場49校が出揃った。センバツ優勝の東邦(愛知)を始め、秋の神宮大会優勝の札幌大谷(南北海道)が早々に敗退。連覇を狙った大阪桐蔭、出場すれば優勝候補に挙げられるはずの興南(沖縄)や横浜(神奈川)、広陵(広島)などが終盤戦で敗退。優勝争いを左右する強豪が出場を逃し、混戦模様に拍車がかかる。

広島商や米子東、伝統校復活

 出場校を見渡してまず目につくのが、伝統校の復活だ。15年ぶり出場を決めた広島商は、近年、広陵や広島新庄、如水館などの強豪私学に甲子園への道を阻まれてきたが、ようやく、伝統の「精神野球」が復活した。同校は昭和最後となった70回大会で優勝したが、夏に限れば平成は未勝利。令和最初の大会で白星を挙げられるか。高松商(香川)は、第1回センバツ優勝校で春夏連続出場になるが、夏の出場は23年ぶり。米子東(鳥取)も春に続く出場になるが、夏は28年ぶりの登場だ。これら3校は、大正時代から甲子園で活躍していて、令和最初の大会で、久しぶりに姿を見せるのは、因縁めいている。また、4年ぶりの静岡も大正時代から活躍する名門で、近年は、往時の勢いを取り戻しつつあり、甲子園での上位進出も珍しくない。

秋田中央は45年ぶり、公立14校

 今大会、最も長いブランクを解消して出場するのは、秋田中央で、45年ぶり。当時は秋田市立で、センバツ出場はなく、現在は県立に移管している。昨年の金足農に続く「公立旋風」が期待される。連続組では、戦後最長を更新中だった聖光学院(福島)が、苦戦必至の前評判を覆す強さで、13年連続の金字塔。作新学院(栃木)も9年連続で代表の座を射止めた。初出場はわずかに3校で、うち春夏通じて初の甲子園は、飯山(長野)と(愛知)の2校だけ。飯山は、飯山市にあった3校を統合して誕生した新鋭校で、スポーツ科学科(体育科)がある。誉は、かつて尾関学園として開校し、10年前に現校名になった。愛知大会で愛工大名電、中京大中京を破っていて、侮れない存在だ。ちなみに昨年は3校が甲子園デビューだった。しかし、公立は14校で、この2年の8校を大きく上回り、「私学全盛」の流れに待ったをかけた。残る初出場の富島(宮崎)は、昨年のセンバツに初出場したばかりで、短期間で力をつけた。

佐々木の決勝回避について

 さて、今年の3年生世代は、投手に逸材が集中している。中でもドラフト1位指名が確実視される大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希は、甲子園を懸けた決勝に出場することなく、35年ぶり甲子園は夢と消えた。その起用法をめぐっては賛否両論あるが、選手のことを一番知っているのは監督であり、監督が決めたことに対して矛先を向けることはしたくない。しかし、試合後のインタビューなどを見ると、佐々木を始め、選手たちとの間に、真の信頼関係があったかは、疑問が残る。高校野球は、全国3700余校すべてのチームに、甲子園という明確な目標がある。その目標が、手の届くところにありながら、チームとして全力を尽くさなかった(敢えてそう言う)ことは、選手たちを後悔させることにならないか。代表になった花巻東は全国でも有数の強豪であり、佐々木がベストピッチをしてやっと対等に渡り合える力関係。もし、故障の恐れがあると感じて登板回避したとしても、彼は4番打者でもある。打席に立つことはできただろう。筆者が全力を尽くさなかったと言う根拠はここにある。

奥川が「ビッグ4」で唯一見参

 あとは、甲子園でもおなじみの横浜の153キロ左腕・及川雅貴と、創志学園(岡山)の154キロ右腕・西純矢。いずれも、地方大会の終盤で敗れたが、この大敵を倒したチームが甲子園に出ない(横浜を破ったのは相模原、創志に勝ったのは倉敷商)とは、皮肉としか言いようがない。

星稜・奥川は、「ビッグ4」で唯一、甲子園にやってくる。昨年から日本代表のユニフォームに袖を通し、高校生活の集大成となる今大会で、石川勢初の頂点を狙う(筆者撮影)
星稜・奥川は、「ビッグ4」で唯一、甲子園にやってくる。昨年から日本代表のユニフォームに袖を通し、高校生活の集大成となる今大会で、石川勢初の頂点を狙う(筆者撮影)

 これら剛腕と肩を並べるのが、「高校ビッグ4」で唯一、甲子園にたどりついた星稜(石川)の奥川恭伸だ。最速は158キロまで伸び、ビッグ4では経験値、完成度で群を抜く。今大会最注目選手は、奥川で間違いない。センバツでも優勝候補筆頭に挙げられ、初戦で履正社(大阪)に快勝したが、2回戦で習志野(千葉)に逆転負けを喫した。その際に「サイン盗み疑惑騒動」もあって余波が心配されたが、林和成監督(44)も復帰し、万全で甲子園に乗り込める。この夏も優勝候補の一角であることに変わりはない。

今大会の優勝候補は?

 今大会を「戦国」と形容したが、それは昨年までの大阪桐蔭のような絶対的な力を持つチームが存在しないだけで、多くの有力校が激戦を勝ち抜いている。秋からの実績や今夏の地方大会の戦いぶりから総合的に判断して、星稜東海大相模(神奈川)、智弁和歌山履正社を4強としておく。さらに今大会は、近畿勢が粒ぞろいだ。春の近畿王者の近江(滋賀)やセンバツ4強の明石商(兵庫)も優勝戦線に加わる。センバツ準優勝の習志野は、さらにたくましくなって戻ってくるし、一昨年王者の花咲徳栄(埼玉)もハイレベルでまとまる。また秋の地区大会優勝の筑陽学園(福岡)や八戸学院光星(青森)、高松商も力を伸ばしていて、一気に勝ち上がる力を秘めている。

バッテリーの星稜、強打の相模と智弁和歌山

 星稜は、奥川ー山瀬慎之助(3年=主将)のバッテリーを中心に、失点を計算できる。課題だった打線も、石川決勝で満塁弾を放った東海林航介(3年)や4番・内山壮真(2年)らが力をつけ、エースを援護する。今度こそ頂点まで上りつめ、春の悔しさを晴らしたい。神奈川決勝で24得点した東海大相模は、打棒で4年ぶりの全国制覇を狙う。決勝2アーチの4番・山村崇嘉ら2年生の強打者が勢いをもたらし、激戦区を圧勝した。接戦でどこまで我慢できるかがポイントになる。センバツ8強の智弁和歌山は、1年生の新戦力も加わり、主砲の黒川史陽(3年=主将)を1番に置く「超攻撃型」オーダー。中谷仁監督(40)も、「日本一をめざす」と自信をのぞかせている。履正社は、ライバル・大阪桐蔭と対戦することなく、春夏連続出場を決めた。同校にとって春夏連続が初めてとは意外だが、それだけ大阪を勝ち抜くのは大変だということで、井上広大(3年)を軸にした打線は、パワーアップしている。

手堅い明石商、近江はバランス良く

 明石商は、兵庫決勝で追い詰められたが9回に底力を発揮して3大会連続の甲子園をつかんだ。最速149キロのエース・中森俊介(2年)をバックが盛り立て、小技を駆使した手堅い野球で接戦をものにする。

近江の住谷は昨夏の打棒が健在で、さらにパワーアップ。滋賀大会決勝でも適時打を放ち、実力を見せつけた(筆者撮影)
近江の住谷は昨夏の打棒が健在で、さらにパワーアップ。滋賀大会決勝でも適時打を放ち、実力を見せつけた(筆者撮影)

 近江は、林優樹(3年)-有馬諒(3年=主将)の強力バッテリーと、昨夏の甲子園で史上最高打率.769をマークした住谷湧也(3年)を中心にした打線のバランスがいい。星稜とともに、県勢初の甲子園優勝のチャンスだ。近畿勢は、智弁学園(奈良)が、1年生の左右投手で春から一気に力を伸ばし、勢いがつくと面白い。失点の多いのが気にかかる。混戦の京都を勝ち抜いた立命館宇治は、センバツ出場の福知山成美、龍谷大平安を連破していて、6度目の甲子園(春3回)で初勝利を狙う。組み合わせに大きく左右されるが、うまくバラければ8強の半分を近畿勢が占めるくらい、力のあるチームが揃った。

夏に強い習志野、春夏連続にアドバンテージ

 センバツ準優勝の習志野は、伝統的に夏に強い。

習志野の飯塚は主に救援でマウンドに。相手に傾きかけた流れを断ち切り、打線の援護を待つ。夏も活躍必至だ(筆者撮影)
習志野の飯塚は主に救援でマウンドに。相手に傾きかけた流れを断ち切り、打線の援護を待つ。夏も活躍必至だ(筆者撮影)

 速球派の飯塚脩人(3年)が150キロまで球速を伸ばし、相手の打線を圧倒する。トップの根本翔吾(3年)が出塁すると、打線が活気づく。激戦・埼玉でトップを走る花咲徳栄は、一昨年の全国優勝校。打線が勢いづくと止まらず、投手陣の不安をカバーする。筑陽学園は、長身エースの西舘昂汰(3年)の安定感が増し、春夏連続出場を果たした。八戸学院光星は、徳島出身の武岡龍世遊撃手(3年=主将)が、先輩の「坂本(巨人)二世」の評判通りの活躍で、こちらも春夏連続。伝統の高松商は、経験豊富な左腕・香川卓摩(3年)に注目だ。そのほか、強打・野村健太(3年)の山梨学院や、好投手・前佑囲斗(まえ・ゆいと=3年)の津田学園(三重)も春の経験が生きそうだし、米子東は春の初戦で敗れていて、雪辱を狙う。春夏連続組は、秋からチーム力があり、さらに伸びたことで連続出場につながった。甲子園は特別な舞台。経験は何にも勝るアドバンテージになる。