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東海大相模8強へ   センバツ後半戦展望

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツは36校が出揃い、後半戦へ。大阪桐蔭は連覇へ好スタート(筆者撮影)

 1回戦が4試合あり、この勝者が戦う2回戦の日程がやや変則だったため、すでに2試合目を戦っているチームがある一方、7日目にようやく初戦という高校もある。抽選会で決まったトーナメントで決勝までを行うセンバツは、初戦の登場が遅いチームが日程的に不利になる。そのあたりの配慮で、試合日程が過密にならないようにした。比較的波乱の少なかった前半戦をふり返ってみたい。

明徳が最も苦戦

 初戦で最も注目された明徳義塾(高知)と中央学院(千葉)の秋の神宮大会の再戦は、中央学院がリベンジ目前の9回2死から明徳が粘り、安打と死球で4番の谷合悠斗(3年)に回した。それまで中央学院の大谷拓海(3年)のスライダーに翻弄されていたが、最後に甘く入った高めの直球をバックスクリーンに運んだ。ベテラン・馬淵史郎監督(62)も思わず部長と抱き合う劇的弾で死地からよみがえった。エース市川悠太(3年)は、球速は出ていたが、終盤、単調になったところでつかまった。この強運を次に生かしたい。

大阪桐蔭圧勝 智弁和歌山はエース次第

 連覇を狙う大阪桐蔭は伊万里(佐賀)に完勝した。すでに詳報しているので重複は避けるが、次戦の明秀日立(茨城)は投打に力があり、苦戦する可能性もある。

智弁和歌山は初戦でマウンドに上がらなかった平田の状態が気になる(筆者撮影)
智弁和歌山は初戦でマウンドに上がらなかった平田の状態が気になる(筆者撮影)

 そのほかの有力校では、智弁和歌山も富山商のエースを打ちあぐんだが、控え投手の活躍で振り切った。大会直前に胃腸炎で休養したエース平田龍輝(3年)の状態が気にかかる。神宮大会で大阪桐蔭を破った創成館(長崎)は下関国際(山口)との接戦を制した。主将の峯圭汰(3年)を1番に置いて初回に先制できたのが大きかった。まだ登板していない投手も3人いて、今後、どう使い回していくか注目したい。

東海大相模8強一番乗り

 初戦不戦で、勝ち上がってきた聖光学院(福島)との2回戦に圧勝した東海大相模(神奈川)は、3回戦最初の試合で静岡と対戦。2回に7番渡辺健士郎(3年)の2ランで先制すると、渡辺は適時打に犠飛と大活躍し、8-1で快勝して8強一番乗りとなった。渡辺はけが人による直前のメンバー変更で入った選手。2試合で4人の投手を登板させた門馬敬治監督(48)は、「相手よりウチの投手の状態」と2試合を消耗なく勝ち上がって準々決勝を見据えた。

東邦敗退 石川、滋賀2校進撃

 意外だったのは東邦(愛知)。大型チームと評判だったが、花巻東(岩手)の変則左腕・田中大樹(3年)にタイミングが合わず、終盤まで打ちあぐんだ。大型チームの脆さと花巻東の試合巧者ぶりが勝敗を分けた。中国勢が初戦ですべて敗れ、四国、九州勢も苦戦が続いている。一方で近畿勢は一般枠6校が揃って初戦を突破するなど好調だ。複数校出場では、3校出場の滋賀が、6日目に彦根東、近江と続けて勝ち、面目を保った。24年ぶりの石川は2校進撃。神奈川と高知は1校突破。52年ぶり2校の宮崎は両校とも敗れ、明暗が分かれた。

21世紀枠は持ち味発揮

 21世紀枠3校は去年に続いて3校とも初戦敗退となった。

59年ぶりにセンバツに姿を見せた膳所。初勝利はならなかったが、大胆なポジショニングなど、甲子園のファンに強烈な印象を残した(筆者撮影)
59年ぶりにセンバツに姿を見せた膳所。初勝利はならなかったが、大胆なポジショニングなど、甲子園のファンに強烈な印象を残した(筆者撮影)

 膳所(滋賀)は、綿密なデータを駆使した大胆なシフトで強打の日本航空石川と序盤は互角に渡り合った。中盤以降、守備位置は正確だったが外野手の守備力が打球についていけず失点。8回には心身ともに消耗し大差をつけられたが、目の肥えたファンを楽しませる野球をやりきり、21世紀枠選出の意義を証明してみせた。由利工(秋田)は直前の練習試合で報徳学園(兵庫)に勝ち、甲子園練習でも軽快な動きを見せていた。エース佐藤亜蓮(3年)は日大三(東京)に12安打されながらも5失点でしのぎ、一般枠出場校と遜色ない試合内容だった。この両校に不足していたのは打力、攻撃力で、立ち上がりから強豪相手に自分たちの野球で立ち向かったのは好感が持てる。伊万里(佐賀)は大阪桐蔭のプレッシャーに立ち上がりから何もさせてもらえず、あっという間に大差をつけられた。それでも控え投手が出てきてからは2点を返し、終盤だけで5安打を集中した。最後まで諦めない敢闘精神は立派だった。逞しくなった姿で夏に戻ってくることを願う。

3回戦は熱戦必至

 甲子園では2戦目以降に本来の実力が出る。東海大相模と静岡は意外な大差になったが、残る3回戦7試合は熱戦が期待できる。航空石川と明徳は、航空の投手陣が踏ん張れれば勝機が生まれる。智弁和歌山と国学院栃木は、国栃が3投手の継投になる。とりわけ左の2枚がどこまで粘れるか。智弁和歌山の平田の出来にも注目したい。智弁学園(奈良)と創成館は、智弁の投手の出来がポイント。創成館は初戦同様、立ち上がりに先制して得意の継投で逃げ切りたい。大阪桐蔭と明秀日立は好カード。初出場ながら2試合目に本来の力を発揮した明秀は、気分的に戦いやすい。桐蔭は打ち合いの展開は避けたいところだ。根尾昂(3年)の登板があるか。花巻東と彦根東は5年前の夏以来の対戦。このときは花巻東の圧勝に終わったが、今回はさほど力の差がない。彦根東の増居翔太(3年)は昨夏より成長している。乙訓(京都)と三重は、昨年8月22日の練習試合で三重が2試合とも完勝している。初戦快勝で勢いのある乙訓が、好調の川畑大地(3年)に期待をかける。近江と星稜(石川)は、近江の打線が2回戦のような単打戦法に徹すれば、星稜の奥川恭伸(2年)を攻略できるか。2回戦で登板がなかった近江の右の救援投手も出番があるか。戦力もさることながら、ここからはチーム状態も優勝に直結する。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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