裸のフィギュア役の衝撃デビューから10年の佐々木心音。今回のラブシーンで少し緊張した理由とは？
石井隆、瀬々敬久ら、いわゆる鬼才と呼ばれる監督たちのミューズとなってヒロインを務めてきた、佐々木心音。
近年では「娼年」や「愚か者のブルース」など、バイプレイヤーとしても確かな存在感を放つ彼女だが、今秋公開となる２本の主演映画「道で拾った女」と「クオリア」でみせる姿は、「演技者として新たに覚醒して、次なる領域に入ったのではないか」と思わせる。
それほど何かを予見させる女優・佐々木心音がそこにいる。
鮮烈な印象を残した2013年の「フィギュアなあなた」のドール役から本格的に女優のキャリアをスタートさせて約10年。新たな飛躍を予感させる彼女に「道で拾った女」と「クオリア」の両主演作について訊くインタビュー。
まずはいまおかしんじ監督と初のタッグを組んだ「道で拾った女」について訊く。全七回。
今回ほど狭い空間での「濡れ場」はなかったかも
前回（第五回はこちら）は、のぞみと竜平の愛のある性愛シーンについて語ってくれた佐々木。
ただ、今回の「濡れ場」の撮影は、かなり大変だったそうだ。
「もう見ていただければわかると思うんですけど、トラックドライバーの竜平の愛車、つまりトラックの中でのシーンだったので狭い狭い（笑）。
わたしと浜田（学）さんがいて、そこにカメラが入るともう動ける余地はほとんどないんですよ。
シーンによっては『人間の身体ってここまで反れるのかとか、この角度まで曲がるのかとか』とんでもない体勢になっていました。
これまでの経験から言わせていただくと、濡れ場は、圧倒的に男性の俳優さんの方が大変なんです。
ほとんどの場合、やはり女優さんが中心に映る。
そのためには、いい角度で女優さんがカメラに収まるようにしないといけない。
それをリードしてフォローしていかないといけないのが男性の俳優さんたち。
その中では、さっきいったようにかなり無理な体勢になったり、自分が映らないよう窮屈な状態になったりしないといけない。
縁の下の力持ち的存在になって、カメラマンの要求に応えていかないといけない。
だから、頑張ってわたしの下敷きになってくれた浜田さんは大変だったろうなと思います。
しかも、今回は狭かったですから、そうとう大変だった気がします。
笑っちゃいけないんですけど、『浜田さん、あんな体勢になっているけど、大丈夫かな？』みたいなときありましたから。
あと、ちょっと余談になりますけど、最後にトラックの外に出てのラブシーンがありますよね。
あのときの開放感といったなかったですね。
身体ってこんなに自由に動けるんだと思いました」
今回の少し緊張した理由は？
これまで「濡れ場」はいろいろと経験してきたが、今回は少し緊張したという。
「ストリッパーの役などでヌードになる機会はあったんですけど、相手がいて絡む『濡れ場』の撮影はけっこう久々で少しブランクがあったんです。そのせいか、珍しくちょっと緊張する自分がいました。
ひとり裸になってカメラの前に立つのと、人を相手にしてというのは全然違う。
相手があってのことなので、独りよがりになってはいけない。
きちんと呼吸と合わせないとお芝居が成立しない。
そういうラブシーンが久々だったので、、珍しくちょっと緊張しましたね。
『あっ、わたしちょっと緊張しているかも』と思いながら、演じている自分がいました。
そのちょっと緊張したこともいいエッセンスになって、愛の感じられる濡れ場になったかなと思います」
印象的な置手紙の朗読シーンについて
もうひとつシーンで言うと、のぞみは家を出るときに置手紙をしていく。
彼女の心境が書き綴られたこの手紙を朗読するシーンがあるのだが、このときの声というのが儚く寂しげで胸を締めつけられ、心動かされるものになっている。
「２、３パターンを録ってOKをいただいたと思います。
気を付けたのは、あまり大げさにならないこと。
感情を入れ過ぎて手紙を読むと、どうしても暑苦しくなるというか。他人からするとちょっとうっとうしく聴こえてしまう。
なので、のぞみの感情がちょっとだけこぼれ落ちるぐらいがちょうどいいのではないかと考えて読みました。
のぞみは映画の中で、ちょっとはちゃめちゃなところを見せる。でも、その裏には大きな哀しみがあって、それを隠すためにそうふるまっているところがある。
その彼女の健気さを声にも感じてもらえたらなという気持ちがありました。
あの手紙は彼女の偽らざる気持ちが書かれている。
彼女の心からの言葉を、そのまま素直な気持ちで語ろうと思いました」
そういう思いもあって、あの手紙は自分で書いたという。
「もともとはきちんと覚えて読むために書いたんです。
でも、これは自分で書かないとと思って。そうしないとのぞみの気持ちをきちんと声にのせられない気がしたんです。
だから、演出部からは『書かないでいいです』と言われたんですけど、『書かせてください』とわたしの主張を押し通させていただきました」
（※第七回に続く）
「道で拾った女」
脚本・監督：いまおかしんじ
出演：浜田 学 佐々木心音
川上なな実 永井すみれ 東 龍之介 成松 修 川瀬陽太
全国順次公開中
筆者撮影以外の写真はすべて（C）2023レジェンド・ピクチャーズ
